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完結編 月の獅子の目は彼の者に
三話 魔術とじゅじゅちゅ……噛んじゃった
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じっくり黙々、ケーキの食感と甘さに溺れていたところでふと思った。
ポンとまるで水の中から泡が浮き上がるように思いは疑問になる。
「ところでーえーと……アールゴスさん? 」
「おう、伸ばし棒はいらねえぜ? で、なんだいニッキーサマ、お腹いっぱいかい? 」
「いえ、まだまだケーキは味わうつもりです」
「まあこんな量だもんなあ、夕飯の後に回すんだよな? 」
「いえ、今食べ切る予定です」
「……あ? 今食べる? 」
「食べます」
「まじかよ」
腹の容量的に四分目くらい。
ケーキの山の半分以上を食べきったところであーる。
うん、案外食べれるもんだね。
四切れくらいはエウァルドさんダンさんアルゴスさんが食べてて、残りは僕のお腹に収まる感じ……結構食べるね、うける。
「それでですね~、聞きたいことかまあるんですけど」
「おうおう、何でも聞いてくれい」
「魔術師とかじゅじゅつとかってどんなのかな~って、弟子にしたいとか仰ってましたけど」
「お、興味出てきてくれたか? 」
「んーそれ以前の話ですね、そういうのよくわかんなくて、ざっくりと聞きたいなと」
目を光らせてたりとかしてるのは見たけど、何をする方々なのかはさっぱりなのです、うむうむ。
「ほーん? つまりは弟子になる気はあるってことだな? 」
「いえ、単なる疑問です」
「ちぇ、まあ好奇心は良いことだ、答えてやろう」
「ニッキー樣、紅茶やコーヒーだけでは飽きると思いレモン水を用意しましたが一杯いかがです? 」
「やったー、もらいます」
「どうぞどうぞ、エウァルド君は? 」
「もらおう」
味に飽きる、みたいのは今のところ起きてないけど変わることはいいことだから喜んで貰う。
「ん? アルゴスさんは? 」
「彼なら部屋の外に行きましたよ、恐らくすぐに帰ってきます」
「へえ、答えてくれるみたいなので小道具持ってきてくれるんですかね? 」
「でしょうね、ほら……余計なもの持ってきましたね」
「よけいなもの? あ、なんかもってきた」
「ホワイトボードだな」
「こうした方がわかりやすいと思ってな! 嬢ちゃんに無理言って借りてきた」
「メルディアから……ん? 次の休日の買い物リスト? 予備のコスメと新作アクセサリーだあ? 勤務中になにしてんだあいつ」
「キラキラなのいいですよねー」
「ええまあそうですが……はぁ、後で少し言っとくか」
ため息を付くダンさんをよそにまた一口、美味しいケーキを頬張って、もぐもぐと、うんおいしい。
「まってろよー、今図にしてやるからな~」
「…………」
なんか区分分けとか理論とか話し出しそうなアルゴスさんはどうしようか。
別にこんなかんじよーておしえてくれれば満足だったのにそんな大掛かりにしなくても……言ったら傷つけそうだな。
そこまでして止めるリスクよりも聞く面倒くささ取った方が得だな……うんやめとこ。
「できた! 」
できちゃった。
「食事の手はそのまま進めてもらって構わねえ、俺の声を耳に入れて後で気が向きゃあ書いたやつを見てくれれば満足だからな、いいな? いくぞ? 」
ラズベリー、木苺。
「まず魔術、これは主に専用の手順と燃料を用意することで火を起こしたり水を出したりできる」
「ふむふむ」
イチゴ、モモ、チェリーをいっしょくたに口に放り込んで、美味しい。
「燃料は色々とあるが、それらをまとめて魔力と呼称している、理由はまあ、その方がわかりやすいからだな」
「なるほど」
もう一切れに手を伸ばす、今度はモンブラン、上品な甘さが渋めの紅茶と合う、レモン水とはちょっと距離をおきたい好み。
「んで魔術だが、基礎はあれだ、地面に【炎】って書いて燃料流すとでる」
「でるわけないでしょう、わたしの時は炎がでるまでの過程も書いてようやくちょっとでましたよ」
「そりゃダンちゃんは才能が物理によってたからな、俺はそれででた」
「才能とかあるんですねー」
「そうだ、まあ実際はな、ある程度の才能は努力で補える」
「そうなんですか? 」
ちょっとまたコーヒーが欲しくなってきたかも。
「砂糖は? 」
「大丈夫です……なんでコーヒーでてきたんです? 」
「求めただろう」
「え、口にだしてない」
「顔にでてた」
「どうててたんだよそれ……」
