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本編
断章 とあるクロトゥランの生誕とその成果
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45の年のいつかに役目がやってくる、遠くから流れてやってくる、こわい、こわい。
そのこわいなにかを自分は、私は、ぼくはディフラカンから奪わなくちゃいけない。
ディフラカンとは輝くもの、クロトゥランは捧げるもの。
長男は捧げ次男は存続させいついつまでも光のために役目を全うする、実に簡単、明快、
とても簡単な話なのだ、と。
10歳を迎えた日の朝の夢のことだ。
起きているのにそれは夢で、目は覚めているのにそれは夢のような不思議な場所に現れた獅子が教えてくれた。
つまりは、クロトゥランの長男は贅沢な捨て駒である。
彼の王の助けとなる、そのためだけに生まれて、それ以外はどうでもいい。
捨て駒、生け贄、犠牲、それだけを期待されていて、それ以外は知らない、と、うむ。
実に虚しい
僅か10の子供に何を教えているのでしょうあの化け物は。
まあ、でも、まあ……良いでしょう、そういう時もあるさ、とその時からぼくはただやりたいことだけをするようになったのでした。
クロトゥラン家の使命とか、そういうのは、うむ、お兄ちゃん頑張っちゃう。
父は快く手を貸してくれた、イペウは興味を持ってくれた、弟はいずれ当主になるのだからと怒っていた。
亡くなった叔父から受け継いだ不思議な屋敷の図書館に入り浸って、この国について調べるようになった。
獅子に愛された人の国アスラン、獅子が愛した”ただ一人の”ためだけに王国へと変貌を遂げた愛に溢れた国。
事実、王は愛されるべき存在だ、間違いはない。
それはそうだ異論はないし、ぼくも愛するとも。
城にある古文書にはこう書かれていた。【王は人のみならず、神、妖精、そして大地に愛されそして祝福されたのだ、我ら臣民はそのおこぼれにあずかっているに過ぎない、故に王は絶対である、王なくしてアスランは無いのだ】
うむ、大体はあっている。
王が愛されるのは当然である、でもちょっと違う。
王は愛されている、民に、獅子に、でも神や大地には愛されてはいないしなにより妖精は興味すらもたれてはいない。
じゃあ獅子はなんなんだってなるけれど、あれは神でもなんでもない、ただの生き物だ。
獅子とは、1000年と数年前に空の向こう、夜に見える星の彼方からやってきた人を超えた生き物だった。
神のような超常的なことができるだけの存在であり、実際は悠久にも近い寿命を持つ生物。
ディフラカンという王を愛している大いなる獣、大いなる獅子だと、これを調べてだれが書いたのか皆目見当すらつかない、ちょっと気になるけど重要とは感じない。
獅子はなんでもできる、なんでもだ、この国を見て、ディフラカンを見て、その繫栄を見て、楽しんでいる。
うん、意味がわからない、なにを言ってるんだろうねこれ、頭おかしいね。
とはいえだ、3年かけて屋敷の本という本を読んだけど、自分の好奇心を完璧に満たせる答えはなかった。
ちなみにベッドと本棚しかない部屋の本は興味湧かなかったからパス、専門外のことしか書いてなかったからつまらない、うむ。
45のどこかでクロトゥランの役目を果たす、つまりそれまでの時間、20年は自由ってことに他ならない、そうだよね? うん、そう決めちゃった、仕方ない仕方ない。
たった20年しかないのだ、あんまり無駄にはできない、だから当主の面倒ごとは弟に全部押し付けた、責務も、責任も、重圧も全部。
ごめんねルドルフ、めっちゃ怒ってて怖かったよ。
怒られるのは当然、自分勝手なのは分かっているけども、せめてこの国はなんなのかとか、知りたいじゃない?
そう、うん、一体自分はだれのために身を捧げて自分はどこに行くのか、役目を果たすその時までに少しは納得、妥協できる答えが無くては死ぬに死にきれない。
自分には20年時間がある、うん、大丈夫、きっと。
ん? あれ? あれえ?
