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完結編 月の獅子の目は彼の者に
十六話 昔々のディウエクチア神
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「なあ君は、神を知っているか? 」
「はい? 」
勧誘ならお断りなんですけども。
「昔話をひとつしてやろう、退屈しのぎってやつだ 」
「いえ、けっこ「するから適当に聞け」 あ、はい」
早く誰か帰ってこないかなーとぼけーっとしていたかったけど叶わず、座り直したグレイブさんの話がはじまってしまう。
「今、この国は月に巣食う獅子をまるで神であるかのように祀っているが、千年前は違った」
「ほほう? 」
「アスランの大地は千年前、一面の砂漠だったんだ、だが、その千年よりもっと前は緑豊かな大地だったらしい」
? 砂漠? ここが? もっと前は緑豊か? ほほほう?
「緑豊かな大地の恩恵をもらうため、人々は集まり国を作り、そこにおわした一柱の神にこうべをたれた、その神こそはディウエクチア、霧のように降り注ぐ雨の向こうより現れた狼神、ディウエクチア神だ」
「ほほん………ほん? 」
ディウエクチア……、ディウエクチア?
「エウァルドさんの家の名前ですね? 」
「興味が出てきたな? ああそうだ、昔の名残ってやつだな、かの方は戦いと時間、そして雨と冥府を司る大いなる神にしてかつての国を繁栄させた偉大なる神だが、困ったところがあった」
「ほう」
「生贄と戦いを所望するんだ、五十年に一度」
「……ほう? 」
なんか雲行きが怪しくなってきたね。
「最も強い者の心臓か、戦いの末得た戦果、まあ宝なり仕掛けた先で最も強い者の心臓をこよなく好み食す神だったため繁栄こそすれ一度隙をみせればあっという間に反乱、革命、周辺国からの袋叩きにあって」
「滅んじゃった……」
「いや、勝ち抜いた」
「えぇ……」
「戦乱を極めるほど強靭になり、人々の喧騒が大きいほど神の力は強くなっていく、戦いこそがディウエクチア神が最も好むご馳走だ、あらゆる苦難、あらゆる戦いはさながらフルコースに見えたことだろうな」
「へー」
「だがその後滅んだ」
「滅んじゃった……」
大分急展開。
「腹を満たしその礼をしようと顔をあげた神の視界には、誰も残っちゃいなかった、人間側が神が満足するほどの戦争に耐えきれなかった」
「ほう……」
「それには流石の神も困った、国の外に散らした使節、旅人、移住した人間を集めたが国を保てるほどの人口を維持できず、戦争を起こせず、強者が育つ力のなくなった土地で神は力を失い、冥府に居を変え、緑豊かだった地は砂漠へと姿を変えた」
「……へぇー」
「以上だ」
本当に昔話をしたよこの人。
「ん? ではグレイブさんのディウエクチアの名前は勝手に名乗ってるので? 」
「ちがう、信者勧誘しに他国に出張ってた神官たちからきちんと血を繋いできた由緒ある家だ、勝手に名乗れば天罰が地の底より下る」
「地の底から天罰って矛盾してません」
「……そうだな、痛いところを突かれた、残ってた茶でものめ、今の言葉を忘れろ」
「はいー」
ずずいっと、冷めたお茶を勧められる、うん、美味しい。
「ニッキークロトゥラン、君の婚約者のエウァルドもディウエクチアと名乗っている通り、俺の遠い血縁者だ」
「へぇー」
「流石に千年も放置されれば神官の力は使えんが、常人よりかは人外の力に適応できるだろう」
「へぇ~」
なんかエウァルドさんの知らないことを知れるのはまあまあ嬉しい……遠すぎることだけどまあまあまあ。
「ちなみにだが今の昔話と君の現状とはあんまり関係ない」
「え」
「現在ディウエクチア神は冥府を去って久しい、今は何処にいらっしゃるかわからん」
「えぇ……」
「ディウエクチア神は関係ないが、俺と君にはそれなりに通ずるものがある」
「…………」
「どうした」
「もーちょっと分かりやすく言ってくれると嬉しいです」
なんもわからん、そろそろ思考放棄するぞ、この僕ニッキーはあんまり頭良くないんだ。
「君の先祖にあたる男と俺は幼馴染だった、ということだ」
「なるほど? ……ふむ? 」
「わかってないなその返事は……まあ幼馴染とは言ったが、あいつに向けた感情はそれなりに……はあ」
ん?
「どうしたので? 」
「時間切れだ」
「ほ? 」
「君のお付きたちが帰ってくる頃だ」
「ほん……」
そう言われましても……ん?
