生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

おげんや豆腐

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十章 緩やかに劇的に

★不死人と死人★

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広く豪勢な客間に置かれたテーブル。


足を組む龍王の向かいに不機嫌をままに肘をつくアルギス、部屋の隅にアイデンとミネルスが音も無く立ち、最後にイウァンが二人から距離を置いた席に座ると同時に、苛立たしげに首を鳴らすアルギスが話を切り出した。

「んで? その何かってのは分かってんのか?」
「検討はついている」
「んじゃさっさと教えろよ」
「言われなくとも……」
面倒臭さを惜しげも出しながらも聞こうとするアルギスに訝しむ龍王に、アルギスは剣呑な視線を送る。

「やけに乗り気だな」
「余計な障害があるなら取り除くのが婚約者の務めだろうがよ」
「……婚約者だぁ? 」
冷静沈着だった中に声に威圧を乗せる龍王にアルギスはニヤリと笑う。

「結婚を誓った仲だ俺らだ」
「貴様のような者に……我が弟が手篭めにされる……だと……!?」
瞳孔が縦長に開くと額に血管を浮かせ立ち上がる、すると勝ち誇った笑みを深めたアルギスは鼻で笑った。

「お互い合意の上なら問題ねえだろうが、余所者が邪魔入るんじゃねえよボケが」
「あ゛ぁ゛……!?」
「あー……、本題を進めてくれるか?」
客観的に見れば、完全に痴話喧嘩。

保護者としての怒りと異常な愛を持つ義理の兄、そして同じく異常な愛を持ち婚約者、夫になろうとする男の自慢気な何か。

スケールこそでかいが本質がどうしようもない二人にイウァンが仲裁に入り、表面上は落ち着かせる。

「……文句は後に回そう」
「そうしてくれるとありがたい、アルギスも、余計な事を言うんじゃないぞ」
「……チッ」
イウァンの嗜めに不機嫌ながらもそっぽを向いたアルギスに龍王は僅かに目を開け感心したように笑うと、表情を引き締める。

「さて、弟についてだが……お前達は弟についてどの程度の知識をもっている」
「知識。それはどう言った意味合いで……」
「性格や風貌、生い立ちに能力、弟自身が分かる範囲の情報をお前らはどの程度知っている? いや……どの程度聞いているんだ?」
「そりゃあ…「……彼が死霊族の魔王であり、多種多彩な技能とアイテムを駆使する謎大き少年だな」おいこら」
「お前が喋るとややこしくなるからここからは俺が話す、黙っとれ」
「……後で覚えてろよ」
「分かってる」
「秘蔵の酒で許してやらぁ」
「……手痛いなぁ」
「ククッ」
遠い目をしながらも唸るアルギスをあしらったイウァンの光景に龍王は楽しげに喉を鳴らした。

「やはり良いな、飽きなくて善い、そして弟もずいぶんと信頼をようで何より、だが、妬ましいなぁ」
「あ?」
「そう睨んでくれるな、最大限に誉めてやっているんだぞ? 我が弟は見てくれの通り純心な性格をしているが中身はかなり警戒心が強く嫌うものはとことん嫌う清々しい側面もあれば自己嫌悪と自己完結と自己思考を全て自らの中で繰り返すまるで……まるで他者を拒絶するが如き思考回路を持っている、愛い奴だ」
「……自己?」
「……あぁ、あれか」
「ほお、覚えがあるか」
「何かを耐えるような姿なら見た」
「ほう……」
未だアルギスの腕の中に、怒り不機嫌な中穏やかに眠るラグーンの顔を穏やかな眼差しで見たアルギスは訝しげに眉を寄せるイウァンに口を尖らせ言った。

「前にこいつの迷宮に潜ったことあったろ? 余分なお供ぶっ飛ばして最下層に座るラグ迎えに行ったときだ」
「あれか……」
「理由は不明だが、辛そうな顔で何かを耐えていた」
「……興味のそそる事だ」
「たまに……思い悩む顔をすんだよなラグは、あれの理由が見つからなくて歯痒いぜ」
「貴様が不甲斐ないという事ではないのか「それは絶対にない」無駄に自信家だな」
「それがコイツの取り柄だからな、それは追々解決するとして、何が問題なんだ?」
「謎だとは思わんのか?」
「……何がだ?」
「死霊族の、数百年も魔王の座につく魔族がまるでただの少年のように、人間のように振る舞う様を見て何かしら違和感を覚えると思うのだが」
「それがラグだからな」
「あぁ、それがラグーンだな」
初めに遭遇したときから今まで、通常の魔族とは程遠い穏やかに周囲に溶け込んだ正念に、特に思うところはない、しいて上げるなら自らを傷つける隠し事をする程度。

「……認識の違い、か、まぁいい」
顔を合わせ首をかしげる将軍と王を半眼で眺めた龍王は皮肉げに口角をあげた。

「妬ましい……我以上に親交を深めている節がある点が実に」
「あ?」
「礼を言いたいところだが純粋に憎い」
「……本筋からそれてくれるなよ?」
「分かっている……むう」
イウァンの仲裁に難しげな顔で唸る龍王は腕を組み眼を瞑る。

「貴様らは思っていなくとも、不自然なのだ弟は」
「……どういう意味だ」
「我が弟【不死人】は名前こそ大層なものだが本質はそこらの蠢く死人と変わらん、これは能天気な貴様らでも解るな?」
「一言余計だが、そうだな」
「蠢く屍の脅威は正気を失い食欲のままに無差別に周囲を襲う点、死体が多くできる災害や戦場にて自然と沸き周囲に混乱を呼ぶ、故に例えそれが元は栄華を誇った者であろうと害獣認定してきた、それが死人だ」
「……当たり前の事じゃねえか」
「単なる前置きだ、弟はその死人でありながら人としての記憶と理性を保ち人間を越えた能力を有している、誇らしいながらにこれが違和感の要因である」
「……わっかんねぇ」
「まさか……!」
半眼のアルギスが悪態をこぼすアルギスを他所にイウァンと、周囲の者達は息を飲んだ。

「……何処が問題なんだ?」
ラグーンを腕に抱くアルギス
だけが現状わ飲み切れてなかった。











★★★
読んで頂きありがとうございます!




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