燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

六十話 決まらない目標 光を前にして

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「それでねぇ! みてみてここイペウったら隣の国の遺跡に僕が行くこと伝えたら俺もいくーってうるさくて夜逃げする気持ちでいったんだーでねでねーここみて! 別の大陸行った時の記録だよちゃんと書いてるじぶんたらえらーい! すーーんごい楽しかったの」
「ちょっとあの、おじさん」
「獅子と妖精と魔法使いがたくさんいるけどこの大陸は何故か魔獣はすくないの、他の大陸はそんなことはなかったのになんでなのか、これの原理を突き止めたいなあ、て思うんだけど多分獅子が食べてるんじゃない? ておじさん思うわけだけど調べたいなあーでも死んでるからなあ~、もうちょっと人生あればなあ~! ああーくやしいい! 」
「おじさん」
「まあでも仕方ないしでさあニッキー、このおじさんの35年の愛憎的な集大成的な資料をごらんなさい、たっくさんごらんなさい、おじさんの成果を、でん! 見てこれ! 魔法使いの国の呪物レポート! 」
「へいおじさん、話が長いよおじさん」
「あいたあっ」
トカゲの頭をペチンとはたく、いい音がした。

正気にもどれー、と念じながら、多分念じた、鬱々と気持ち? 頭の隅に追いやれる程度にはおちついた。

というよりあれだ、それ以上の呆れてきなやつがたくさんある、なんやこのおじさん、て。


「なにさー、本棚のことしりたいって言うから教えてるのにー」
「おじさんの自慢話は訪ねてないんですけど? 」
「……たしかに? 」
「納得しないでもらえます? 」
「いやだってぇ、生きてる人に自慢したいじゃない、こんな功績他にお目にかかれないよお? 」
「僕的にはおじさんの自慢話が初めてになるんすけどね」
「やだうれしい、あいたぁ! 」
もっかい叩いとく、ペチチン、どうしよう罪悪感が沸かないなんて、ニッキーさん悪い子だこと。

まあうん、我に帰ろう。

途中までは良かったのだよ、途中までは。


本棚の前に行ったのは正しい、疑問を解消するためだからね。

本がなんなのかを聞いた、これも正しいね、疑問が解消して頭すっきり、祖の後がニッキーさん困るやつ。


本棚の前に座って一冊二冊三冊、大きな本をとりだしてぺらっとなかを開いてからがいけない、とてもいけない。

何処かへ探索に行ったという話をたくさん長く長く、最初はともかく最後はめんどいの一言に感想が終わる、とてもいけない。

ネガティブな自分が引っ込んで冷静で乱暴な自分がでてくる位にはいけない。

げんなりとする、嫌悪とはまた違う感情になる、呆れる、自己分析するとよくわからない結論に至る。



「時間ないって話は何処にいきました? 」
「え、あ……そうだった、やめて叩こうとしないで! 」
トカゲがくわっと口を開いてビックリしている、さらに疲労感がどこからかでてくる……はぁあ。

「しませんよ、もう……なにしようとしてたんだっけ」
「なんだっけ、呪物レポート5ページ分あるけど聞いてく? 」
「聞きませんよバカちんですね、本を二冊三冊貸して貰うことできます?  今後の参考にしたいので」
「僕の!? いいよやったー! 」
「喜ばないでください、おじさんのは一冊だけで良いです、他の本もあわせて三冊です」
「えぇー……」
「へいへい、適当なのくださいな」
「わかったよー……今度は聞いてね? 僕の自慢話」
「覚えてたらいいっすよ」
しょげるトカゲの肩を叩いて立たせて本を取って貰う。

おじさん曰く、この本棚に納められた本は全て、日記なんだそうな。

過去のクロトゥランの死の間際の少しだけできた余裕に書き上げた自分の生きた証、功績。

決してだれにも見られないけど、だからといって何もなかったじゃ悲しいからとみんな、特に誰に言われるでもなく書いて、死んだあとに自分で納めて、どこかに行くらしい。

いったいどこに行くのかはそれはまた疑問だけど、まあそれは後で調べれば満足できるでしょうとニッキーさん思うわけ。


「はい、これと、これとこれ、重たいけどこの部屋にいる間は大丈夫だから、廊下にでたらルドルフあたりに渡してあげなさい」
「ありがとうございますー、やだ重たい、やだー」
分厚くて大きな本を三冊、大きなトカゲの手から受け取ってみたは良いけど、シンプル重たい。

