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本編
八話 主は微睡み 日常は出来上がる
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人の気配が常にあって、会話ができる。
眠って、起きて、治してまた眠るだけの僕が心から願っていたものが、叶ってしまった、嬉しい。
「……んん」
「おはようございますニッキー様っ」
しょぼしょぼと目を開けた瞬間、横から寝起きの耳には大きい声が響き、起きかけ意識が驚く。
「……ん、おはよう、ございます」
体を動かし声のした方を見ればメルディアさんがニコニコと笑っていた。
「今日はとても暖かいので過ごしやすいかと! では仕度をしますので……あら? もう少しお休みになられます?」
「はい……眠いです」
「畏まりましたっ」
メルディアさんの常に高いテンションには良くついていけないけど、起きてすぐ挨拶してくれる人は貴重なのだ……。
それはそれとしてもう少し眠ります、おやすみなさい。
掠れかけた声でメルディアさんに言い目を閉じれば、起きかけの体はあっという間に眠りにつく、おやすみなさい。
目覚めました。
ぱっちりと目が覚めて、ベッドに寝ているまま伸びをする。
「むむ、ん~、……ふう」
すっきりとは疲れてしまった、これはいけない。
「おはようございますニッキー様」
「……おはようございます」
深く呼吸をして落ち着いた僕に騎士服の男性、ダンさんが笑顔で挨拶をしてくれた。
メルディアさんはびっくりして起きるけど、ダンさんの声は耳に優しくて個人的に好き。
なにより寂しくないのが一番素晴らしい。
「ニッキー様、お体の調子は如何ですか? 」
ゆっくりと起き上がろうとする僕の背中を支え手伝ってくれたダンさんはにこりと笑い言った。
「とても良くしてもらってるので特に不調はないです」
「勿体なきお言葉ありがとうございます こちらをどうぞ」
「あ」
「礼は不要でございます」
「むぅ」
渡されたコップの冷たい水を飲んだ僕を見てダンさんは柔らかく微笑む。
「本日は朝食を召し上がって頂いた後はごゆるりと優秀な医者をメルディアが連れて参りますので、本日は診察をして頂きましょう」
「……お医者さん?」
「えぇ、ニッキー様の体は素人の私から見ても危険だとわかりますので、食事をお持ちして参りますので少々お待ちください」
「あ、はい」
ダンさんが部屋から出る様子を眺め、僕は1人自分の世界に入る。
決してネガティブなものではなくかなりお花畑な、楽しい妄想。
この数日の楽しい記憶を繰り返して、……もう一度繰り返して……幸せを噛み締める。
妄想する自分を客観的に見ると少し虚しくなるけど、見なければ問題はない。
メルディアさんとダンさんとの触れ合いが、本当に嬉しい。
この屋敷では食事の用意や買い物はメルディアさんが請け負い、ダンさん部屋の掃除や庭の手入れや力仕事を担当しているらしい。
この人達の出会って数日。
食事は食べやすい粥を頂き、色々な世話をダンさんとメルディアさんにしてもらっているから頭が上がらない。
お礼をしようすれば却下され、謝罪をしようとすると却下される、その点はとても居心地が悪い。
ニッキー様という人がとても慕われているのはメルディアさんとダンさんの反応から察せれるけど、それが僕だなんて全く信じられない話は除外する。
ダンさんが持ってきた粥を頂いた後はのんびりと窓から青空を眺める。
やることもないし、あってもすぐにバテてしまう僕にはとても良い趣味である。
ゆったりとしていれば自然と微睡むもので、目敏く眠くなった僕に気づいたダンさんに寝かされ意識が落ちるその瞬間。
穏やかな空間を壊す声が響いた。
「お待たせしましたぁあああ! 」
「うるっせえ!! ニッキー様が起きるだろうが阿呆!!」
