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4. 転校
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こっち(長山町)に引っ越してきて、何かヤンキー風な女に会ったり、謎にテンションの高いボーイッシュな女に会ったりしたが、いよいよ今日は俺の転校初日だ。
「はぁー、やっぱ緊張すんなぁ」
俺が通う高校、中浜高校は男子は学ランではなく、ブレザーらしい。なので俺はそれに着替えていた。
2年の新学期に転校生とは恐らく俺だけだろうと考えると余計に緊張してくる。
「まあきっと大丈夫さ。友達の1人や2人くらいできるだろ」
「そうは言うけども父さん。俺は赤丸学園で1年間過ごしたが、友達と言える存在は1人もできなかったぞ?」
「そーいえばそーだったな。…んーまあ大丈夫だ!」
笑顔でグッジョブする父さんにいつものように軽く呆れる。
「その大丈夫はどこからくんだよ…」
すると母さんが俺を心配してきた。
「佑。大丈夫?中浜高校までの道分かる?」
その問いに俺はニコッとして返した。
「大丈夫さ母さん。前父さんに案内してもらったから、道は分かるよ。それに、最悪の場合スマホのナビがあるから!」
「そう?なら安心だけど……」
納得してくれた母さんを横目に俺は時計の方に視線を移した。
「……おっと、そろそろ出ねーとな」
「ああ、そうだな」
そして俺は玄関で靴を履き替え、自転車にまたがった。
「じゃあ…行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
父さんと母さんの挨拶を背に、俺は中浜高校へ向かうのだった。不思議なことに、ここは都会とはいえ、田舎であった八十口町と同じような空気が漂っている気がした。
「ここからだと……後20分くらいで着くか。遅刻は…、大丈夫そうだな」
忙しそうな腕時計の秒針とにらめっこしながら大体の位置を確認した俺は学校に着くまでの時間の逆算をした。ちなみに今は信号で止まっている。
チャラララーー、キッ
赤信号で止まっている俺の横にもう一つ自転車が止まったみたいだ。
正直、誰であろうと俺は知らないのでどーでもよかったんだが、反射で自分の左を見た。
そこには、同じ高校の制服をきた少女がいた。
「ん……。この感じ…どこかで見た覚えが…」
1人でそうブツブツ言ってると隣が俺に気づいたようで……。
「ん…?……あ!少年!!」
この呼ばれ方は…。あいつか……!
「茜か!うわー随分雰囲気変わるんだなぁ」
「そうです!制服を着ると僕はJKに大変身するのだー!!!」
きゅるるる~んという効果音が似合いそうなポーズをとる茜。いや、自転車乗ってんのに危ないだろ…。
「てか茜、高校、中浜高校だったんだな」
「あ、確かに!じゃあ佑も中浜??てゆーことは今日から転校だ!」
「そーいうこと。誰か喋れる奴できたらいーけどなぁ……」
俺がそう言うと、茜は言う。
「何言ってんの!僕がいるでしょ!」
「……えっ?」
えっへんとない胸を張りながらいう茜。
「ちょっと今とてつもなく失礼なこと考えなかった??」
「いや、ゼンゼンカンガエテナイヨ」
「本当に~??」
茜がジト目でこちらを見てくる。何こいつ、エスパーか何かなの??
