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7. 偶然…?

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 今日は新学期初日なので3限が終われば家に帰ることになっていた。なので、校門を出て、俺は帰路を辿っていた。
「いやー、やっぱり新学期はすぐ帰れるからいいね」
 この佐伯茜という少女と一緒に。
「まあそうだな。言うても最初だけだとは思うが」
 自転車を漕ぎながら俺たちは喋る。行きは途中で会ったので、そこまでは帰る道は同じなんだろうが、恐らくそこからは分かれるだろう。
「でも、帰り道が一緒ってすごい偶然だと思わない?」
「俺が今まさに考えてたことと同じことを言うんじゃねーよ…」
 今考えてたこととまさしくビンゴな解答だったので俺は少しだけ引きながら茜にそう言った。
「…まあ、俺らが今日会ったあそこの交差点のところくらいから同じなんだから、俺たちはよっぽど近所になるな」 
「確かに。てか佑はあそこらへんに住んでるのか?」
「そうだな。割と近所だ」
「僕もあそこらへんに住んでるんだぞー!」
 心なしか少し嬉しそうに茜はそう言う。
 …いやまあ、別に嫌な感じはないんだけどね?
「…そうなのか」
「いや何そのうっすい反応!この美少女が住んでるんだからもっと喜びなよ!」
「ウワーウレシイナァ」
「バカにしてるだろ?」  
 横から茜のすごい圧を感じた。全く怖くはないが…。
「いや、してないですっ!」
「ならいいんだけどねぇ」
 そんな会って数日とは思えない会話を茜と繰り広げていると、俺はこいつの姉の存在をふと思い出した。
「…そう言えばよ茜。お前姉の雫が居たろ?あいつとは一緒に帰らねーのかよ」
 双子なら家も当然同じだろうと思った俺は茜にそう尋ねた。
「もちろん、帰り道も同じで、双子なんだから同じ家に住んでるんだけど…」
 …こいつ、地味に俺の心読んでない?まあいいか。
「なんか、1人で帰りたいらしくて。昔からそうなんだ、お姉ちゃんは」
「…ま、まああの性格ならな…」
 朝のことを思い出しながらあいつならそんなことを言いそうだなと考えた。
「だから1人で帰ろうと思ってたら、佑が安定でぼっちだったから誘ってあげたんだぞ!」
「おい、安定のぼっちってなんだよ…。棚橋を誘ったけどあいつは他のやつと帰るらしいから」
「結局ぼっちじゃないですか…」
「はいそうです。ぼっちです」
 もうこれ以上言っても埒が明かない気がしたので俺が折れることにした。すると話題転換してきた茜が俺に尋ねてきた。
「そういえば、自己紹介の時さ」
「ん?うん」 
「佑、普通すぎて面白くなかったな」
 さらっとそういう茜。それとは別に俺はふと、会話の引き出しの多さを羨ましく思った。
「うるせぇよ…。新学期早々、新しいクラスでボケる方がおかしいって…」
 ちなみに、棚橋はそのおかしい方だったようで、いきなりボケていた。しかもちゃんとウケてたし…。
「ヘタレだな。佑って」
「うぐぐ…。あ、茜だって普通だったじゃないか!」
「僕は女の子だからそれを求める方がレベル高いんですーー!実際、みんな普通だっただろーー?」
 ドヤァという顔で俺にそう言う茜。
「女子ずりぃ…」
「へへーん!男に生まれたことを後悔するのだー!」
 と、そこでした決めポーズがあまり決まっていないように見えた茜だったとさ。
 その後も茜と他愛ない会話をしながら自転車を進める。そのうちに、朝茜と会った交差点まで帰ってきていた。
「お、俺たちが朝会った交差点まで帰ってきたな」
「ほんとだ。佑、ここ真っ直ぐ?」
「え…なんでお前俺の帰り道知ってんだよ…」
「いやなんで引いてんの…。僕はここ真っ直ぐだからそう聞いただけだぞ!」 
 俺の勘違い?に意義を唱えた茜は俺にそう説明した。
「あー、そうなのね?」
「さっきの反応からするに、佑も真っ直ぐなんだ?」
「おお、ということは俺たちちょっと近所になるな」
 俺がそう言うと、茜はニヤッとして言った。
「へへー、嬉しいだろ?この美少女の僕と近所さんだぞ??」
「いや何回言うんだよそれ…」
「本当は嬉しいくせにぃ」
「なんでだよ…」
 俺は半ば諦めながらそう言った。茜、すごいメンタルだなぁとそう思いながら。
 そうこうしてるうちに、俺の家までの最後の信号に差し掛かった。
「なぁ茜。お前この信号真っ直ぐか?」
「うん、僕は真っ直ぐだな」
「マジかよ…。俺も真っ直ぐだ」
 正直びっくりした。ここまで帰り道って同じもんなのか?すごい偶然だなと俺は思った。
「お、変わった。行くか」
「うん」
