燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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完結編 月の獅子の目は彼の者に

十四話 自由に 元気に 楽しく

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「このメルディアではニッキー様の抱えている問題も、苦悩の一端も、悲しみをお聞きすることでしか寄り添えないでしょう」
身なりを整え、凛とした佇まいをしたメルディアさんの真っ直ぐな目が、鏡越しに僕を見る。

「ですがそれでとできることも少しはあるのです、さあニッキ~様、まずは涙を拭きましょう」
「……はい」
ただ無様に癇癪をあげている僕の肩に手を置いて、メルディアさんはニコリ微笑んだ。


「もし、わたしに対して罪悪感を抱いているのであれば……」
「あれば? 」
「もっと着飾らせてくださいませ! ニッキー様を! 」
「……んえ? 」
「ふふ、エウァルド様が独占していて中々歯痒い思いを募らせていた今、言い方をひどくすれば負い目を感じている弱みにつけ込んでしまおうという作戦です、ふふん」
「……ちょっとよくわかんないですね」
「えぇ、それでいいのです、ふふふ」

ニヤリと口角をあげるメルディアさんはおもむろに宝石箱から緑色の石のついたイヤリングを取り出した。

「白い髪には緑が映えるのは世の摂理、淡い青色を添えるのも捨てがたい……赤色もきっと似合いますがそれでは派手すぎるでしょうか……、いいえここは全乗せです」
「……メルディアさん? 」
「金のネックレスも実はあるんです! 宝物庫からこっそり持ってきたのですけどもほほほ」
「メルディアさん? 怒られませんそれ 」
「えぇ怒られますとも、ダン様に」
「あ……」
「でも許可は取りましたよ? こっそり覗きに行った時にいた甲冑着込んだ紳士さんに」
「え゛」
「“ニッキークロトゥランに使うのであれば好きに使え“と仰ってましたね、声がエウァルド様にそっくりでしたが……ダン様あのディウエクチア家も抱え込んでるとは流石ですねえ」
「そう、なんですかね? 」
「ええ! なので存分に使わせていただきます、見てくださいこの量! よりどりみどりですねー! 」
無機質な箱を少し揺らすだけでジャラジャラと重たい音がたくさん、たくさん。

「エウァルド様達はまだ帰ってこないでしょうし、さぁさぁ、楽しい時間を過ごしましょう! ね? ね? 」
「あ、あうう」
穏やかな笑顔撤回、なんか圧感じる、すんごい圧感じる。



断る選択肢? ふへへへ選べるわけないよねぇ……。






※※※




「と、まあ、私利私欲を全面に出しましたが、ニッキー様のお力になりたいと思っております」
「へぇー」
三つ編みを置かれまして、香油と櫛で髪の毛がサラサラになっていく。
 

「助言というには些か低俗ですが、えぇ、えぇ……ニッキー様はもっと私利私欲にまみれてもいいかと! わたしみたいに! 」
「そうですかねえ? 」
「そうですよ! エウァルド様やダン様のあれやこれやも深く考えず受け取っておけばいいんです、勝手にやってることなんですから」
「えぇ? 」
「元々この屋敷はわたし一人だけが管理してたのを突然すっっごい遠い縁辿ってダン様がやってきたときは腰抜かしましたから、マジで」
「えぇえ……」
フンスと文句言ってるメルディアさんの相槌? 
ええ? しかないよ、ボキャブラリー少ないよニッキー。

「あの方やることないからって恩を拡大解釈して返してるだけなのです、ニッキー様が必要以上に感情を向ける必要はないのです」
「えぇ……それじゃあなんか申し訳ないなーなんて」
「お返しは義理くらいで十分です、多分」
「ご飯とか美味しいですしー」
「ニッキー様大貴族です、大丈夫です! ……多分」
「それなんか……大丈夫です? 」
「大丈夫なんです! きっと」
「ん~……? 」
大分心もとないぞー?

「もっとわがままにいきましょう! 自由にやりたいこと探して! 見つからなければのんびり過ごして! やる気が出たらやりたいことをするをひたすら繰り返す、 それこそが人生なのですから、ね? 」
「……んー頑張ります? 」
「頑張りましょう! ……ちなみにわたしはニッキー様が目覚めるのが後一年遅かったら彼氏と外の国に引っ越していたところでした、えへん」
「うそぉ?! 」

彼氏いたのメルディアさん!?








あ……定期的に出かけてたのってそういう…?




    
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