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本編
五十六話 クロトゥラン家の役目と 実感の少なさ
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お行儀よく椅子に座って、テーブルの上を見てぐっどスマイルするニッキーなのでした。
じゃあなくて、ほんの少し、少しだけ、お腹が空いたかもと思った瞬間、目の前にほかほかのトーストが乗ったお皿が出されれただけだもん。
カーペットでせいざするお父様とか、すんごい隣に座ってハンカチ構えてるエウァルドさんとかとか、ちょっと邪魔だなーとかおもってるけども、……美味しいものが先ってことで。
「先ず、クロトゥラン家のことから話そう、ニッキーは食べながら聞いてくれ」
真面目な声と余所行きのしっかりとした服を身につけて、せいざのまま始めたお父様、顔色がちょっと大丈夫じゃない感じがする、あ、隣にダンさん構えてる、こわあ。
「まずだな、我が家は建国当時からいままでの千年続いているが、その実、なぜここまで続いたかよく分かっていないのだ」
「ほう? 」
「研究や政務で調べる暇がなかった部分もあるが、それにしてが不可解な点が多い……例えば、長男が必ず不慮の事故にあい、次男が当主となるところだ」
「……詳しくお聞かせください」
お父様に睨みをむけていたダンさんが僕をちらっと見て、眉間に皺を寄せてもう一度お父様を見た。
「クロトゥラン家はかならずニッキーとイアンのような二歳差の兄弟ができる、当然私にも二歳上の兄がいたが”不慮の事故”で死んだ、なぜ不慮の事故にあうかは、その点は濁させてくれ、聞かせて良いものなのか私にもわからない」
「……では、別の話を、納得するには不十分すぎる」
「ああ、今でこそ国の医療に関わること全般を担っているが、それも五代前の当主ががはじめたことで、私が読める範囲の書物では初代は神官をしていたらしい」
「神官? 月の獅子のですか? 」
「恐らくな、どういう経緯を経て医者としての地位を確立しようとしたのか不明だが、当主としての役割は家と国の繁栄と王への忠誠、家を守り国を護り王の側近となり、アスランの中であればほとんど怖いもののなしの私だが、本当に大事なものは守らせてはくれないのだろう」
「それは、なぜ」
「わからない、長男は長男としての役割があるとしか聞いていない、何故”それ”をしなければいけないのか、何故兄は、息子は。笑顔でいってしまうのか、私には何も伝わってはいない。知る権利さえないのだろう、歯がゆいものだが……息子だけは生きている」
お父様の視線が僕に刺さる、反応に困るというか、正直な話、客観的な感情しか浮かばない気がする
実感がないから悲しいんだな、と予想は出来ても、その先は思いつかない、結局は、そうね。
ニッキーって人間は大事にされてたんだなあ、て再確認した。
「……十年前、葬儀を行った時、あの棺の中にはなにもなかったということでいいのか? 」
「ああ、ただ花を敷き詰めて掟だと理由をつけて蓋を閉めて埋めた、実際はこの屋敷の開かずの部屋にニッキーや兄は消えていったのだが、ああそうだ、ニッキー」
「はいなんでしょう」
「覚えて入ればで構わない、あの部屋に兄はいたかい? 」
「……んーと」
「公爵」
「ああ大丈夫ですダンさん」
「いいえ、これはいけない、分かっているのですか公爵、もしこれで」
「特に気にしないので大丈夫です、ほんとです」
もしこれで”いた”なんて答えたら、あれだよね、つまりはちょっと酷い事になる。
でも、でもだ、多分僕が見て覚えている限りじゃ、死体なんてなかった。
「あの部屋にはそういうのはなかったですがなにもなかったんですけど、けどそういえば」
「そういえば? 」
あったかどうかの話とは関係のない話だけど気になってきちゃった。
「本が、たくさんありました」
「……ほん? 」
「壁一面本棚があって、そこにたくさんの本がありましたね」
思い出したらもっと気になってきちゃったな。
一体あれはなんなのか、何が書いてあるのか、ああそうだ、そうだよ、僕には時間がある、多分たくさん、だから。