コーヒー飲みたいな~とかピンポイントででるー? そんな表情。
「話戻すが、魔術ってのはな、そこらの職人と変わらねえ」
「ほう」
「経験と知識さえあれば大抵のことはできちまう、才能があるやつってのは人より数十倍身につく効率やセンスが良いだけだな」
「せんす」
「ああ、だが凡人でも数十倍努力すればある程度追いつけるもんだぜ」
「へぇー」
「その点に関しては聞き流してくださいニッキー樣、こいつの場合成人前に既に当時頂点だった魔術師泣かせてましたから」
「ありゃあ理論が甘かったから上書きしただけだ、俺は悪くねえ」
「うわあ……」
作った料理勝手にいじられたようなもんじゃん、かわいそ。
あったかいコーヒーいいねー。
「んで魔術の場合が努力ってのは魔力を通しやすくするための線が体中に染み付くもんだがよ、ニッキーサマはそれがめっちゃ濃い、まるで何年も毎日基礎魔術を使って魔力を消費して研鑽を積んでいたみてえにな、育てるのにこんな楽な人材はいねぇってわけだな」
「へー」
……ちょっとよくわかんないかも。
「記憶がないのが惜しいがそれはそれだ、問題片付いたら改めて教育すっから、そんときゃよろしく、んで呪術! これは俺よりクーちゃんのが詳しいんだが今はいねえ」
「トカゲさん詳しいんです? 」
「おう、クーちゃん昔は遺跡巡りしてて好奇心でへんなもん触って呪いの地雷を踏み荒らしてたもんよ」
「えー……」
「ざっくり話すと、原理は魔術と変わらねえ、燃料は魔力で呪うだの何だのを文字にして書けば成立する、だがよ、ちょっと面白えことがある」
「面白いこと? 」
「呪いってのは燃料に好きとか憎いとか感情を使うと効果がやべえんだ」
「そんなのも燃料にできちゃうんです? 」
「おうよ、まあ燃料にするための魔術は禁術扱いされてるんだけどな、大昔記憶まで燃料にして廃人になったやつがゴロゴロいてこれやべえって昔の王がその魔術そのものを禁止したんだとよ……一部地域じゃ全然生きてるがな」
「へー……怖いですね」
「怖いだろー? 間違ってもしようとはすなよ、そんときゃ俺もお説教だ、いいな? 」
「はーい、……ご馳走様でした」
「あん? 全部食いやがったな」
山盛りケーキ、美味しゅうございました。
食後にコーヒーをもう一杯、最高。
……眠くなってきたかも。
ポンとまるで水の中から泡が浮き上がるように思いは疑問になる。
「ところでーえーと……アールゴスさん? 」
「おう、伸ばし棒はいらねえぜ? で、なんだいニッキーサマ、お腹いっぱいかい? 」
「いえ、まだまだケーキは味わうつもりです」
「まあこんな量だもんなあ、夕飯の後に回すんだよな? 」
「いえ、今食べ切る予定です」
「……あ? 今食べる? 」
「食べます」
「まじかよ」
腹の容量的に四分目くらい。
ケーキの山の半分以上を食べきったところであーる。
うん、案外食べれるもんだね。
四切れくらいはエウァルドさんダンさんアルゴスさんが食べてて、残りは僕のお腹に収まる感じ……結構食べるね、うける。
「それでですね~、聞きたいことかまあるんですけど」
「おうおう、何でも聞いてくれい」
「魔術師とかじゅじゅつとかってどんなのかな~って、弟子にしたいとか仰ってましたけど」
「お、興味出てきてくれたか? 」
「んーそれ以前の話ですね、そういうのよくわかんなくて、ざっくりと聞きたいなと」
目を光らせてたりとかしてるのは見たけど、何をする方々なのかはさっぱりなのです、うむうむ。
「ほーん? つまりは弟子になる気はあるってことだな? 」
「いえ、単なる疑問です」
「ちぇ、まあ好奇心は良いことだ、答えてやろう」
「ニッキー樣、紅茶やコーヒーだけでは飽きると思いレモン水を用意しましたが一杯いかがです? 」
「やったー、もらいます」
「どうぞどうぞ、エウァルド君は? 」
「もらおう」
味に飽きる、みたいのは今のところ起きてないけど変わることはいいことだから喜んで貰う。
「ん? アルゴスさんは? 」
「彼なら部屋の外に行きましたよ、恐らくすぐに帰ってきます」
「へえ、答えてくれるみたいなので小道具持ってきてくれるんですかね? 」
「でしょうね、ほら……余計なもの持ってきましたね」
「よけいなもの? あ、なんかもってきた」
「ホワイトボードだな」
「こうした方がわかりやすいと思ってな! 嬢ちゃんに無理言って借りてきた」
「メルディアから……ん? 次の休日の買い物リスト? 予備のコスメと新作アクセサリーだあ? 勤務中になにしてんだあいつ」
「キラキラなのいいですよねー」
