生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

おげんや豆腐

文字の大きさ
上 下
111 / 182
七章 欠片

ひまつぶし

しおりを挟む
窓から入るそよ風が青いカーテンを揺らし、風乗り耳に聞こえる木の葉が擦れる音。

紙がめくれ、時折茶器の音が部屋に静かに響き渡る。




あぁ…………僕の好む穏やかな時間。

僕は元々学校の隅でのんびりするタイプで好き好んで騒ぐようなことはしない。

テンションが高ければそりゃはしゃぐけど普段はあまり喋らない。

だからこうして好きな本を、するのは端から見たらつまらないだろうが楽しくってたまらない。



何処か出掛けるのかと思っていたら元の部屋に帰ってどーしようかと思ったけど、案外、これもいいかもしれな。


「なあラグ~」

「んんー? 」

そんな事を思いながらのんびりと読書をしていると、ふいにベッドの上でごろごろ寝ていたアルさんに話しかけられ顔をあげた。


「どうしたのアルさん」

「暇だ」

「ん? 」

「遊べ」

「今僕読書してるんだけど……」

「俺何もやることねえぞ」

「何もない部屋だからね」

この部屋、というかアルさんの暮らしているお部屋、リビングルームと寝室の部屋に服を仕舞うための小部屋、それにお風呂にトイレに洗面台と、並みのホテルのような移住空間になっているけど、これといって面白そうなものが全くないんだよねぇ。


「ラグと会う前までは寝るための部屋だったからなぁー」

「どーせ休みの日は飲みに行ってたんでしょ? 」

「良く分かってるじゃねえか、だから遊べよ」

「やだよめんどくさい」

「ああん? 」

それとはこれとは別よ。

片眉を上げて軽く威圧的な声を出すアルさんだけど、布団の上でごろごろと寝そべっているアルさんを見て怖がる人は恐らく誰もいないと思う。


「これ読み終わったら遊んだげるからちょっと待っててよ」

「俺は今ラグと遊びてえ」

「何もない部屋で遊ぶって何するの」

「そりゃあ……ぐんずほぐれつひとつしかねえだろ? 」

「はあー? 」

「心から好いた奴が目の前にいるんだ、我慢できると思うか? 」

「してよそこは」

「流石に突っ込むのは初夜にとって起きてえからしねえが、その準備をするくれえならいいだろ、な? やろうぜ」

「…………はぁ」

にやりと笑ってちょいちょいと手招きをするアルさんに思わずため息をついた僕は本を閉じアルさんをじろりと見る。


「なんだよ」

「ぐんずほぐれつとか言ったけどさー内容は?」

「セックス」

「………ストレートにありがとうございます」

思わずお礼言っちゃったけど……はぁー………。


そーかー、セックスかー……。




アルさんと暮らしはじめて半年、もしくはそれ以上の日がたつけど、意外にも直接なんかそういう感じに持っていく事は……まぁ間接的にはエロ親父だったけど……うん、あったけど。