部屋の外からメルディアさんの元気すぎる声でお医者様の訪れが知らされた。
ダンさんはシンプルに怖かった。
眠って、起きて、治してまた眠るだけの僕が心から願っていたものが、叶ってしまった、嬉しい。
「……んん」
「おはようございますニッキー様っ」
しょぼしょぼと目を開けた瞬間、横から寝起きの耳には大きい声が響き、起きかけ意識が驚く。
「……ん、おはよう、ございます」
体を動かし声のした方を見ればメルディアさんがニコニコと笑っていた。
「今日はとても暖かいので過ごしやすいかと! では仕度をしますので……あら? もう少しお休みになられます?」
「はい……眠いです」
「畏まりましたっ」
メルディアさんの常に高いテンションには良くついていけないけど、起きてすぐ挨拶してくれる人は貴重なのだ……。
それはそれとしてもう少し眠ります、おやすみなさい。
掠れかけた声でメルディアさんに言い目を閉じれば、起きかけの体はあっという間に眠りにつく、おやすみなさい。
目覚めました。
ぱっちりと目が覚めて、ベッドに寝ているまま伸びをする。
「むむ、ん~、……ふう」
すっきりとは疲れてしまった、これはいけない。
「おはようございますニッキー様」
「……おはようございます」
深く呼吸をして落ち着いた僕に騎士服の男性、ダンさんが笑顔で挨拶をしてくれた。
メルディアさんはびっくりして起きるけど、ダンさんの声は耳に優しくて個人的に好き。
なにより寂しくないのが一番素晴らしい。
「ニッキー様、お体の調子は如何ですか? 」
ゆっくりと起き上がろうとする僕の背中を支え手伝ってくれたダンさんはにこりと笑い言った。
「とても良くしてもらってるので特に不調はないです」
「勿体なきお言葉ありがとうございます こちらをどうぞ」
「あ」
「礼は不要でございます」
「むぅ」
渡されたコップの冷たい水を飲んだ僕を見てダンさんは柔らかく微笑む。
「本日は朝食を召し上がって頂いた後はごゆるりと優秀な医者をメルディアが連れて参りますので、本日は診察をして頂きましょう」
「……お医者さん?」
「えぇ、ニッキー様の体は素人の私から見ても危険だとわかりますので、食事をお持ちして参りますので少々お待ちください」
「あ、はい」
ダンさんが部屋から出る様子を眺め、僕は1人自分の世界に入る。
決してネガティブなものではなくかなりお花畑な、楽しい妄想。
この数日の楽しい記憶を繰り返して、……もう一度繰り返して……幸せを噛み締める。
妄想する自分を客観的に見ると少し虚しくなるけど、見なければ問題はない。
メルディアさんとダンさんとの触れ合いが、本当に嬉しい。
この屋敷では食事の用意や買い物はメルディアさんが請け負い、ダンさん部屋の掃除や庭の手入れや力仕事を担当しているらしい。
この人達の出会って数日。
食事は食べやすい粥を頂き、色々な世話をダンさんとメルディアさんにしてもらっているから頭が上がらない。
お礼をしようすれば却下され、謝罪をしようとすると却下される、その点はとても居心地が悪い。
ニッキー様という人がとても慕われているのはメルディアさんとダンさんの反応から察せれるけど、それが僕だなんて全く信じられない話は除外する。
ダンさんが持ってきた粥を頂いた後はのんびりと窓から青空を眺める。
やることもないし、あってもすぐにバテてしまう僕にはとても良い趣味である。
ゆったりとしていれば自然と微睡むもので、目敏く眠くなった僕に気づいたダンさんに寝かされ意識が落ちるその瞬間。
穏やかな空間を壊す声が響いた。
「お待たせしましたぁあああ! 」
「うるっせえ!! ニッキー様が起きるだろうが阿呆!!」
部屋の外からメルディアさんの元気すぎる声でお医者様の訪れが知らされた。
ダンさんはシンプルに怖かった。
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