「ええまあそうですが……はぁ、後で少し言っとくか」
ため息を付くダンさんをよそにまた一口、美味しいケーキを頬張って、もぐもぐと、うんおいしい。
「まってろよー、今図にしてやるからな~」
「…………」
なんか区分分けとか理論とか話し出しそうなアルゴスさんはどうしようか。
別にこんなかんじよーておしえてくれれば満足だったのにそんな大掛かりにしなくても……言ったら傷つけそうだな。
そこまでして止めるリスクよりも聞く面倒くささ取った方が得だな……うんやめとこ。
「できた! 」
できちゃった。
「食事の手はそのまま進めてもらって構わねえ、俺の声を耳に入れて後で気が向きゃあ書いたやつを見てくれれば満足だからな、いいな? いくぞ? 」
ラズベリー、木苺。
「まず魔術、これは主に専用の手順と燃料を用意することで火を起こしたり水を出したりできる」
「ふむふむ」
イチゴ、モモ、チェリーをいっしょくたに口に放り込んで、美味しい。
「燃料は色々とあるが、それらをまとめて魔力と呼称している、理由はまあ、その方がわかりやすいからだな」
「なるほど」
もう一切れに手を伸ばす、今度はモンブラン、上品な甘さが渋めの紅茶と合う、レモン水とはちょっと距離をおきたい好み。
「んで魔術だが、基礎はあれだ、地面に【炎】って書いて燃料流すとでる」
「でるわけないでしょう、わたしの時は炎がでるまでの過程も書いてようやくちょっとでましたよ」
「そりゃダンちゃんは才能が物理によってたからな、俺はそれででた」
「才能とかあるんですねー」
「そうだ、まあ実際はな、ある程度の才能は努力で補える」
「そうなんですか? 」
ちょっとまたコーヒーが欲しくなってきたかも。
「砂糖は? 」
「大丈夫です……なんでコーヒーでてきたんです? 」
「求めただろう」
「え、口にだしてない」
「顔にでてた」
「どうててたんだよそれ……」
コーヒー飲みたいな~とかピンポイントででるー? そんな表情。
「話戻すが、魔術ってのはな、そこらの職人と変わらねえ」
「ほう」
「経験と知識さえあれば大抵のことはできちまう、才能があるやつってのは人より数十倍身につく効率やセンスが良いだけだな」
「せんす」
「ああ、だが凡人でも数十倍努力すればある程度追いつけるもんだぜ」
「へぇー」
「その点に関しては聞き流してくださいニッキー樣、こいつの場合成人前に既に当時頂点だった魔術師泣かせてましたから」
「ありゃあ理論が甘かったから上書きしただけだ、俺は悪くねえ」
「うわあ……」
作った料理勝手にいじられたようなもんじゃん、かわいそ。
あったかいコーヒーいいねー。
「んで魔術の場合が努力ってのは魔力を通しやすくするための線が体中に染み付くもんだがよ、ニッキーサマはそれがめっちゃ濃い、まるで何年も毎日基礎魔術を使って魔力を消費して研鑽を積んでいたみてえにな、育てるのにこんな楽な人材はいねぇってわけだな」
「へー」
……ちょっとよくわかんないかも。
「記憶がないのが惜しいがそれはそれだ、問題片付いたら改めて教育すっから、そんときゃよろしく、んで呪術! これは俺よりクーちゃんのが詳しいんだが今はいねえ」
「トカゲさん詳しいんです? 」
「おう、クーちゃん昔は遺跡巡りしてて好奇心でへんなもん触って呪いの地雷を踏み荒らしてたもんよ」
「えー……」
「ざっくり話すと、原理は魔術と変わらねえ、燃料は魔力で呪うだの何だのを文字にして書けば成立する、だがよ、ちょっと面白えことがある」
「面白いこと? 」
「呪いってのは燃料に好きとか憎いとか感情を使うと効果がやべえんだ」
「そんなのも燃料にできちゃうんです? 」
「おうよ、まあ燃料にするための魔術は禁術扱いされてるんだけどな、大昔記憶まで燃料にして廃人になったやつがゴロゴロいてこれやべえって昔の王がその魔術そのものを禁止したんだとよ……一部地域じゃ全然生きてるがな」
「へー……怖いですね」
「怖いだろー? 間違ってもしようとはすなよ、そんときゃ俺もお説教だ、いいな? 」
「はーい、……ご馳走様でした」
「あん? 全部食いやがったな」
山盛りケーキ、美味しゅうございました。
食後にコーヒーをもう一杯、最高。
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小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
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