112 / 118
完結編 月の獅子の目は彼の者に
十一話 散歩をしようか
しおりを挟む
実はですねニッキー、けっこう歩けるようになったのですよ。
あの部屋を出た時は骨と皮だけだったのがなんと、手足も今やふっくらに。
一日に何度も睡眠取らないと間に合わなかった体力も良くなった、まあまあ、まあまあに。
三時間に一度が四時間に変わったくらいにはそれなりに、まあまあに。
てなわけでダンさんが手紙を出しに町に行ったらしい。
それでまあお昼寝する準備をいそいそエウァルドさんとしてたら突然アルゴスさんが ”運動するぞ!! ” と。
もう寝る気満々だったニッキーとしてはちょっとだけ機嫌わるわるですね、はい。
「部屋の中うろちょろしてハイ運動ってのは流石にないだろーて思ってたんだよなー」
「まあはい、うん」
トボトボ、トボトボ、前方でステップ良く廊下を進むアルゴスさんとは真逆に僕は大変よろしくない。
「なんだよ機嫌悪そーに」
「眠いっす」
正直体力のなさをテンションで補ってるから動きたくない体をエウァルドさんに手伝ってもらっている所存。
「そりゃ悪かったと思うけどよー、ダンちゃんがいない今がチャンスじゃねえかこれー? ってな」
「何がチャンスなんです? 」
「開かずの間を開けれるんだろ? ニッキーサマ」
「あの部屋~? たぶんー 」
「おうよ、俺は開けれなかったから気になって仕方ねえんだよ」
「部屋に戻るぞニッキー」
「おんぶぇ」
「おうまてまてまて仏頂面」
「ぶえぶえ」
「御託はいい、ニッキーには休息が必要だ、そうだろう? なあ? 」
「むむ」
「良いから話だけでも聞けこの頭でっかち、ちゃんと俺の身勝手以外にも真っ当な理由があんだよ」
「あの……ぢょっと…、離す……してもらっでも」
身勝手な時点であれな気がするけども。
お腹に太い腕回ってぐいーっとエウァルドさんに引っ張られてるの。
んで僕の腕をアルゴスさんが掴んでぐいーっとされてるの、いてえんだわ。
「ゔゔん……」
「おうすまん、あ、まてこいつ走る準備してやがる、まてまてまて」
「ダメだ、もうあの部屋に行かせてなるものか、またあの部屋に入り、今度こそ戻って来なかったらどう落とし前をつけてくれるつもりだ貴様」
「入らせるつもりはねえーよ!! ただ試してえことがあんだよ! そのためにはこいつが近くにいてほしいんだわ!! ニッキーサマはオメーが抱え込んでてていーから! な!? 」
「断る! 」
「既にもう抱え込まれてるんすよねーねえーエウァルドさーん」
「なんだ」
「割とあの部屋の謎がわかるななら協力もやぶさかでは 「ダメだ」 そこをなんとかー」
何かが進展するならやってみたい、安心安全ならさらにやってみたい。
「……行く必要はないだろう? 」
「んー、ほら、ちゃんと調べずにいて突然あの部屋が移動してきたら対処できないーみたいな? 」
「え、なんだよそれこわ」
「………一理あるな」
「あるのかよ」
僕としてはそんな感じ、”私”としては……もう一度ディフラカンに会えるかもなんて……おためごかしの贖いができるかもなんて思っていたりする、これはいけない考え。
てなわけで、部屋に戻るまでエウァルドさんにずっと抱っこされて部屋に近づこうとしないって約束でノシノシとエウァルドさんの大きな歩幅から生まれる揺れを感じながら廊下を進んでいるニッキーでございますよ。
ぶっちゃけた事言うとほとんど食堂と部屋しか行き来してないから屋敷の構造なんにもわかんないんだよね。
アルゴスさんに連れられるまま階段のぼったーとか右に曲がったーとかしてもここどこたろうって感想しかでないからまあまあ楽しい。
「あん? 誰だお前」
おんや? 変な声をあげててますね。
「………エウァルドさん? なんで後ろにさがってるの? エウァルドさん? 」
「帰るぞ」
「えっ、おまちを待って、状況把握する時間くらいはさせて」
ぼんやりしてるのを慌てて起こしぺちぺちとエウァルドさんの太い腕を叩いて止める。
アルゴスさんの視線の先、恐らくあの部屋に続く廊下の向こうを体を無理矢理動かして見てみるとそこには……そこには?