「重たいって言ったじゃない、ころばないようにねー」
「はーい、色々ありがとうございました」
「いーえー、可愛い甥に会えておじさんも嬉しかったよ、こちらこそありがとね! 」
にっこりトカゲの笑顔、中々に愛嬌がある。

「それじゃあ行きますね、バイバイ」
えっちらおっちら、ふらつきはしないけど扉の方へ振り返って歩く。

重たい本を早く手放したい気持ちでのしのしと。

「はいばいばい、あっさりしてるのは嫌いじゃないね、……あぁそだ、嬉しいついでにひとつ助言だよ」
「ん? なんです? 」
「あぁごめん、そのまま歩いてて、聞いてくれるだけでいいから」
「あぁ、はい」
振り返りかけた首を戻して、扉までえっちらおっちら。

「記憶のないクロトゥランなんて過去にはいなかったからはっきりとは言えないけど、今の君は自我があやふやですごい危ない」
「ほうほう? 」
よいしょ、よいしょ、あと10歩くらい。

「獅子が言ってたんだけど、クロトゥランの長男は生まれたその瞬間からディフラカンを第一に考えて、ディフラカンのことしか考えられなくなってほの人のために動くようになる」
「へぇ」
「赤ん坊のころからだよ? こわいよねえ」
「ですねえ」
なにそれ、こわぁ。

「流石にそれはって獅子も思ってるらしくて僕らクロトゥランの自我がある程度育つ10歳までは普通の人間として育つよう抑えてもらってるってわけ、獅子ってすごいねー」
「ですねー」
ちょっと休憩、あと5歩くらい、体力ないな、ふう。

「でねでね、いまの君は記憶が空っぽで、知識だけは残ってる半端な状態なわけ、なにが言いたいかと言うと~……もしディフラカンが近くにいても冷静になってね、てこと」
「……なるほど?なるほど 」
よくわからないけど、冷静になれと、なるほどわからない。

「いいね? 君はもうディフラカンに捧げる必要がないの、捧げ終わったあとの、君だけのやりたいことを探しててね! 」
「考えてみますー」
「えぇー」
了承はできない、なにするかわからないからね、自分。

あと2歩、1歩で、ついた。

「……開けれねえですね、おじさん開けてください」
「おっけー、ちょっとごめんよー」
「はいはーい」
重厚な扉の前に立って、多分真後ろにいるおじさんに声をかけて、少しだけ息を整える。

「……あ、そういえばお父様たちにおじさん見せるのやばくないです? 」
見たらびっくりするよ多分。

「大丈夫大丈夫、ここと廊下の境目空間がねじ曲がってるからあっちからはニッキーは見えてもぼくは見えないよ、たぶん」
「たぶん」
あっけらかんてしている。

「ディフラカンとか獅子とか特別な人なら見えるけど流石に次男には見えないよ、たぶん」
「たぶんなんですね」
「確証はないからね、開けるよー」
大分雑に感じる、けどまあいいか。


「おなしゃすー、きゃっ、眩しい」
青い手が伸びてドアノブをひねって外へと扉が開いたときに一瞬真っ白な光が見えて慌てて目を閉じて、開けたらそこは廊下じゃなかった。

「んん? 」
みたことない豪華な部屋だった。

真っ白な壁、白いソファと真っ赤なカーペット。
金色の壺となにより、なによりなによりなにより、その部屋の真ん中に立っていた、いた。

いた。

「おじさんおじさん、なんですこれ」
「さあ、気をつけておいき……あれぇなんだいこれ、あっ、やっばい」
開けてくれたおじさんも外を見て、疑問の声をあげたそのさきに、いた、イタ。

「クアルフ……?  」
「やば、ばれた」
とても光々しい、唯一の光が、ディフラカンがいた、いた、いたのです、みつけたのです。



捧げなければ、ならないのです。









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