生産チートの流され魔王ののんびり流されライフ

おげんや豆腐

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七章 欠片

実践経験は特にないけど

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戦いの基本は、相手を侮らない事。



いつも採取や採掘、お取り寄せや自分のこの種族を生かして思い思いにゲームを進めていてもどうしてもいくつかは戦わなければいけない場面がある、そんなとき、ネットの知り合いから叩き込まれたその教えを元に、今日は勝ちを納めよう。



見通しが甘い、欲が深いもの自信を滅ぼす。

これは定石、そう、戦略やカードゲーム、ボードゲームでは当たり前。
そして更に実戦では当たり前処か当然の事。
見通しが甘く欲深いと早死にする………今の僕だ。
 


アイデンさんが騎士達をワンパンしながらこちらを見て何か言ってるけど……聞こえない。
なんとなく浮かび上がったはいいものの、どうしようか、と眼下で僕の事を親の仇の如く睨んでいる女性に集中。
その女性が持っている大きな杖は紅く輝いている、きっとあそこから火の玉を出しているんだろう。

「死ね!! 」
悠長に眺めていれば杖の先をこっちに向け、大きな火の塊が放出された。

「おっと」
向かってくる速度はとても早く避けられない……ならば。
ゆっくりと右手を前に出し、人差し指を出す。

「…………影よ」
静かにそう言えば、指の先からポッと黒い小さな塊が現れ、すぐにメロン大の大きさになる。

そしてその黒い塊を盾のように前に動かし、炎の塊にぶつかるようにする。

「な……!? 」
女性が目を見開く中、影の塊にぶつかった火は、その影に吸い込まれるようにして消えた。


「ふ、ざけんじゃないわよ!! 」
冷静に対処していると、少し離れたここからでも分かるほど頭の筋を浮かせた女性は杖ではなく手をこちらに勢いよく向けると言った。

「ファイアーストーム!! 」
女性の手が一瞬強く光ると、先程とは比較にならない大きな火柱が僕のいる空中に向けて放出された。

「影「させないわ! 」」
もう一度影の塊を出そうとするが、すぐ隣から熱波を感じ、反射的に飛び退く、するとその場所を炎の玉が通過し、近くの屋根に直撃する。

「危ないなぁ……」
「避けるんじゃないわよ!! 」
飛んできた火柱を危なげもなく避け、目を細める……。
これは早めに片をつけないとなぁ。

「避けなきゃ熱いでしょ」
「魔族なんだからあれくらいどうってことないでしょ?! あれ以上の業火で灰にしてやるから覚悟なさい!! 」
真っ赤な髪を振り乱し親の仇みたいに睨み付けてくる女性に流石に僕は渋い顔をした。

「なんで初対面の貴女にそこまで言われなきゃいけないんですかねぇ」
「おまえが!! 魔族だからだよ!! 」
再び放たれる火の玉、ここまで理不尽な悪意をぶつけられるなんて何時ぶりだ……。

そして、そんな、差別的な理不尽にぼけっとするほど僕は呑気でもない。


血走った目の女性の後ろ、炎の塊で出来た大きな影。



「ドッペル、ゲンガー」
静かに唱え、指を鳴らせば彼女の後ろに真っ黒な人影が出来上がる。

そっと、熱気を間近に感じながらも目を閉じる。
「シャドーチェンジ」
その言葉を言った瞬間、足が地面につく感覚に目を開いた時には赤毛を振り乱している女性の背中と空の上で火の塊が空間を震わせて爆風を起こす様子が見てとれた。。


「やった!? 」
「やってない」
「え!? 」
勢いよく振り返った女性の顔は驚きに染まっている。
あわせて僕は手をその人の顔にかざし、水色の光を出す。

「裂け、【アイスブレード】」
黒板を爪で引っ掻くような音と同時に手のひらか、細長い氷の塊が女性目掛け飛び出す。
 
「ちっ! 」
氷は当たることなく軽い動作でかわされ長い杖をこちらになぎ払ってきた。
その様子を視界に捉え、空高く飛び上がり回避する。

「一つだけじゃ足りないか」

女の人が赤く輝く杖の先を向けるのを眺めながら僕は更にもう一度指を鳴らし、少し間を置いてもう一度指を鳴らす。

「裂き尽くせ【アイスブレード・パニック】」
ぴきぴきぴきと空気が悲鳴をあげる音に会わせ僕と女性の周囲に出現する氷の刃、それが何本、何十本と浮いていた。

「な、何よこれ………!? 」
火を用意する手を止め、驚く女性……駄目だね………。

「戦場において極度の恐怖と焦りは命取りとなる……もう少し冷静に戦いなさい肝に命じて貰える? 」
「うるさいうるさいうるさい!! 魔族の分際で!! 」
キッ、とこちらを睨む女性の手から出された大きな火の塊が迫り、僕はす、と目を閉じる。
そのまま目を開ければ爆風が髪の毛を揺らし息を荒くする女の人の背中。

そっと、左手にナイフ持ち、気配を殺し、女性の側による。

「?! ぁ………」
消しきれなかった気配に気づいた女性が振り替えるよりも早く、彼女のナイフを首元にあて、軽く引いた。と。

蚊の鳴くような声を発し、女性はその場に崩れ落ちる、手に持っていた杖は離れ、屋根を転がり、路地に落ちていった。

女性の首筋にはうっすらとついた小さな切り傷と少量の血、殺してはいない、少し効き目の強い麻痺毒を塗ったナイフで無力化したまで。


「こんなものかな……」
女の人に向けて神経を尖らせてか起き上がる様子は無く目を瞑って規則正しい息づかいをして眠っている。

その事を確認した僕はゆっくりと息を吐き、肩を落とす。

「いい動きするじゃないか」
穏やかな声でこつこつと近づいてくる足音に顔をあげれば笑顔で手を広げているアイデンさん。

「ふお、」
歩いてきたアイデンさんは自然な流れで僕を抱きしめると僕の頭を撫ではじめる。
おい、今は…………まあいいや。

「下の人達は? 」
「下を見てみるがいい」
「ん? 」
得意気なアイデンさんの腕から離れて屋根の上から下を見下ろせばあんなにいっぱいいた鎧の人達皆地面とキスしている………。。

「おお………」
「マスタ~!  ご無事ですか~! 」
あ、アリムさん手~ふってる~はーい無事だよー。

あぁ、でも。

かちりと僕の中でスイッチが切り替わる音がして体から力が抜ける。

「はぁ……駄目だこりゃ」
足の力が入らない………疲れちゃった………。

「どうした!? 」
「んー? なんでも~? 」
僕を危なげなく抱き抱えたアイデンさんがびっくりしてるようだけど気にする暇はない………。

んー、んー………なんだろこのアンデッド倒した時とは全然違ったこの……なんだ何かが抜けたような感覚………。

「ちょっと…………ほっといてもらえる? 」
「いや………だが……ん?」 
オロオロとした声が途切れた事に不思議に思った僕はアイデンさんを見れば目を丸くして城の方を見ている。

つられて僕も城の方をみれば。

黒い何かがここ目掛けて飛んできていた…………。


「なにあれ」
「あれはアルギ「ラァグゥーン!! 」」
あぁうん分かったわ……。







疲れた……。



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