燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

二十三話 和んで 圧されて 和んで

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お茶を飲んで、椅子に背を預けて目を閉じて外の音に耳を傾ける。




「……ふう」
眠くはないけど、少し微睡みたいというか、難しいことは考えたくない。

このまま眠っても良いけど、なんか勿体ない気がするから眠らないようにしよう。

今日はもうのんびりしていれば終わっちゃうけどなにか、勿体ないような気もする。


「……ふう」
「どうかしたか?」
お父様の声に目を開けると、テーブルを挟んだ向こうに座るお父様が僕を見ている。

「? なにがですか?」
「ため息をついているから、何かあったのかと思ってな」
「ああいえ、お腹がいっぱいで苦しいだけです」
「そうか、ならいい」
苦笑するお父様。


馬鹿にされてはないけどそれっぽい感情を向けられた気がするけど気のせい気のせい、そういう事にしとく。


ダンさんは仕事があるらしくて部屋の外に行っちゃったけど、そのうち帰ってくるかなと思いながらテーブルの上のお菓子をひとつ取ってぱくり、うむ、美味しい。


腹がいっぱいで動けないけど体はまだお菓子を求めている、仕方ないもうひとつ食べよう、うん、最高。


口の中の水分はちょっと無くなるけど素朴な甘さが癖になって何個でも食べられる、お腹は苦しいけどもう少しいただこう。


「ククッ」
「ん? なんです?」
「いいや?」
乾いた口の中をお茶で潤してもう一口を3回程繰り返していると、眉をあげたお父様が僕を見てニヤニヤと見ているではないか。


絶対なんかあるって顔しててなんかムカつく、やなお父様だ……お腹いっぱいだから気にしないけど。



とりあえず、思考をまったりと、ゆったりとさせて。

もっとのんびりと、明日か明後日あたりにリハビリでもしていけばいいやって言う楽観的な考えを意識して……あんまやりすぎると眠くなるからそこそこに。


あ、そうだ。
「ところでお父様、今日のおやつって」
「そうだなあ……、何を作ろうか」
顎に手を置いて考え出すお父様。

「個人的にはミートパイが食べたいです」
「それはおやつではない、昼に作ろう」
「やったー」
「ニッキー、左見てみろ」
「へ?」
美味しければ何でも良いからなんとなく待っていると、強い視線を横から感じる。


「ん? 」
「聞きたいことがある」
「んわ!? 」
「おっと、すまない驚かせた」
横をみて変に飛び退き思わず落ちそうになるのをエウァルドさんが慌てたように大きな手が腰に回り支えられる、


「ふう……びっくりした」
「すまない」
「いえ、大丈夫です」
「聞きたいことがあるんだ……答えて欲しい」
「え……と」
息を整える僕をエウァルドさんはしかめっ面のまま謝ると、僕の手を大きな掌で包んで、眉間の皺を深めたまま僕に顔を近づけて、言葉を重ねる。

「頼む」
「うーん……」
こういう時、どうすれば良いんだろう。

端から見たら、僕よりもずっと大きい男性に目線こそ合わせてるけど覆い被さる勢いで詰め寄られてる……色々と怖いね。


会って少し、見知らぬ男性のこの体制でフレンドリーとは程遠いこのしかめっ面、ゴツいけど怖すぎない顔だから良いけど子供だと泣かれてたね、多分、

少し考え込むくらいには圧がすごい。



「頼む」
ああそうだ聞かれてるんだったいけない、和んじゃった。




「内容によりますけど良いですよ~」
「感謝する」
ニコッと愛想半分の笑みで返して見た。

だけどエウァルドさんの顔の表情の変化は今一つ。

声のトーンも変わらない……けど僕の手は離さないのね。

なんかチグハグだけど、まあいいか。


気長に構えてよ。








 




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