20年、20年、でもよく考えたらあれだ、食事睡眠、あとほかにも必要経費で時間を使うわけで……あれえ? トータル10年あるかなあ、これ、
と、あーだこーだ考えた末に導きだした結論はこれだ”そうだ、遺跡巡りをしよう”
1000年続いた国だ、1000年、魔法の国からも妖精の国からも、必ずくる災いを退けて繁栄した国だ、見れるものは幾らでもある。
星の訪れとは、妖精の踊りとは、大地の祝福とはなんなのか、建国から今までの歴史を洗いざらい、それはもうどっかんどっかん頭にたたきこんでやろうじゃないか。
と、好き勝手傍若無人自由奔放に過ごしてきましてですね、お役目の時までそれは楽しく迷宮なりを探検して得た答えは。”楽しかった”
うん。
うん……。
求めていた答えはなにひとつ得られなかった。
20年かけた成果は当たり前のことだった。
この国がいかに発展したかとか、どれだけ素晴らしいかとかだけでこの国が一体何なのかはかすりともしなかった。
頑張った成果がこれかあ、まあ楽しかったからいいけどさあ、”何も分からなかった”だなんてむなしいなあ、悲しいなあ、知りたかったなあ……。
ニッキーは17で役目がくるらしい、早いね。
役目は、災いはぼくの体に移したから余力があればもう一回探検したかったけどちょっと無理。
ああ、からだ痛い、いた、いたた、ほんとにいたい、無理。
また成長するのかここ、はあ、もう少しマシな病気ないのかい? 即死とはいかないまでも緩やかにいくやつとか、わがままかな? 何もできないのはな、医者の勉強しときゃ良かったわ、今更だけど。
むむ、痛くて手は動かせない、けど最後まで、このベッドの上で考えることは続けよう、最後の最後の情報の整理、やだこれ、走馬灯ってやつじゃない? うわあなんかむかつく。
ごめんねイペウ、ごめんねルドルフ、頑張ってねニッキー、君の願いが叶うことを祈っておくよ、こんな、なにも残せなかった叔父の祈り何ていらないかも……ん?
ああ、変な結論がでそう。
何も残せない、なにもない、つまりつまりは、国が出来てからの事を調べても無駄で、だって完璧な王と獅子の力で繫栄した国の汚点なんて微々たるもので。
あ、うそ、うそ、重要なのはこの国ができる前の、もう少し前のことを、調べれば良いってことじゃ、え、うそ、てことはぼくいままで本当にむだなことして。
むだ、な、こ、と。
「たしかに、お前が欲しいものは手に入らなかったがむだじゃあねえぞクロトゥラン」
だ、れ?
「俺のことはどうでもいい、とんでもねえ姿になってるがお前も立派なあいつの子孫、メンタルケアくらいしてやる、いいかよく聞けクロトゥラン、お前のその疑問は死んだ後に解消しろ、以上だ」
なる、ほど。
そうしてぼくは生を終えたのです、45年の積み重ねを終えたのです。
まあでも、今こうして、何かをやっている? 自分がいるのでまあいいかなと。
詳しいことを省くと、死んだ後もクロトゥランはやれることがあるみたいで、甲冑の人が好きにしろと言うから、好きにしているのだ、えへん。
月に住まう大いなる生き物とディフラカンとの関係、アスランは何故できたのかクロトゥランとはディフラカンとはなんなのかをこの体で模索できるのは良いとして。
ねえニッキー?
なんでこの部屋に来たんだい? 夢ならともかく生身のままで、叔父さん怒っちゃうよ?
そのこわいなにかを自分は、私は、ぼくはディフラカンから奪わなくちゃいけない。
ディフラカンとは輝くもの、クロトゥランは捧げるもの。
長男は捧げ次男は存続させいついつまでも光のために役目を全うする、実に簡単、明快、
とても簡単な話なのだ、と。
10歳を迎えた日の朝の夢のことだ。
起きているのにそれは夢で、目は覚めているのにそれは夢のような不思議な場所に現れた獅子が教えてくれた。
つまりは、クロトゥランの長男は贅沢な捨て駒である。
彼の王の助けとなる、そのためだけに生まれて、それ以外はどうでもいい。
捨て駒、生け贄、犠牲、それだけを期待されていて、それ以外は知らない、と、うむ。
実に虚しい
僅か10の子供に何を教えているのでしょうあの化け物は。
まあ、でも、まあ……良いでしょう、そういう時もあるさ、とその時からぼくはただやりたいことだけをするようになったのでした。
クロトゥラン家の使命とか、そういうのは、うむ、お兄ちゃん頑張っちゃう。
父は快く手を貸してくれた、イペウは興味を持ってくれた、弟はいずれ当主になるのだからと怒っていた。
亡くなった叔父から受け継いだ不思議な屋敷の図書館に入り浸って、この国について調べるようになった。
獅子に愛された人の国アスラン、獅子が愛した”ただ一人の”ためだけに王国へと変貌を遂げた愛に溢れた国。
事実、王は愛されるべき存在だ、間違いはない。
それはそうだ異論はないし、ぼくも愛するとも。
城にある古文書にはこう書かれていた。【王は人のみならず、神、妖精、そして大地に愛されそして祝福されたのだ、我ら臣民はそのおこぼれにあずかっているに過ぎない、故に王は絶対である、王なくしてアスランは無いのだ】
うむ、大体はあっている。
王が愛されるのは当然である、でもちょっと違う。
王は愛されている、民に、獅子に、でも神や大地には愛されてはいないしなにより妖精は興味すらもたれてはいない。
じゃあ獅子はなんなんだってなるけれど、あれは神でもなんでもない、ただの生き物だ。
獅子とは、1000年と数年前に空の向こう、夜に見える星の彼方からやってきた人を超えた生き物だった。
神のような超常的なことができるだけの存在であり、実際は悠久にも近い寿命を持つ生物。
ディフラカンという王を愛している大いなる獣、大いなる獅子だと、これを調べてだれが書いたのか皆目見当すらつかない、ちょっと気になるけど重要とは感じない。
獅子はなんでもできる、なんでもだ、この国を見て、ディフラカンを見て、その繫栄を見て、楽しんでいる。
うん、意味がわからない、なにを言ってるんだろうねこれ、頭おかしいね。
とはいえだ、3年かけて屋敷の本という本を読んだけど、自分の好奇心を完璧に満たせる答えはなかった。
ちなみにベッドと本棚しかない部屋の本は興味湧かなかったからパス、専門外のことしか書いてなかったからつまらない、うむ。
45のどこかでクロトゥランの役目を果たす、つまりそれまでの時間、20年は自由ってことに他ならない、そうだよね? うん、そう決めちゃった、仕方ない仕方ない。
たった20年しかないのだ、あんまり無駄にはできない、だから当主の面倒ごとは弟に全部押し付けた、責務も、責任も、重圧も全部。
ごめんねルドルフ、めっちゃ怒ってて怖かったよ。
怒られるのは当然、自分勝手なのは分かっているけども、せめてこの国はなんなのかとか、知りたいじゃない?