「当たり前だろ…。てかありがとう、確かに喋れる奴いたわ。ちなみに、クラスっていくつ??」
「8クラスあるね」
「終わった…」
俺が失望すると同時に信号が青になり、俺と茜は地面を蹴って、自転車を進める。
「何で?」
「だって、せっかく喋れる奴いてもクラス違うかったら意味ないじゃないか……」
「え?じゃあクラス違った場合僕のクラスに話しにこればいーじゃん」
あのなー、と先に俺は言ってから続けた。
「それが出来ないのが陰キャなんだよ…。しかも今回は女子と来た。余計話かけに行けねーよ」
「そーなのか?見た感じ佑は陰キャには見えないけどなぁ」
「そう?」
「うん。僕はそう思うぞ?」
めっちゃ真顔でそう言われた。…何かちょっとだけ嬉しかった。
「そーいえばさ、佑、部活どーすんの?」
話題転換してきた茜に俺はその質問の答えを返す。
「卓球部に入ろーかなーって思ってる」
「卓球かぁ~!いいね~!……もしかして、3年の星本先輩狙ってる??」
そうニヤニヤしながら聞いてきた茜に軽いため息をつき俺は言う。
「あのなぁ茜。俺がその星本先輩?という人を知るわけないだろ?今日転校だぞ?」
「あーそっか!失敬失敬!!」
「てかお前相変わらずハイテンションだなぁ。羨ましいよその性格」
「そうでしょ~!!」
えっへんと再びない胸を張る──
「なぁまた失礼なこと考えなかった??」
「イヤゼンゼンマッタクトイッテイイホドソンナコトナイヨ??」
だからなんだよその能力…。
「めちゃめちゃカタコトなんですけど…」
「気のせいだろ…」
そんな感じでくだらない話を茜としながら自転車をこいでいく。すると、桜の長い長い花道に差し掛かった。
「うわー!すげぇ!」
「すごいでしょ?ここは春になるとこんなふうにすごい桜の花道ができるんだ!!」
「SLA◯ DUNK?」
「それは50回連続で振られた赤髪のあの男でしょ!違うよ、桜の花道!」
「あー失敬失敬」
と、形だけ謝っておく。…にしても本当にすごい。八十口町にはこんなのなかったから新鮮に感じる。
この桜の花道には、俺らのように自転車で通学している生徒もいれば徒歩で登校している生徒もいた。誰もかれも中浜高校の制服を着ていて、ついこの間まで違うところに住んでいたからか、すごいアウェー感を感じる。
「ここ抜けて、右に曲がったら学校だね」
「おう、いやー何か緊張してきたなぁ」
友達ができないのは前提として、イジメだけには合いたくないと俺は思った。ちゃんと学校生活を楽しめるかの不安、勉強についていけるかの不安……。色々な不安がよぎる。
……でも。
「いや、大丈夫だ。大丈夫」
俺は胸に手を添え、そう自分に言い聞かせた。茜もいるんだし、話かけに行けないとしても、きっと何とかなる。
「どーしたの?」
急な俺の発言に疑問符を浮かべる茜。そんな彼女に俺は微笑して言った。
「何にもないよ、さ、行こう。……同じクラスがいいなぁ、可能性は8分の1、つまり12.5%かぁ…」
「いや計算早」
かるーく茜が引いていた。それを横目でチラリと確認した俺はボソッとつぶやく。
「まあ数学は得意なんでね」
そんな会話をしながら俺たちは中浜高校の校門をくぐるのだった。
「はぁー、やっぱ緊張すんなぁ」
俺が通う高校、中浜高校は男子は学ランではなく、ブレザーらしい。なので俺はそれに着替えていた。
2年の新学期に転校生とは恐らく俺だけだろうと考えると余計に緊張してくる。
「まあきっと大丈夫さ。友達の1人や2人くらいできるだろ」
「そうは言うけども父さん。俺は赤丸学園で1年間過ごしたが、友達と言える存在は1人もできなかったぞ?」
「そーいえばそーだったな。…んーまあ大丈夫だ!」
笑顔でグッジョブする父さんにいつものように軽く呆れる。
「その大丈夫はどこからくんだよ…」
すると母さんが俺を心配してきた。
「佑。大丈夫?中浜高校までの道分かる?」
その問いに俺はニコッとして返した。
「大丈夫さ母さん。前父さんに案内してもらったから、道は分かるよ。それに、最悪の場合スマホのナビがあるから!」
「そう?なら安心だけど……」
納得してくれた母さんを横目に俺は時計の方に視線を移した。
「……おっと、そろそろ出ねーとな」
「ああ、そうだな」
そして俺は玄関で靴を履き替え、自転車にまたがった。
「じゃあ…行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
父さんと母さんの挨拶を背に、俺は中浜高校へ向かうのだった。不思議なことに、ここは都会とはいえ、田舎であった八十口町と同じような空気が漂っている気がした。
「ここからだと……後20分くらいで着くか。遅刻は…、大丈夫そうだな」
忙しそうな腕時計の秒針とにらめっこしながら大体の位置を確認した俺は学校に着くまでの時間の逆算をした。ちなみに今は信号で止まっている。
チャラララーー、キッ
赤信号で止まっている俺の横にもう一つ自転車が止まったみたいだ。
正直、誰であろうと俺は知らないのでどーでもよかったんだが、反射で自分の左を見た。
そこには、同じ高校の制服をきた少女がいた。
「ん……。この感じ…どこかで見た覚えが…」
1人でそうブツブツ言ってると隣が俺に気づいたようで……。
「ん…?……あ!少年!!」
この呼ばれ方は…。あいつか……!
「茜か!うわー随分雰囲気変わるんだなぁ」
「そうです!制服を着ると僕はJKに大変身するのだー!!!」
きゅるるる~んという効果音が似合いそうなポーズをとる茜。いや、自転車乗ってんのに危ないだろ…。
「てか茜、高校、中浜高校だったんだな」
「あ、確かに!じゃあ佑も中浜??てゆーことは今日から転校だ!」
「そーいうこと。誰か喋れる奴できたらいーけどなぁ……」
俺がそう言うと、茜は言う。
「何言ってんの!僕がいるでしょ!」
「……えっ?」
えっへんとない胸を張りながらいう茜。
「ちょっと今とてつもなく失礼なこと考えなかった??」
「いや、ゼンゼンカンガエテナイヨ」
「本当に~??」
茜がジト目でこちらを見てくる。何こいつ、エスパーか何かなの??
「当たり前だろ…。てかありがとう、確かに喋れる奴いたわ。ちなみに、クラスっていくつ??」
「8クラスあるね」
「終わった…」
俺が失望すると同時に信号が青になり、俺と茜は地面を蹴って、自転車を進める。
「何で?」
「だって、せっかく喋れる奴いてもクラス違うかったら意味ないじゃないか……」
「え?じゃあクラス違った場合僕のクラスに話しにこればいーじゃん」
あのなー、と先に俺は言ってから続けた。
「それが出来ないのが陰キャなんだよ…。しかも今回は女子と来た。余計話かけに行けねーよ」
「そーなのか?見た感じ佑は陰キャには見えないけどなぁ」
「そう?」
「うん。僕はそう思うぞ?」
めっちゃ真顔でそう言われた。…何かちょっとだけ嬉しかった。
「そーいえばさ、佑、部活どーすんの?」
話題転換してきた茜に俺はその質問の答えを返す。
「卓球部に入ろーかなーって思ってる」
「卓球かぁ~!いいね~!……もしかして、3年の星本先輩狙ってる??」
そうニヤニヤしながら聞いてきた茜に軽いため息をつき俺は言う。
「あのなぁ茜。俺がその星本先輩?という人を知るわけないだろ?今日転校だぞ?」
「あーそっか!失敬失敬!!」
「てかお前相変わらずハイテンションだなぁ。羨ましいよその性格」
「そうでしょ~!!」
えっへんと再びない胸を張る──
「なぁまた失礼なこと考えなかった??」
「イヤゼンゼンマッタクトイッテイイホドソンナコトナイヨ??」
だからなんだよその能力…。
「めちゃめちゃカタコトなんですけど…」
「気のせいだろ…」
そんな感じでくだらない話を茜としながら自転車をこいでいく。すると、桜の長い長い花道に差し掛かった。
「うわー!すげぇ!」
「すごいでしょ?ここは春になるとこんなふうにすごい桜の花道ができるんだ!!」
「SLA◯ DUNK?」
「それは50回連続で振られた赤髪のあの男でしょ!違うよ、桜の花道!」
「あー失敬失敬」
と、形だけ謝っておく。…にしても本当にすごい。八十口町にはこんなのなかったから新鮮に感じる。
この桜の花道には、俺らのように自転車で通学している生徒もいれば徒歩で登校している生徒もいた。誰もかれも中浜高校の制服を着ていて、ついこの間まで違うところに住んでいたからか、すごいアウェー感を感じる。
「ここ抜けて、右に曲がったら学校だね」
「おう、いやー何か緊張してきたなぁ」
友達ができないのは前提として、イジメだけには合いたくないと俺は思った。ちゃんと学校生活を楽しめるかの不安、勉強についていけるかの不安……。色々な不安がよぎる。
……でも。
「いや、大丈夫だ。大丈夫」
俺は胸に手を添え、そう自分に言い聞かせた。茜もいるんだし、話かけに行けないとしても、きっと何とかなる。
「どーしたの?」
急な俺の発言に疑問符を浮かべる茜。そんな彼女に俺は微笑して言った。
「何にもないよ、さ、行こう。……同じクラスがいいなぁ、可能性は8分の1、つまり12.5%かぁ…」
「いや計算早」
かるーく茜が引いていた。それを横目でチラリと確認した俺はボソッとつぶやく。
「まあ数学は得意なんでね」
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