ストレートに来たか……。

まあでも流石に……。


「な? やろうぜ」

「ねぇアルさん……」

「ん? 」

ちょっと食いぎみに言ってくるアルさんに僕は言った。


「このくそ暑い時期にそんな覚悟いること、ナチュラルにしたくないわ」

「したくないってストレートに言うなよ……」

「だってアルさん熱いじゃん」

「熱いってなんだよ」

ちょっと傷ついてるよだけど、もう少し待って欲しいわ。



「もう……アリムさん召喚するからその人とぐんずほぐれつやって」

「するなするなするな」

「お呼びですかマスター!! 」

アルさんが頭をかいた所で部屋の隅にある衣装部屋の扉を勢い良く開けて現れたアリムさん……。


ええ……あなた、ええ………。


固まる僕にたまらずアルさんも起き上がり吠える。

「するなっつってんだろおい! てか俺の部屋に勝手に入るな鎧! 」

「僕呼んでないもん」

名前呼んだだけだもん。


「マスターが私の名前を呼んでくれた、ただそれだけで私はどんな所へでも馳せ参じますぞ! 」

「…………うぜえ」

「そもそも! 今日は天気がとても良いにも関わらずこのような場所にマスターを閉じ込めては精神衛生上とてもよろしくありませんよショタ将軍! 」

律儀に扉を閉め、かつかつと歩いてきたアリムさんはびしっとアルさんに向けて指を差す。


「だ れ がショタだ! その鎧跡形もなく砕くぞおら! 」

「まぁ貴方がショタなのはこの際どうでもいいのです」

「あ〝ぁ〝? 」

「雲ひとつない快晴なのです、このような場所ではなくどこか外へマスターを遊びに連れていかれてはどうかと、臣下としての意見を述べさせて頂きます」

「絶対ショタの部分話す必要ないでしょ……」

「個人的な意見です」

「そう……」

ぴしりと敬礼をする彼にそうとしか言えない。


「で、ショタ将軍はどうするんですか」

「ああ? 」

「マスターをどちらに連れていくんですか」

「連れていかねえよ」

「はあ? 」

「……はい? 」

アリムさんが低く、くぐもった声をあげるのを少しびびりながらアルさんを見ればポリポリと耳をかいた。


「しょーじき休みの日に用もねえに外に行くなんざしたくねえし、今日ぐれえはラグを一人占めしたいんだよ俺は」

「ほう……」

中々………中々恥ずかしい事言ってくれじゃないですかこの人……り


「第一、ラグを他の奴に見せるのが嫌だ、一生俺のテリトリーに閉じ込めたい」

「えぇ……」

「なんだよ、惚れたか? 」

「違うわ」

ちょっとおっ、と思ったの返してよこの気持ち。



「じゃあどーするの」

「だから快楽的な事をだな」

「させませんよ煩悩ゴリラ」

「煩悩ゴリラ……」

「なぁラグ、こいつ壊してもいいか? 」

「ダメダメ、……んーじゃー、オセロでもする? 」

「……オセロ? 」

首を傾げたアルさんに僕は手近の影に手を入れた。






※※※





そしてテーブルに置かれた大きなオセロ盤、椅子をもう一つ用意して向かい合うように座るアルさんに僕は説明をする。




「ここに白の石と黒の石があるじゃろ? 」

「おう」

「黒の石の左右上下どれかをを白の石で挟むと、黒の石がひっくり返って白になる」

「おお」

「白の石の人と黒の石の人で争ってどっちが多くの石を取れるかで競うのがオセロなのじゃ」

「面白そうじゃねえか、……で、その喋り方はなんだよ」

「なんとなく」

「なんとなくか」

「うむ、じゃあ早速」

「おう」

本腰をいれて、ゲームスタート。




~1戦目~




「盤の角のマスを取ったらその石はもうひっくり返せないから強いよー」

「なるほど、……とったぞ? 」

「え、」

「ついでにラグの石がほとんどないが、大丈夫か? 」

「え、……こうだ」

「ならこうだな」

始めた時は割りと優勢だったはずの僕の白い石、だけどものの数分でアルさんの黒い石一色に。



「………もう一回」

「おう」

リベンジなう。





※※※


~2戦目~



「これなら、どうかな」

どうにか二つ角を取れたけど……。


「なら、ここだな」

「あ、」

そこが最適解とばかりにアルさんの置いたマスによってひっくり返される僕の石………。



「俺の勝ちだ」

「……もう一回、僕も久しぶりだから、もう一回」

「あいよ」

半場ムキになる僕にテーブルに肘をついたアルさんは苦笑した。




~3戦、4戦を経て5戦目~




「………あっれぇ」

「どうした? 」

石を置こうとした手をふいに止め固まる僕にアルさんは笑う。



「どう計算しても負ける未来しか見えない」

「察しが良いじゃねえか、ほれ、お前の番だぞ」

「oh………」

仕方なく、そこにしか押せないような場所に石を置くと、すぐにアルさんが石を置き、置いたばかりの石がひっくり返されていく。



後石を置ける場所は限られていると……。



「………降参」

「んー? 」

これ以上は無理と判断した僕はやれやれとため息をつき手を上げる。


するとアルさんは楽しそうににやにやと口を歪ませる。


「やだもうアルさん強い」

「潔いのは嫌いじゃねえ」

ぐでっとテーブルに手を広ければふいに頭を撫でられる。


「コツを掴めばやり易いゲームだな、チェスより簡単だ」

「遊びやすさが売りだからねぇ……うーん、僕のやる気がもう無いわ~」

「じゃあ別のゲームにするか? 」

「いんや、僕は読書がしたい」

もう集中しすぎて疲れたわ……。


「……ちぇ~」

そう言って本を取り出した僕にアルさんは口を尖らせた。


まって頭の手の力強くなって。


「いたいいたいいたい、もっと優しく頭撫でて! 」

「やーなこった」





このやろう。














しおりを挟む
感想 181

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...