そう、うん、一体自分はだれのために身を捧げて自分はどこに行くのか、役目を果たすその時までに少しは納得、妥協できる答えが無くては死ぬに死にきれない。
自分には20年時間がある、うん、大丈夫、きっと。
ん? あれ? あれえ?
20年、20年、でもよく考えたらあれだ、食事睡眠、あとほかにも必要経費で時間を使うわけで……あれえ? トータル10年あるかなあ、これ、
と、あーだこーだ考えた末に導きだした結論はこれだ”そうだ、遺跡巡りをしよう”
1000年続いた国だ、1000年、魔法の国からも妖精の国からも、必ずくる災いを退けて繁栄した国だ、見れるものは幾らでもある。
星の訪れとは、妖精の踊りとは、大地の祝福とはなんなのか、建国から今までの歴史を洗いざらい、それはもうどっかんどっかん頭にたたきこんでやろうじゃないか。
と、好き勝手傍若無人自由奔放に過ごしてきましてですね、お役目の時までそれは楽しく迷宮なりを探検して得た答えは。”楽しかった”
うん。
うん……。
求めていた答えはなにひとつ得られなかった。
20年かけた成果は当たり前のことだった。
この国がいかに発展したかとか、どれだけ素晴らしいかとかだけでこの国が一体何なのかはかすりともしなかった。
頑張った成果がこれかあ、まあ楽しかったからいいけどさあ、”何も分からなかった”だなんてむなしいなあ、悲しいなあ、知りたかったなあ……。
ニッキーは17で役目がくるらしい、早いね。
役目は、災いはぼくの体に移したから余力があればもう一回探検したかったけどちょっと無理。
ああ、からだ痛い、いた、いたた、ほんとにいたい、無理。
また成長するのかここ、はあ、もう少しマシな病気ないのかい? 即死とはいかないまでも緩やかにいくやつとか、わがままかな? 何もできないのはな、医者の勉強しときゃ良かったわ、今更だけど。
むむ、痛くて手は動かせない、けど最後まで、このベッドの上で考えることは続けよう、最後の最後の情報の整理、やだこれ、走馬灯ってやつじゃない? うわあなんかむかつく。
ごめんねイペウ、ごめんねルドルフ、頑張ってねニッキー、君の願いが叶うことを祈っておくよ、こんな、なにも残せなかった叔父の祈り何ていらないかも……ん?
ああ、変な結論がでそう。
何も残せない、なにもない、つまりつまりは、国が出来てからの事を調べても無駄で、だって完璧な王と獅子の力で繫栄した国の汚点なんて微々たるもので。
あ、うそ、うそ、重要なのはこの国ができる前の、もう少し前のことを、調べれば良いってことじゃ、え、うそ、てことはぼくいままで本当にむだなことして。
むだ、な、こ、と。
「たしかに、お前が欲しいものは手に入らなかったがむだじゃあねえぞクロトゥラン」
だ、れ?
「俺のことはどうでもいい、とんでもねえ姿になってるがお前も立派なあいつの子孫、メンタルケアくらいしてやる、いいかよく聞けクロトゥラン、お前のその疑問は死んだ後に解消しろ、以上だ」
なる、ほど。
そうしてぼくは生を終えたのです、45年の積み重ねを終えたのです。
まあでも、今こうして、何かをやっている? 自分がいるのでまあいいかなと。
詳しいことを省くと、死んだ後もクロトゥランはやれることがあるみたいで、甲冑の人が好きにしろと言うから、好きにしているのだ、えへん。
月に住まう大いなる生き物とディフラカンとの関係、アスランは何故できたのかクロトゥランとはディフラカンとはなんなのかをこの体で模索できるのは良いとして。
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