燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

六十一話 照らす者を求める者 と ニッキー

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見た瞬間に理解したのです、分かったのです、オモイダシタノデス、多分。

だって頭の中に、やらねばならないことがでてきたから、きっとこれはオモイダシタに違いないのです。

光がいた、美しい人がいた。

金の髪、立派な体、煌びやかな気配、高貴な服、唯一の、光。

光は、美しいのです、輝く光は絶対なのです、この光を、永遠に、永遠に……だからこの身を捧げて、奪って……何を? 

ああわからない、わからないけれど……助けなければ。

願いを叶えなければ、なにを?

報いを受けなければ、なにをしたの? 

謝罪をしたい、贖いたい、恩を返したい。

ありがとうディフラカン、ごめんなさいディフラカン。

どうかどうかどうか、この身体を捧げさせて、懺悔を、憤慨を、己の半端な気持ちに呪いを。



と、"わたし"は言っている。


"僕"はよくわからない。



これは僕のものじゃない。

これというのはあれだ、感情というか記憶というか、感覚全てのことを指している。


綺麗な部屋、まさしく"王様"が寛ぐようなそんなお部屋と、こっちに怒った顔で近づいてくる部屋の主。

それを見て感じるこの焦がれるような気持ちは知らない誰かのもの、だと思う。

「あーやっべ……さては獅子とびらを弄ったなぁ……? 」

例えるなら、隣の部屋から聞こえるくぐもった声のような。

教室の隣のクラスから聞こえる悲鳴のような、隣の席ですすりなく声を聞いているような。


記憶がないときにこれを見せられたら、感じたら自分のものかと思うかもしれない、でもこれは違うと確実にいえる。

こう、はっきりとは表せないけれど、水と油を無理矢理混ぜようとしてる感じで、気持ちが悪い。

そう、うん、気持ちが悪いの。
うえってなりそうで、でも理解ができそうでしてはいけなくて……己を呪いたくなって捧げたくなってそれが正解ではないのが分かるから。

本当に気持ちが悪い。



そんなわたしの、いや僕の気持ちを頭に持ちつつも、感情が溢れてくるのは……変な感じ。



「やいクアルフ、なんだその姿は、ああ? なんて顔してやがる」
「あう……」
「いや今はどうでもいい、会いたかった、もう一度会いたいと何度思ったか、ん? そいつは……ニッキー君か!?  おいクアルフ、一体全体なんだそれは、どういうことか説明しろ」
深みいる声がする、尊き方の声が、姿が、おじさんに向けて声を向けている……あれ? 後ろのトカゲやっべとか言ってなかった?

「あ、うんその……どうしよっかなあ」
おじさんは慌てている、ディフラカンは怒っている、低く怒れる獅子のように声を荒げている。

僕は両手で本を持ってるし、頭の整理とかでなにもできない。

でも考えることはできる、怖い顔の人はいやだけど、目を背けたい気持ちをグッと堪えて、頭のノイズを冷静に抑えて考えようまずここはどこか、廊下は何処に?

「いやまずは話をだな、おいこらクアルフ、何故後ずさっているこっちこい」
「お、お邪魔しましたー! 」
「おい! 」
「あ」
とか悠長に考え始めた途端に無情に扉はトカゲの手で閉められた。

ディフラカンの驚いた顔が見えた、あのままにして良かったのでしょうか、よくわからない。



「ふう……あぶないあぶない」
「ふうじゃないのですけども」
「え? 」
くるっと後ろに振り返って、額の汗をぬぐう動作をしているおじさんをひと睨み。

「いまの……」
「いまの? 」
「いまのやつ説明して貰いたいんですけども」
「……なにもわからないって言ったら」
「怒りますね」
「そっかー…………ごめんね」
「あーん?  ちょっと説明不足とか諸々に関して文句言ってから帰りたいのでそこになおってください、怒ります」
「え、いやでも」
「あん? 」
「なんでもないですう……」
冷静に考えようとか、もっと真面目に考えようとか、たぶん僕にはあんまりあってないと思う、考えてもよくわかんないし。


尊きディフラカンを尊び、あの声に耳を貸して、自分を大事にして、お父様たちに恩を返して……やること多いな、めんどくさくなってきた。

とりあえず考えたことをするとして、ニッキー、おこです。



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