「もう一度あの部屋に行って、読んでみたいですねえ……」
多分ダメだろうけど、お父様は許してくれないだろうけど、行ってみたい、行きたいなあ。
「いいぞ」
「まあそうですよね……ん? 」
「私がいない間に勝手に入られては困るからな、許可する」
「おお! 「ただし! 」 」
思わずにやけかけた口角を慌てて止める、顔をそれはそれはしかめて立ち上がったお父様を見る。
「私やダンの言う事は聞くように! 戻ってきてくれと言ったら戻るように、そして、そう、だな……私を、置いていかないでくれ……いいな」
「――わかりました」
多分、切実に言っているお父様、大事なことと頭では理解しているのに、なんでだろう、どこか他人事と見ている自分がいる。
実感が湧かない。
お父様の言葉よりも、部屋にいける喜びが勝っている、いかない方が良いのかもしれない、どうしよう、どうしよう。
「体を癒し私の心配なく動けるようになってからが本番だぞニッキー、問答無用で旅行に連れ出し楽しみと言う楽しみを体験させありとあらゆる贅沢を叩き込んでやるからな覚悟してくれ!」
「え、あ……なんて? 」
「この奇跡を逃してなるものかということだ、さて善は急げだぞダン! 準備をうぉお!? あ、足が!? 」
「おや、痺れましたか」
「えぇ…… 」
ダンディな顔が崩れてゆく。
凛々しくて怖い顔から真っ青に。
「す、少し待て……あだ!? 」
「触ると早く解けますよ……恐らく」
「怒り散らかすぞきさまぁたたた!! やめんか!」
人差し指でお父様の足をつっつくダンさんの真似したいけど自重しよう、見てるだけで面白いから。
「……うけるー」
「そうか、良かったな」
「よくないわそこ! 笑わないでくれたまえ!! 」
「いやあ……ねえ? エウァルドさん」
「そんなことより準備をするぞ、ニッキー」
「ああはいエウァルドさん、着替えます? 」
「こら! 話を流そうとしないでくれるかね?! 」
「まずは歯みがきだ」
「あ、はい」
仏頂面のエウァルドさんにちょっと和んだ、かもしれない。
あとお父様は面白い、だから好き、かも。
もっと自分をしっかりもって頑張ろうね、自分。
じゃあなくて、ほんの少し、少しだけ、お腹が空いたかもと思った瞬間、目の前にほかほかのトーストが乗ったお皿が出されれただけだもん。
カーペットでせいざするお父様とか、すんごい隣に座ってハンカチ構えてるエウァルドさんとかとか、ちょっと邪魔だなーとかおもってるけども、……美味しいものが先ってことで。
「先ず、クロトゥラン家のことから話そう、ニッキーは食べながら聞いてくれ」
真面目な声と余所行きのしっかりとした服を身につけて、せいざのまま始めたお父様、顔色がちょっと大丈夫じゃない感じがする、あ、隣にダンさん構えてる、こわあ。
「まずだな、我が家は建国当時からいままでの千年続いているが、その実、なぜここまで続いたかよく分かっていないのだ」
「ほう? 」
「研究や政務で調べる暇がなかった部分もあるが、それにしてが不可解な点が多い……例えば、長男が必ず不慮の事故にあい、次男が当主となるところだ」
「……詳しくお聞かせください」
お父様に睨みをむけていたダンさんが僕をちらっと見て、眉間に皺を寄せてもう一度お父様を見た。
「クロトゥラン家はかならずニッキーとイアンのような二歳差の兄弟ができる、当然私にも二歳上の兄がいたが”不慮の事故”で死んだ、なぜ不慮の事故にあうかは、その点は濁させてくれ、聞かせて良いものなのか私にもわからない」
「……では、別の話を、納得するには不十分すぎる」
「ああ、今でこそ国の医療に関わること全般を担っているが、それも五代前の当主ががはじめたことで、私が読める範囲の書物では初代は神官をしていたらしい」
「神官? 月の獅子のですか? 」
「恐らくな、どういう経緯を経て医者としての地位を確立しようとしたのか不明だが、当主としての役割は家と国の繁栄と王への忠誠、家を守り国を護り王の側近となり、アスランの中であればほとんど怖いもののなしの私だが、本当に大事なものは守らせてはくれないのだろう」
「それは、なぜ」
「わからない、長男は長男としての役割があるとしか聞いていない、何故”それ”をしなければいけないのか、何故兄は、息子は。笑顔でいってしまうのか、私には何も伝わってはいない。知る権利さえないのだろう、歯がゆいものだが……息子だけは生きている」
お父様の視線が僕に刺さる、反応に困るというか、正直な話、客観的な感情しか浮かばない気がする
実感がないから悲しいんだな、と予想は出来ても、その先は思いつかない、結局は、そうね。
ニッキーって人間は大事にされてたんだなあ、て再確認した。
「……十年前、葬儀を行った時、あの棺の中にはなにもなかったということでいいのか? 」
「ああ、ただ花を敷き詰めて掟だと理由をつけて蓋を閉めて埋めた、実際はこの屋敷の開かずの部屋にニッキーや兄は消えていったのだが、ああそうだ、ニッキー」
「はいなんでしょう」
「覚えて入ればで構わない、あの部屋に兄はいたかい? 」
「……んーと」
「公爵」
「ああ大丈夫ですダンさん」
「いいえ、これはいけない、分かっているのですか公爵、もしこれで」
「特に気にしないので大丈夫です、ほんとです」
もしこれで”いた”なんて答えたら、あれだよね、つまりはちょっと酷い事になる。
でも、でもだ、多分僕が見て覚えている限りじゃ、死体なんてなかった。
「あの部屋にはそういうのはなかったですがなにもなかったんですけど、けどそういえば」
「そういえば? 」
あったかどうかの話とは関係のない話だけど気になってきちゃった。
「本が、たくさんありました」
「……ほん? 」
「壁一面本棚があって、そこにたくさんの本がありましたね」
思い出したらもっと気になってきちゃったな。
一体あれはなんなのか、何が書いてあるのか、ああそうだ、そうだよ、僕には時間がある、多分たくさん、だから。
「もう一度あの部屋に行って、読んでみたいですねえ……」
多分ダメだろうけど、お父様は許してくれないだろうけど、行ってみたい、行きたいなあ。
「いいぞ」
「まあそうですよね……ん? 」
「私がいない間に勝手に入られては困るからな、許可する」
「おお! 「ただし! 」 」
思わずにやけかけた口角を慌てて止める、顔をそれはそれはしかめて立ち上がったお父様を見る。
「私やダンの言う事は聞くように! 戻ってきてくれと言ったら戻るように、そして、そう、だな……私を、置いていかないでくれ……いいな」
「――わかりました」
多分、切実に言っているお父様、大事なことと頭では理解しているのに、なんでだろう、どこか他人事と見ている自分がいる。
実感が湧かない。
お父様の言葉よりも、部屋にいける喜びが勝っている、いかない方が良いのかもしれない、どうしよう、どうしよう。
「体を癒し私の心配なく動けるようになってからが本番だぞニッキー、問答無用で旅行に連れ出し楽しみと言う楽しみを体験させありとあらゆる贅沢を叩き込んでやるからな覚悟してくれ!」
「え、あ……なんて? 」
「この奇跡を逃してなるものかということだ、さて善は急げだぞダン! 準備をうぉお!? あ、足が!? 」
「おや、痺れましたか」
「えぇ…… 」
ダンディな顔が崩れてゆく。
凛々しくて怖い顔から真っ青に。
「す、少し待て……あだ!? 」
「触ると早く解けますよ……恐らく」
「怒り散らかすぞきさまぁたたた!! やめんか!」
人差し指でお父様の足をつっつくダンさんの真似したいけど自重しよう、見てるだけで面白いから。
「……うけるー」
「そうか、良かったな」
「よくないわそこ! 笑わないでくれたまえ!! 」
「いやあ……ねえ? エウァルドさん」
「そんなことより準備をするぞ、ニッキー」
「ああはいエウァルドさん、着替えます? 」
「こら! 話を流そうとしないでくれるかね?! 」
「まずは歯みがきだ」
「あ、はい」
仏頂面のエウァルドさんにちょっと和んだ、かもしれない。
あとお父様は面白い、だから好き、かも。
もっと自分をしっかりもって頑張ろうね、自分。
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