燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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完結編 月の獅子の目は彼の者に

五話 適当なのがいいかもしんないかも

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微睡むってのは良いことだと思う。

現実の気怠さと、あとは……現実から思い切り逃避できたり?



「おめえさんさぁー」
「なんですうー? 」
「なんも知らねえ身で言うのもなんだが……もーちっと自我っての出したほうがいいと思うぞ」
「これでもだしてると思うんですけどねー」
へい昼寝から目覚めましたよ、へい。


「それでかぁ? 」
それ? 
んー……。

「これみたらもう自我マシマシでしょう」
「抱き枕が何言ってるんだよ」
「あんですとぉ? 」
寝起きの僕の思考レベルは宇宙である、何を言ってるのか自分でも分からない。
 

「ニッキー、寝起きに体を動かすのは体に悪い、もう少しこのままでいろ」
「はーい」
「おいおいおいおい、はーいじゃねえよ」
控えめに言うと抱き枕になるとのたまったくせに思いきり人のことを抱き枕にしてるエウァルドさんと被害者ニッキー、うむ……二度寝したーい。


「首尾はいかかですか? 」
「順調だ」
眠い目をこしこしとして、よし。

思考がはっきりー、と、おん? 

ニコニコしたダンさんが扉のとこに……。

「おはようございますダンさん、首尾とは? 」 
「もっとニッキー様との距離を縮めたいというエウァルド君からの相談を受けましてね、ご覧の通り早速実践してくれたようで何よりです」
「は? おまえさんまさか抱き枕にすれば距離縮まるとか言ったの? 」
「そうですが? 」
重たいエウァルドさんをどかしてむくっと起き上がればダンさんが機嫌良さそうに言ってアルゴスさんが口をあんぐりしている。


「そうですがじゃねえよ物理的に距離縮めてどうすんだよ」
「心の距離というのはですねアルゴス、まずは物理的に行うところからはじまるのです」
「……もしかしてそれ、あの姫さんにもやったのか? 」
「ええもちろん、良い蹴りをいただきました」
「駄目じゃねえかよ、活かせよその失敗」
「活かしましたが? 」
「そのままなんもせずにおだししてんだよ阿呆」
寝起きから少し騒がしい気もしなくもないけれどまあ、許容範囲内。


やかましいのは嫌いだけど盛り上がりの延長線上ならまあ構わない。

どこからやかましくてどこまで許せるかの線引きはその日の気分と体調で決まる、ここテストにでるよ僕は。

「ニッキー、ニッキー」
「はいなんでしょ」
「タオルを持ってきた、目を瞑れ」
「あびゃばば」
返事をしようとした瞬間ぽふっとくる蒸しタオル、少しさめてきた眠気をなんとなく取るような、むしろもっと眠くなるような気もする。

このあとは、なんだっけ、お風呂に入って、ごはんを食べて……また寝る? 自堕落だなあ、もっと頑張らなきゃ。


……なにを頑張るのだろうかね、



「さてさて、あとはお若い方々に任せてお夕食の準備をしてきます、ついてきなさいアルゴス」
「あん? 俺もすんのか? 」
「当たり前です、代わりに一品好みのものを用意しますよ」
「ならするか、ちぇー」
「それではニッキー様、一時間後にまたきますのでそれまでごゆるりとお過ごしくださいませ」
「はーい」
ご飯を作る雰囲気の終始ニコニコしてるダンさんとめんどくさそうにしてるアルゴスさんを見送って、僕はどうしようかなとちょっと悩む。

なやむ……けど、読書くらいしかやることないねえ。

「エウァルドさんエウァルドさん、そこの本棚から適当に一冊くださいな」

まあこういうのも悪くはないかもし!ない。

多分そのうちまたプチ癇癪ことなんかしなきゃって気分になるかもだけど、そんときゃそんときよね。



たぶん。
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