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2. ジョギング

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 翌日。俺は新しい町、長山町の周辺の情報等を知るべく、朝からジョギングに出ていた。しかし、新しい町なので迷う可能性も十分にある。そのため、本当に周辺をジョギングすることにした。
 長山町は父さんの言う通り、俺が昨日まで住んでいた八十口町とは比べ物にならないくらい都会で、交差点に出ると、少し向こう側にビルが見えた。
「すげぇ、これが都会かぁ…。ビルとかショッピングモールとか……奥に見えるなぁ!」
 本当に周辺をジョギングするだけと決めていたのに、この町への好奇心からか、俺の足は自然に遠くへと繰り出していた。まあ、幸いスマホは持ってきているので、帰れないということはないだろうけど。
 すると、そんな俺の背中にかける一つの声があった。
「ねぇ、ちょっと」
「ん?」
 振り向くと、目の前には少し俺よりも身長が小さい、ひとつくくり、ポニーテールの少女がいた。年齢は…一つ下?服装からするに、俺と同じくジョギング類のものをしてきたのだろうか。
 そこで女性経験がおそらくありんこよりも少ない俺は思った。これってナンパ!?!?
 な、何か受け答えを…。
「な…何かな…??」
 やばい、コミュ症が発動してしまっている!せっかく話しかけてきてくれたのに…。何か話さないと…!
「あのさ……」
 はぁーっと、溜め息混じりに先に少女が口を開いた。何を言うつもりだ…?
 溜め息の理由が気になった俺であったが、それでも少し期待していた俺の胸の高鳴りは次の一言でことごとく打ち砕かれる。
「邪魔なんだけど……どいてくれる??」
「……え?」
 思っていたのと違う言葉に、俺はそんな素っ頓狂な声を出した。向こうから話しかけにきてくれた、ナンパだと思った俺の時間を返してほしい。
「う…うん」
 少女の言う通り、その場をどくと俺のもたれかかっていた電柱に、歩行者専用ボタンみたいなものが現れた。
 少女は俺の横を通り、そのボタンを押す。
 すると、今青だった信号が黄色に変わった。
「あ……このためだったのね…。俺に声をかけたのは……」
 その少女に聞こえないようにポツリと俺はつぶやいた。信号は赤になり、下に矢印表示が出た。ここでようやく俺は少女の先程の溜め息の理由を知った。普通に鬱陶しがられてたのね、俺…。
「…さーって、あと15分か、間に合うかなぁ」
「え、何かあるんですか?」
 恐らく彼女の独り言だったろうが、何かが気になったので俺は彼女に尋ねた。
「……………」
 え……?フ、フル無視!?!? う、うーん。別にイヤホンとかつけてるってわけでもなさそうだしなぁ…。 
 不意に、俺はもう一度彼女に話しかけた。
「あ、あの……」
「何??」
 こわ。すげぇガン飛ばされたんですけど。え、何?この子ヤンキーなの??え??
「いや何も……」
 さっきの質問、聞こえてなかったのかな??……いやきっとそうだ。そんな…俺のメンタルを削るようなことはしていないだろ!…多分。
 まあ、実際問題、メンタルは削られましたけどね…。もともと豆腐メンタルだから、小さな衝撃でも大ダメージです。はい…。
「お、青か」
「あっ…」
 そして信号は青に変わり、少女は軽くそのポニーテールを揺らしながら横断歩道を渡って行った。それに続くようにこの信号を待っていた人数人が、この横断歩道の上を交差していく。
「なんだ……この少し悲しい気持ち…」
 少女が渡って行った横断歩道の前で俺はそうつぶやいた。……何か出会いが欲しいとは思っていたが、こんな形とは……。悲しす。あと何気にここで待っていた人の邪魔にもなっていたとは…。もっと悲しす。
「はぁ……ここらへんで折り返して家帰るかぁ」
 少し気分が落ちてしまった俺は帰路に足を向けた。
 そして俺はふと思った。
「あの子……学校どこなんだろう」
 ここは長山町だが、もといた八十口町とは違い、この町は大きい。なので、学校もたくさんあると思うのだが…。
「まあ、学校は違うだろ。まず一つ下っぽかったし」
 同じ学校ならもう少し話して友達になろうと思っていたが……。あの態度じゃ友達にはなってくれそうもないか。
 と言うか、そんな期待をしてた俺が悪い気がしてきたぞ……?出会いは求めるなってことね、はい。分かりました。佐野佑、理解しました。
「何やってんだ俺……。帰って休も…」
 心の中で自分何やってんだろと思った俺は、きっと何かしら疲れているのだろうと思い、家に帰る足を早めるのだった。
 いやー、不思議な出来事(?)があったなぁ。
 ひとまず、コミュ症を治すところから頑張っていこうかな…。
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