燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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本編

四話 ネガティブは願望を呼び 日光は目を殺す

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「優しくされたい……あたま撫でられたい……ぎゅってされて頑張ったね、て褒められたーい、包容力高めな人と仲良くなりたいいいいい! もうやだこんな生活!!」
口から純粋な本音が漏れるけど、リハビリに支障はないから、我慢はしない。

腹も空かず、喉も乾かず、たっぷりある時間の中で自分を観察して中々に面倒くさい性格なのは理解した、そしてこの空間には誰もいない。

簡単な話不満漏らしながらでないとやってられない位ストレスマックスなのだ! 


「……よし、よし」
今僕はベッドから離れ、一歩一歩最新の注意をはらいカーペットの床を歩いている。

自分を褒めながら、願望を垂れ流しながら、そして筋肉痛の研究をしたやつを叩きながら、真っ暗な部屋を歩いて漸く、素晴らしい発見をした。

「お?」
自分の手すら見えない暗闇のなか手探りで進んでいると、テーブルらしきものを見つけた。

「おお?」
思わず興奮した声を上げテーブルの上を手で探ると細い紐を掴み、思わずそれを引っ張る。

「おおおお?! ……なにこれえ」
するとゆっくりと優しい光が部屋全体に灯り、暗闇に慣れていた目を細くした僕の目の前に、床から天井まで続く本棚が壁一面に広がった。


横を向いても本棚、後ろを向いても寝ていたベッドの向こうに本棚。

その上なにやら不気味な模様のようなものが天井にびっしりと描かれている、今後はみないようにしよう……いやなんか見覚えがあるような……疲れたしこれは明日だ。


それよりも問題なのは、出口だ。


本棚とか模様とか個人的にどうでもいい、外に出れる扉があるかどうか首を動かして……あった……!!

「と、とびら! 扉だ……!」
本棚と本棚に空いた空間にある、重厚な両扉、それがみえた瞬間僕のテンションが最高潮に達した。
衝動のままに歩き、扉を目指そうとして、膝から崩れ落ちた。


「……ええええ」
体力が無くなってしまった、ベッドからここまでなけなしの体力をつかい、ギリギリでベッドに戻るという計算が、驚いたり喜んだりと余計な体力を使い、その上後先考えず行こうとした結果がこれである。


「まあ、うん、こうなるかあ、こうなるよねえ……くそお」
続きはまた明日、ということで本日の寝床はカーペット、と。

キレそう……頭の中の筋肉痛研究者殴り飛ばしておこう……寝よ。

悔しい気持ちはあるけど我慢だ我慢……おやすなさい。











「……ふがっ」
おきた。

よし。

起きたぞおおおおお!! 体痛いぞおお! さあさっそく扉に! 扉にいくのだ! あ、無理、足に上手く力入らない。


テンション上げていきたかったけどどうやら僕の寝起きは良い方ではないと……とほほ。
なら極力体力を使わないよい虚無顔でうずくまってよ……なんか悲しくなってくるけど我慢我慢。







足が上手く動くようになったら善は急げと立ち上がった僕は広い部屋の、離れた所にある出口に向けて足を進める。

「いち、に、いち、に、いち、に……大丈夫、多分大丈夫」
距離にしてベッドからテーブルまで行って帰ってくる感覚、結構危ない気がするけど自分のペースで歩いて、昨日の自分を超える気持ちで、頑張れ頑張れ。


一歩一歩歩いて、少しずつ近くなって。

段々疲れてきて杖欲しいなと息が切れてきて、漸く扉の前につく。


「ふう……ついたあ」
たったこれだけの距離に時間をかけてこれ以上動けない体が恨めしいけど、それはそれ、これはこれ。


「……よし」
ネガティブになりそうな感情を誤魔化して、ドアノブに手をかける。

鍵かかってないと良いな、とかもし鍵かかってても簡単に解除できたらいいなとか、尽きない想像をしながら恐る恐る捻ったノブを引き、あっさりと開いてくれた。


「やったあまっぶし!! 」
喜んだのも束の間、部屋の外は廊下らしいものが見えたのが一瞬、暗闇と優しい光に慣れた目に窓越しに入った強い光に目が眩み悲鳴を上げ、思わず扉を閉めてしまった。


「……おそと、こわい」
ずるずると扉を背に床に座り、体力気力尽きた僕はしみじみと呟いたのだった、そして寝た。




おやすみなさい。














★★★

読んでいただきありがとうございます!
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