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十章 緩やかに劇的に

とても限界です

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「ラグ、説明」
「……ちょっと」
「まあ待て、そう急かすな馬鹿者」
「ああ?」
自分でもあんまりわからない事案の説明を求められ迫り来る圧力を止めたのは事案の元凶である男性……る、ルドレウス? さん。

「今のラグーンに質問を投げてもよい返事は取れぬぞ?」
「見も知らねえ野郎が分かったような口聞くんじゃねえよ」
「そうカリカリするでない、ようなではなく分かっているのだ若造……ラグーンに嫌われるぞ?」
「あぁ゛?!」
得意気に笑うルドレウスさんと眉間の皺とか出すオーラがやばいアルさんがよろしくないことになっている。

ドスを効かせた声を聞いたルドレウスさんは急に笑みを消し低い声を出したり


「亭主関白、傍若無人、監禁……もし弟を苦しめているようなら殺すぞ」
「する訳ねえだろ……気に食わねえ」
「同意見だ、我も貴様は気に食わん」
表面上だけの笑顔が消えたルドレウスさんの真剣な声と、恐ろしい顔によってもたらされる緊迫とした空気。

今日、何度目だろうかこれは、そろそろ僕のメンタル、胃、頭、その他もろもろが限界を迎えそうになってちょっとヤバイです、はい。

「……あの」
「おうどうした」
「なにかな愛しのラグーン」
「「あぁ?」」
「……なんでもないです」
同時に反応しなくても良いじゃない。

「蛮将貴様! 貴様が不必要に声を張るから見ろ、ラグーンが萎縮しているではないか」
「てめぇが俺の声に被せるからだろうが、安心しろラグーン、こんなドラゴンすーぐに追い返してやるからな」
「……この国を滅ぼしても良いと言うことか?」
「それはやめてくれ!」
「だとよ?」
「ならば貴様だけに留めておこう」
随分と物騒な会話とたまらず上がる王様の悲鳴。
手放しに傍観できたらどんなにいいか……。

色んな感情が合わさって胸がいたい。
限界ですわ……。


「む? ……ラグーン」
「なんでしょう」
じりじりと言い合っていたルドレウスさんは真顔になっている僕の顔を確認すると紅く輝く目を開きアルさんを睨む。

「おい蛮将、話を戻すぞ」
「はぁ? なに言ってんだおまえ………分かった」
なんで僕の顔見て納得するんですかアルさん、僕は至って普通ですよ。


「ラグーンよ」
「はい」
なんでしょう。

「暫し目を閉じるがよい」
「……何ででしょうか」
ルドレウスさんの言っていることが理解できず顔を見れば、ルドレウスさんと目が合う。

「辛いだろう?」
「……辛い、とは」
「そのままの意味と受けとれ……嫌な臭いだ、視界を遮断し耳だけを傾けることを許そう」
命令することに慣れた上からの主張は普段ならムッとするのだろうけど今の僕には少し有りがたい気がした。

「お言葉に甘えます」
色々と、眠いし考えることたくさんだし……少し限界。
イッツ、ブラックアウト、でもちょっと明るい。



「……おいドラゴン」
「龍王と呼べ」
「なんで分かった」
「何とは?」
「こいつの状態だよ」
ルドレウスさんに対して苛つかず怒らない声で訪ねているアルさん。

「愛だ」
「角折るぞ」
「腕へし折ってやろうか」
「「あぁ゛?」」
……仲が良いとポジティブに捉えよう。
あぁまた余分なこと考える僕……頭いたい。

「ふむ、……少しさわるぞ」
「へ?」
「目を開けるでない」
異様に近くなった声に開けようとした目を目元ごと大きくて温かい手が覆い、撫でられる。


……この手の感触はアルさんじゃない。
眠い……。


「暫し眠れ……愛しい弟よ、起きたとき全て終わっている」
耳に溶け込む低音と急速に強まる眠気に僕は意識を手放した。











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