「やはりきたか、ガキども」
見覚えの、あるような……ないような。
全身銀の甲冑の、エウァルドさんにそっくりな声を出す誰か。
はて、名前はなんだっけ。
あの部屋を出た時は骨と皮だけだったのがなんと、手足も今やふっくらに。
一日に何度も睡眠取らないと間に合わなかった体力も良くなった、まあまあ、まあまあに。
三時間に一度が四時間に変わったくらいにはそれなりに、まあまあに。
てなわけでダンさんが手紙を出しに町に行ったらしい。
それでまあお昼寝する準備をいそいそエウァルドさんとしてたら突然アルゴスさんが ”運動するぞ!! ” と。
もう寝る気満々だったニッキーとしてはちょっとだけ機嫌わるわるですね、はい。
「部屋の中うろちょろしてハイ運動ってのは流石にないだろーて思ってたんだよなー」
「まあはい、うん」
トボトボ、トボトボ、前方でステップ良く廊下を進むアルゴスさんとは真逆に僕は大変よろしくない。
「なんだよ機嫌悪そーに」
「眠いっす」
正直体力のなさをテンションで補ってるから動きたくない体をエウァルドさんに手伝ってもらっている所存。
「そりゃ悪かったと思うけどよー、ダンちゃんがいない今がチャンスじゃねえかこれー? ってな」
「何がチャンスなんです? 」
「開かずの間を開けれるんだろ? ニッキーサマ」
「あの部屋~? たぶんー 」
「おうよ、俺は開けれなかったから気になって仕方ねえんだよ」
「部屋に戻るぞニッキー」
「おんぶぇ」
「おうまてまてまて仏頂面」
「ぶえぶえ」
「御託はいい、ニッキーには休息が必要だ、そうだろう? なあ? 」
「むむ」
「良いから話だけでも聞けこの頭でっかち、ちゃんと俺の身勝手以外にも真っ当な理由があんだよ」
「あの……ぢょっと…、離す……してもらっでも」
身勝手な時点であれな気がするけども。
お腹に太い腕回ってぐいーっとエウァルドさんに引っ張られてるの。
んで僕の腕をアルゴスさんが掴んでぐいーっとされてるの、いてえんだわ。
「ゔゔん……」
「おうすまん、あ、まてこいつ走る準備してやがる、まてまてまて」
「ダメだ、もうあの部屋に行かせてなるものか、またあの部屋に入り、今度こそ戻って来なかったらどう落とし前をつけてくれるつもりだ貴様」
「入らせるつもりはねえーよ!! ただ試してえことがあんだよ! そのためにはこいつが近くにいてほしいんだわ!! ニッキーサマはオメーが抱え込んでてていーから! な!? 」
「断る! 」
「既にもう抱え込まれてるんすよねーねえーエウァルドさーん」
「なんだ」
「割とあの部屋の謎がわかるななら協力もやぶさかでは 「ダメだ」 そこをなんとかー」
何かが進展するならやってみたい、安心安全ならさらにやってみたい。
「……行く必要はないだろう? 」
「んー、ほら、ちゃんと調べずにいて突然あの部屋が移動してきたら対処できないーみたいな? 」
「え、なんだよそれこわ」
「………一理あるな」
「あるのかよ」
僕としてはそんな感じ、”私”としては……もう一度ディフラカンに会えるかもなんて……おためごかしの贖いができるかもなんて思っていたりする、これはいけない考え。
てなわけで、部屋に戻るまでエウァルドさんにずっと抱っこされて部屋に近づこうとしないって約束でノシノシとエウァルドさんの大きな歩幅から生まれる揺れを感じながら廊下を進んでいるニッキーでございますよ。
ぶっちゃけた事言うとほとんど食堂と部屋しか行き来してないから屋敷の構造なんにもわかんないんだよね。
アルゴスさんに連れられるまま階段のぼったーとか右に曲がったーとかしてもここどこたろうって感想しかでないからまあまあ楽しい。
「あん? 誰だお前」
おんや? 変な声をあげててますね。
「………エウァルドさん? なんで後ろにさがってるの? エウァルドさん? 」
「帰るぞ」
「えっ、おまちを待って、状況把握する時間くらいはさせて」
ぼんやりしてるのを慌てて起こしぺちぺちとエウァルドさんの太い腕を叩いて止める。
アルゴスさんの視線の先、恐らくあの部屋に続く廊下の向こうを体を無理矢理動かして見てみるとそこには……そこには?
「やはりきたか、ガキども」
見覚えの、あるような……ないような。
全身銀の甲冑の、エウァルドさんにそっくりな声を出す誰か。
はて、名前はなんだっけ。
176
お気に入りに追加
3,084
あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる