燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

四十九話 食後のひととき 穏やかな会話

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パンをちぎってひとくち、野菜をひとくち、大きい豚があるのに何故か山盛りのステーキにかじりついたその口でパンにかじりついて、口いっぱいにしたらもぐもぐと、飲み込んだらもういっかい、もういっかい。

「水だ、飲め」
「はいー」
ごくっとひとくち、切り分けてもらった丸焼きにかじりついて、もぐもぐと。


そんなことを何回もくりかえしてたらなんと、あんなにあったごはん達がきれいになくなりまして。

「流石ニッキー様、よい食べっぷりで……屈強な兵士以上に食べましたね」
「まさか食べきるとは思わなかったが、作った身としては満足だ」
「おいしかったですー」
「それはよかった、口を拭くがよい」
「はいー」
お腹はいっぱい、満足、満足。


「本日のご予定についてですが……公爵聞いてます? こーうしゃーくー? 」
「ん? ああすまない、なんだね? いま空になった皿を眺めるのに忙しいのだが」
「左様ですか、では耳だけはこちらに傾けてくださいませ、ニッキー様はそのまま食後の紅茶でも飲んで」
「はいー」
「うむ……手ずから仕上げたものをこうも気持ちよく食べられると、嬉しくなるな」
動けないほど夢中に食べてなおかついまは車椅子に乗ってるからそもそも動く必要がない、楽園では? 

「ニッキー、ニッキー」
「なんですー? 」
「拭き方が甘い、こちらを向け」
「んー? 」
フキンを手にエウァルドさんがこっちを見てる、特に断る理由もない、甘んじてうけようじゃあないかね、うむうむ。

「まるで親子みたいだな、私が父親なのに……ふむう」
拭いてもらって前を向けば不満げなお顔のお父様がこっちみている、やだ恥ずかしい。

「確かに婚約者というよりかは親子か、仲睦まじい兄弟のようでほほえましいですね」
「共感はしたくないな、ふん」
「おや、親らしいこともせずによくそんな事が言えましたね、いい気味ですね」
「うぐう」
お父様の顔がくしゃってなって、笑顔が華やかになっていくダンさんの会話がなんか和やかで、なんかよくわからないけどうけるー。

「では話を戻しまして、公爵、昨日お渡しした手紙には目を通しましたね? 」
「ああ見たとも、面倒でならんが動くとも」
「よろしい……何故私は補佐の真似事をしているのでしょうね、追加の報酬お待ちしてますよ」
言われみれば確かに。

お父様が来てからダンさん、僕のお世話だけじゃなくて執事みたいなこともしてたかもしれない、過重労働だね、ん? てことはつまり?

「お父様ってパワハラとかしてるんです? 」
「してないが?! 」
「おやおやおや」
「パワハラはいけない事ですよお父様、うわやだー」
「しとらんしとらん! おいダン! お前のせいでニッキーが誤解しているではないか! 」
「いいですかニッキー様、これがパワハラです」
「ダ~ン~!! 」
顔を真っ赤にして怒るお父様は怖いけどその理由は面白い、どう反応しようねこれ。


「……面白いからいいか」
「いいのか? 」
「いいのです、まあエウァルドさん、ここだけの話なんですけどね」
「なんだ? 」
「ちょっとお茶を失礼、よし、これ聞かれたらお父様怒るかもなんですけどね」
「お父様いま目の前にいるのだが? ニッキー? 」
「お父様って真面目な時より慌ててるときの方が好感持てるんですよね~」
「ニッキー?! なんてことを言うんだ! 」
「なるほどそうなのか」
「そうなのかじゃない! 」
「ふ、ふふ、これは傑作だ……! 」
「おいこらぁ! 」
「面白いねエウァルドさん」
「そうか」
口抑えて震えるダンさんい牙をむくお父様もなんか、笑顔になるねよし決めた。

今日は真面目なニッキーは休んでもらって、いつもより楽しく、元気に過ごそうじゃないか。


「ここで提案なのですが公爵」
「これ以上なんだね」
「ニッキー様にはこの後館の中をぐるりと探索して頂く予定なのですが、ついでに公爵の武勇伝を語って差し上げましょうか? 」
「……よろしい、ニッキーに関しては自由に動いて構わん、多少の横暴も目を瞑ろうではないか」
「流石は国随一の医術師でございます、ダンは感激しました」
「英雄が息子の護衛になってくれてうれしいよ、ははは」
え、突然握手したんですけどこの人たち、こわ。


「いいかニッキー、あれが大人だ」
「……なるほどー」

エウァルドさんの言葉がとても心に染みます、たぶん。














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