燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

五十一話 ダンスホールと宝石の輝き

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はっ、ぐっすりねてしまった!



「水だ」

あ、はい、飲みます飲みます。


まずはコップもらってのんで、目元をハンカチで軽く拭いて、あとで顔を洗うとして、ストレッチもちょっとあとで。


おろ? 寝たときはなかったまくらが首に差し込まれてる、もこもこしてら。


「おはよーございますエウァルドさん、ここどこですか」
「ダンスホールらしいぞ」
「だんすほーる、へー……なんでダンスホールに? 」
「案内を受けていると言っただろう、その途中だ」
「へー」
「見ろ、立派だぞ」
「んん? なにが? 」
「ホールの造りだ、王城でもないただの屋敷がもつには、些か豪華にすぎる……あぁ、責めている訳では無いからな? 褒め言葉だ」
「ん? あぁはい、よくわかんない 」
「そうか」

天窓から光が入って、ツヤツヤの床が反射して、透き通って、だいりせき? てやつ? それともなにか宝石みたいな石を混ぜてる?


「わかんないですけど、きれいだねぇ」
「だろう? 」

とにかくきれいな床と、金色のヒラヒラのついた赤いカーテン、天井にキラキラとしてるシャンデリアと、なにか、絵が、何枚か……なんか本棚のスペースないかしら、きのせい? 


「ニッキー様、お目覚めはいかがです? 」
「あ、ダンさん、おはようございます~」
「えぇ、おはようございます」

カツン、カツーンと、この空間だと革靴の音がよく響く。


笑みとシワとシルバーの短髪が良く似合うダンさんが何か小さな箱を持ってトコトコと、ちがうな、テキパキとやってきた。


「そういえばこんなものがありましてね、よければ」
「お? おお? 」
「……耳飾りか」

金と青、二色の宝石のシンプルなイヤリングが中にもふもふの布にくるまれていた。


シンプルに銀色の金具に付いただけの小指の爪の大きさの宝石、シンプルだけどもそれは暖かい光に反射して、キラキラと輝いて、まるで輝いているみたいで。

魅入られる、みたいな。


「綺麗」

輝くのは良いことだ、きっと。

心がこう、いいなってなる。


いつまでも、いつまでもそっと見ていたくなるような美しさがとても好き、なんだと思う。


「宝物倉庫を整理していた時に出てきたことを思い出しましてね、私が何かすることはできませんが、貴方様でしたらお好きなように」
「おぉ?  んー……つけていいと? 」

この、これを? 僕が? んー? 


「ええ、言い忘れていましたが、この屋敷の物はすべて先代からニッキー様へ継承されていると公爵から聞いています」
「えっ、先代ってなんすか」

なにそれ初耳、先代ってなによ。


「さあそこまでは、あぁ、恐らく公爵の兄のことでは? お会いしたことはありませんがなんでも探検家だったとか」
「へぇー」

探検家、ねえ、ロマンあるじゃあないですか、よく知らないけど。

きっと輝くようなお宝を求めたり、探したり、保護したりするんでしょうねえ。


「ああそれと、この宝石に限らず宝物室には宝飾品や服がありましたのでよければ夕方にでも参りましょう」
「ちょっと気になりますねぇ、やったー」

この輝く宝石みたいなのがまだまだあるなんて、なんて素敵なのでしょう。


眺めているだけでうっとり、手に取れば光にかざしたくなるし、身につけたら、たぶん嬉しい。


あぁ、なんか……たのしい。


「ニッキー、ニッキー」

「あ、はいなんでしょう、近っ」

光に当ててキラキラさせていればなんとやら、エウァルドさんのお顔がすぐ隣に。


「それはどうするんだ、つけるのか」
「つける、あー……どうしましょうかね」

青と金の宝石、綺麗は綺麗だけど、両方つけるとなるとそこまで相性が良い、じゃないな、シンプルに好みに合わないだけだ、片方ずつの色だったら普通に好き。

でも見たところはこれふたつでひとつっぽいし……あ、そうだ良いこと思い付いた。


「エウァルドさんエウァルドさん」
「なんだ」
「片方エウァルドさんつけてくださいよ、もう片方僕が付けるんで、ほら、ペアルック? みたいな」
「……ほう、悪くないな」
「でしょー? 」

どっちかが金のイヤリングを、どっちかが青のイヤリングを、なんか良くないかな、うん、とっても良いと思う。



「……青だ」
「青を僕が? 」
「ちがう、俺が青だ、おまえは……金が似合う」

じっ、と僕を見るエウァルドさん。

まっすぐじーっと、じぃーっと。


「金かー」
「あぁそうだ」

強くうなずくエウァルドさん、ちょっと、ちょーっと疑問がなくもないけど、まあいいか。


「うん、わかりました」
「よし、耳をだせ、どちらでもいい穴は……空いていないな、まあいい挟むだけだ」
「あいあいー、うぇっ」

あたまに手を添えられて優しく強引に耳を向かされて、ちょっとふにっと衝撃がひとつ。


「つけた、あとで確認してくれ」
「はーい」

ちょっと何かあるなーっていう違和感があるけれどまぁ、のんびりな生活のスパイスと思えば、ね?



「いいですねぇ、若者達が仲むつまじくしているのは」
「いや、そういうのじゃないっす」
「勝手に解釈しているだけですので」
「うわめんどくさい」

離れたところでニコニコ腕組んでるダンさんに思わず小言を漏らしつつ、耳にくっついたイヤリングを指でつつく。


「……うん」

わるくないわるくない。



「初々しくてよろしいですよ、えぇ、では少し予定を変えて……バルコニーにでも行きましょうか」
「ん?  なんでです? 」
「深い意味は特にありません、広く大きく、中央に小島のようなある湖は見応えがありましてね、紹介したくなりました、なにかご不満が? 」
「いえまったくー、エウァルドさんは? 」
「ん? 」
「エウァルドさん的には不満とかない? 」
「あぁ、おまえと過ごせるなら特にないぞ」
「だ、そうですダンさん、案内お願いします」
「えぇ、畏まりました」

報告連絡相談、的なのはかんぺき、確認もオーケー、で、ダンさんはニコニコじゃなくてニヤニヤしている。


「ん? 」

なんぞや。


「いいえなにも、さあ、参りましょう」

「はーい」

コロコロと、ホールにすごい響く音を耳にしながら進んでいく、うん、ちょっとたのしい、たのしいね。



鼻歌をうたいたくなってきた、なんてね。

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