燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

七十一話 終の部屋 クロトゥランの遺物

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「ディフラカンから移した不治の病が一体何なのかを調べて、何か効果のある薬はないかと悪あがきをしてその結果を本に収めている」

ただそれだけの部屋

実はちょっとだけ、”あの”部屋の本を読んだ。

ほんの一ページ、トカゲさんに見られながら持ち出す本を決めるときにちょっとだけ。



特に深い意味は無かったそうだ。


ただ、ただ、一人孤独に死ぬよりは、何かに没頭しながら逝きたいなーなニュアンスのことが書かれてた。。

「まてまてまて、まってください、何故そこで王家がでてくるんだ? 不治の病? ……本とは、公爵に渡したものであってます? 」
「そうですそうです、あれは過去のクロトゥランの長男が綴ったレポート? みたいなもの? なのかな」
思い出せ、思い出せ、あれはなんだった? 何が書かれていた? トカゲさんはなんて言っていた?

「全部は持ってこれないので、三代目の方と四代目の方が書いた、最初の一冊です」
「成程……? 何故初代の方のものではなく三代目や四代目のものなんですか? 」
「それは、一番古いのが三代目のもので……言い方が違うな、うん、無かったんです、初代の方の本と二代目の方の本が、三代目の方が一番古いと言ってました」
「それは、大きなトカゲが? クアルフ様と名乗る者が仰ったことですか? 」
「ですです、大きくて怖くてなんか愛嬌のある変なおじさん」
「へんな、おじさんですか」
自分をおじさんだーって、くわーって口を開いて。

……忘れる前の自分はあのトカゲさんと出会っていたのかしら、懐いていたのだろうか……仲が良かったのかしら。

いや、いいや? いやいや、思い出したぞう。

「確か、竜になる病だったとか」
「りゅう……? 」
「竜骸病? だっけ」
「……聞いたことのない名前だな」
「そういう病気? としか聞いてなかったので詳しくはわからないです、あぁそうだ、トカゲさんの本も多分あるしなんならもう一度”あの”部屋に」
「「 駄目に決まっているだろう 」」
「あ、はい、ですよね……」
怒られるのは仕方がない、しかたがない、でも、少しだけ、多分ほんの少しだけ焦がれる、”あの”お部屋。
七人しか書く者がいなかったのに埋まった壁一面の本棚。

血を拭き取った跡がこびりついた一冊。

殴り書かれた一ページ。

それは、使命を果たした証で見事光を救った証。

それは、罪の上塗りで身勝手の結晶。




クロトゥランクロトゥラン、光が好きなクロトゥラン。

有難迷惑、お節介、考えなしなクロトゥラン。

宙から迫る大火災を追い返し国を作るきっかけを作った光。

嘆き悲しむ妖精の怒りから国を守り大国への道を切り開いた光。

地の底の呪いを受け入れようとして、奪われたあの光。


そんな光をただ一人救えると勘違いした男の末の末。

「ニッキー? 」

……流石にネガティブすぎないかね自分、もっとこう……なんていうか比較的楽天家な筈なんだけど……ああそうか、そうかそうか理解した。

”私”だ、多分。

僕じゃなく私、ニッキーじゃない、クロトゥランの話だ。

頭じゃなく体が覚えている、思い出ではなく、知識として。

クロトゥランの長男の記憶、ええと、それは何だったか、名前は、名前はたしか、そう、そう、理解した。


それは、その名は、カストル。


千年続いたアスランの礎、人柱……身勝手で、自分本位なただの気弱な男。

その血を継いでいる自分も多分絶対……。

やめよう、もっとネガティブになる。



「すいません、また思考に気を取られてました」
「……そうか」


ああうん、きもちがわるいね。




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