 そうして走り出して数十秒。俺は家が見えたので自転車のスピードを落とす。するとあろうことか、茜も何故かスピードを落としたのだ。
「え、なんで佑スピードを落としたんだ?」
「いやいや、それはこっちのセリフな?」
 お互いが疑問に思ってる中、俺は1つの答えにたどり着いた。
「なぁ茜。俺はさ、この黒い屋根で、壁がちょっとベージュっぽい家なんだけど…茜はどんな家だ?」
 すると、茜は視線を少しずらして、
「ぼ、僕はその隣の……って」
「…"その隣の"ってことは」
 茜の一言で確信に変わった。
「俺ら…家隣だったのか!?!?!?」
「そ、そうっぽいな。僕の隣の家、さっき佑が言った家だし…」
「え、でもさ俺の家族この近所に引っ越した日挨拶行ったんだぜ?なら、その時点で…ってあ」
「ど、どったん?」
 急に何かを思い出した様子の俺に茜は少し不思議そうに俺にそう尋ねた。
「俺の家族、2日に分けて挨拶行ったんだけど、その2日目に俺体調崩して行けてなかったんだった…」
「あー、どうりで佑と面識がなかったはずだ」
「そう言えば、父さん言ってたな」
 俺はそう呟き茜に言った。
「あのさ、俺の父さん2日目の挨拶の後言ってたんだよ。何か親じゃなくて中学生くらいの女の子が出てきたって…それって」
「あー、多分僕かも。あれでしょ?饅頭だったっけ?くれた人だったよな?」
「そうそう、まさか隣の家だったとは」
「僕も改めてびっくりしてる…」
 お互いの家の前で雑談する俺たち。今思ったことだが、茜ってこういうマジの出来事が起きた時って何も冗談とか言わないんだな…。さっきまでこの美少女と…とかなんだかんだ言ってたけど…。
 でもなんか俺だけからかわれてるの悔しいな。…すこしからかってやろう。
「なぁ、茜は嬉しいだろ?この俺と隣の家でさ」
 しまった。自分では少し引く発言になってしまったが…。ま、まあいい。さあ、さっきの俺みたいに返答に困り果てるがいい!照れろ照れろ!
「え、うん」
「いや、そこは俺みたいに塩対応で返すとこだろ!なんでそんなきょとんとしてんだよ!」
 予定が狂った俺は茜にそうツッコんだ。
「いや、純粋に喋れる人が隣って嬉しいなーって思ったから」
「あ、そ、そーですかいな」
「何?佑、照れてんの?可愛いな~!!」
「ち、違えよ…」
 少し動揺してしまった。逆に茜にからかわれた気分だ…。すると茜は俺の向こうを指差して言った。
 「あ、お姉ちゃん帰ってきた」
 その指のそうを見ると、自転車を漕ぐ誰かがこっちに向かってきていた。俺としてはあまり嬉しくない報告だったが…。
「おお、そーか。んじゃ、俺は入るわ」
「ちょちょちょい待たんかーい!なんでお姉ちゃんが帰ってきたところで帰ろうとするんだ!僕言っただろ?お姉ちゃんとも仲良くしてあげてって!」
「へいへい分かったよ…」
 やがて、雫が俺たちのところへと着いた。
「え?なんでこいつがここにいるの?茜」 
 相変わらずの扱い…。でも一応認知はされているみたいだ。
「あー、佑はね、僕たちのこの家のお隣さんなんだ!」
 茜は明るくそう雫に説明した。
「えーーー、そうなのね…」
「あのー、あからさまに嫌そうな顔するのやめてもらえます?」
 嫌だ。というオーラ、雰囲気がめちゃくちゃ伝わってくる雫。なので俺はそう言った。
「あら、顔に出てた?」 
「いや、もう嫌と言うほど出てましたけど…」
 俺は少し呆れながら雫に言う。
「とか言いながらぁ、お姉ちゃん嬉しいくせにぃ」
「何言ってるの茜!こんなやつ来たところで嬉しいわけないでしょ!早く入るわよ!」
 茜の煽り?にとても過剰に反応する雫。この双子、これでM-1取れんじゃないかと軽く思った。
「ごめんねー、お姉ちゃんツンデレだから素直に言えないんだよ…」
「別にツンデレじゃないし!何言ってるの茜!」
「そういうところがツンデレだって言ってんの…」
 ややめんどくさそうに言う茜。あーもうこいつ、雫の扱いに慣れてるわ…。さすがだな…。
「じゃあ説明してみさない、この私のどの部分がそうなのか、ほら!」
「分かった分かった。はいはい、入るよー。じゃーね佑。明日余裕があればまた一緒に学校行こ!」
 姉の背中を押しながら茜はそう言った。
「おう、また連絡してくれ」
 そんな俺と茜の会話も関係なし、雫はごねる。
「説明しなさいってば!」
「はいもううるさい嫌いになるぞ」
「あっはい、ごめんなさい」
 どうやら、妹に弱いタイプの姉らしい。悪いが少しだけ笑ってしまった。そうして、茜と雫は家に入って行った。そこで俺の感想1つ。
「茜完全に雫を舐めてたな…」
 何か濃い新学期、転校初日だったなと考えながら俺も自分の家に入るのだった。
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