「ニッキー!! 」
「えっおぶぇ」
中々聞けないエウァルドさんの大きな声が……外から? そういえば窓開けっ放しだった……あ、飛び込んできて真っ暗で苦しい……。
★★★
今 王国アスラン
千年前 何もない砂漠
もっと前 ディウエクチア神が治める大地
「はい? 」
勧誘ならお断りなんですけども。
「昔話をひとつしてやろう、退屈しのぎってやつだ 」
「いえ、けっこ「するから適当に聞け」 あ、はい」
早く誰か帰ってこないかなーとぼけーっとしていたかったけど叶わず、座り直したグレイブさんの話がはじまってしまう。
「今、この国は月に巣食う獅子をまるで神であるかのように祀っているが、千年前は違った」
「ほほう? 」
「アスランの大地は千年前、一面の砂漠だったんだ、だが、その千年よりもっと前は緑豊かな大地だったらしい」
? 砂漠? ここが? もっと前は緑豊か? ほほほう?
「緑豊かな大地の恩恵をもらうため、人々は集まり国を作り、そこにおわした一柱の神にこうべをたれた、その神こそはディウエクチア、霧のように降り注ぐ雨の向こうより現れた狼神、ディウエクチア神だ」
「ほほん………ほん? 」
ディウエクチア……、ディウエクチア?
「エウァルドさんの家の名前ですね? 」
「興味が出てきたな? ああそうだ、昔の名残ってやつだな、かの方は戦いと時間、そして雨と冥府を司る大いなる神にしてかつての国を繁栄させた偉大なる神だが、困ったところがあった」
「ほう」
「生贄と戦いを所望するんだ、五十年に一度」
「……ほう? 」
なんか雲行きが怪しくなってきたね。
「最も強い者の心臓か、戦いの末得た戦果、まあ宝なり仕掛けた先で最も強い者の心臓をこよなく好み食す神だったため繁栄こそすれ一度隙をみせればあっという間に反乱、革命、周辺国からの袋叩きにあって」
「滅んじゃった……」
「いや、勝ち抜いた」
「えぇ……」
「戦乱を極めるほど強靭になり、人々の喧騒が大きいほど神の力は強くなっていく、戦いこそがディウエクチア神が最も好むご馳走だ、あらゆる苦難、あらゆる戦いはさながらフルコースに見えたことだろうな」
「へー」
「だがその後滅んだ」
「滅んじゃった……」
大分急展開。
「腹を満たしその礼をしようと顔をあげた神の視界には、誰も残っちゃいなかった、人間側が神が満足するほどの戦争に耐えきれなかった」
「ほう……」
「それには流石の神も困った、国の外に散らした使節、旅人、移住した人間を集めたが国を保てるほどの人口を維持できず、戦争を起こせず、強者が育つ力のなくなった土地で神は力を失い、冥府に居を変え、緑豊かだった地は砂漠へと姿を変えた」
「……へぇー」
「以上だ」
本当に昔話をしたよこの人。
「ん? ではグレイブさんのディウエクチアの名前は勝手に名乗ってるので? 」
「ちがう、信者勧誘しに他国に出張ってた神官たちからきちんと血を繋いできた由緒ある家だ、勝手に名乗れば天罰が地の底より下る」
「地の底から天罰って矛盾してません」
「……そうだな、痛いところを突かれた、残ってた茶でものめ、今の言葉を忘れろ」
「はいー」
ずずいっと、冷めたお茶を勧められる、うん、美味しい。
「ニッキークロトゥラン、君の婚約者のエウァルドもディウエクチアと名乗っている通り、俺の遠い血縁者だ」
「へぇー」
「流石に千年も放置されれば神官の力は使えんが、常人よりかは人外の力に適応できるだろう」
「へぇ~」
なんかエウァルドさんの知らないことを知れるのはまあまあ嬉しい……遠すぎることだけどまあまあまあ。
「ちなみにだが今の昔話と君の現状とはあんまり関係ない」
「え」
「現在ディウエクチア神は冥府を去って久しい、今は何処にいらっしゃるかわからん」
「えぇ……」
「ディウエクチア神は関係ないが、俺と君にはそれなりに通ずるものがある」
「…………」
「どうした」
「もーちょっと分かりやすく言ってくれると嬉しいです」
なんもわからん、そろそろ思考放棄するぞ、この僕ニッキーはあんまり頭良くないんだ。
「君の先祖にあたる男と俺は幼馴染だった、ということだ」
「なるほど? ……ふむ? 」
「わかってないなその返事は……まあ幼馴染とは言ったが、あいつに向けた感情はそれなりに……はあ」
ん?
「どうしたので? 」
「時間切れだ」
「ほ? 」
「君のお付きたちが帰ってくる頃だ」
「ほん……」
そう言われましても……ん?
「ニッキー!! 」
「えっおぶぇ」
中々聞けないエウァルドさんの大きな声が……外から? そういえば窓開けっ放しだった……あ、飛び込んできて真っ暗で苦しい……。
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