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六章 変化

やっぱり変態だこの人

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わしゃわしゃとアルさんの固い髪の毛洗う。


広い、固い、と効率の悪い背中を洗う、背中や首筋にいくつもあるうっすらとした古傷、興味本位に撫でてみたら案外つるつるしてました。


人が一生懸命洗っている姿をにやにやと見ていたアルさんには背中に張り手を食らわして現在湯船の中。


アルさんの膝の上にのっかり向かい合っております。

一緒にお風呂、実はこれ初めてではなくいつもは仕事で遅めに帰ってくるアルさんを待たず一人で入るが、こうして早く帰ってきたときには強制的に共風呂を開始する。


初めの頃は盛大に抵抗したけど結局力業でここに収まってるのが定着しちゃった……そんな状況に慣れてる自分がいるけど、まぁ嫌じゃないしいいや。


こっそり僕の目の前には僕のぶにぶにお腹に手をまわしながらお酒を瓶に口つけてラッパ飲みしているおっさん


「なんで風呂で酒飲んでるのアルさん」

酔って潰れて溺れるよ。


「ん? んなもん俺の勝手だろ」

「まあ、そうだけど………酔わないよう気をつけてね」

僕は浮いてるバラを一つ手に取って眺める。


「たかだか酒の一本や二本で酔わねえよ なんならラグも飲むか?ほれ」

いやほれってお酒渡すけどあんたね…………。 


「コップないじゃん」

「そのまんまぐいっとだろ、ほれ飲めっ、そして潰れろ」

「あけすけ……全く」

アルさんにせっつかれるまま瓶を渡されるけど、これなんのお酒?

……恐る恐る瓶の口をくわえてそのままくいっと上にかたむけた。



ふむ………む。


爽やかさな甘さの後に喉を通る熱いものが通るきつい感覚は………多分アルコールだねーー当たり前か。

ん?、まって僕まだ未成年、あと四、五年は子供………。


「うまいだろ? 」

え~? うまいかうまくないかって言われたら……。


「美味しいけどちょっとアルコールきついかな~~、所でこれなに?」 

ちょっと喉に残るよこれ。


「テキーラだぞ? 」

…………度数四十パーセント?


そして僕が見てる目の前でごくごくと飲んでいくアルさんに僕はお風呂に入ってるにも関わらず肝が冷える。


え? 今の感覚だとあれなんにも割られてないロックどころかストレートだよね?


「………大丈夫?」

「ん? なにがだ?」

なにがだって……うーん。


と僕が悩んでいると突然、瓶を持ってないほうの手が僕の首筋に回り込み引き寄せられる、頬が胸板にぺたっとして体温が直に感じ、心臓の鼓動が耳に届いた………。


突然どうしたよこの人………。


ほとんど動けない僕の頭を撫でながらアルさんはニヤリと笑う。

「それにしても、これ飲んでけろっとしてるって事はラグは案外強いのかもな? もっと飲むか?」

「遠慮しとく」

風呂場でそんなお酒飲んで溺れたくないしね。


にしても、アルさんの撫で方最近上手くなってる気がする………。

なんか安心する、気がする………。


「なんだよつれねえなあ」

機嫌良さそうな声でいわれても説得力ないよ……。


「んで、僕もう離れてもいい? 」

ギュっと抱き締められて、厚い胸板にほっぺたが当たるこの体制案外きついんだよ。


「ダメだ」

機嫌よく言ったアルさんは瓶を湯船の縁におくとそのまま両腕で僕を胸に閉じ込める。


「熱い……」

お湯×体温高いアルさんのセットはきついよ、サウナかなこれ。


「ククッ、我慢しろ我慢」

耳元に口を寄せて言ったアルさんはぎゅっと僕を抱き締める。

苦しくないんだけど…………なにこのシチュエーション。


目を白黒させている僕を他所にアルさんはそのままの体制で言葉を続ける。

「なぁラグ」

「なにさ」

「ラグは俺の事好きか?」

「…………好きだと思うよ」

嫌いだったら全力で逃げてるだろうね。


「そうか」

短い返事と共ににんまりと満足げに笑ったアルさんは顔を離すと僕の背中に手を回す。


「ん?」

「んじゃあこうされても嫌か? 」

その言葉と共にアルさんの顔が近づいてくる。

額にに柔らかい感触と共に感じるリップ音………、そして頭から順に目元、鼻、そして首もとに顔をうずめた。


そして首から一度顔を離したアルさんはニヤリと笑った

「………どうだ」

「どうだ、ていつも強引にされてるから嫌ではないよ」

唇でロングタイムよりは嫌ではない。


渋々と僕が答えるとアルさんは頭をポリポリとかき目を逸らした。、

「いやな、半年お前といるが……なんつーか待ちの体制に入ってても一向にお前が堕ちてこないからな、ある程度……攻めてみた」

「堕ちるってなによ」

「俺に惚れてデロッデロに甘やかされる事だ」

「………無いな」

うん、あり得ない………。


「……なんだと?」

僕がぼそりと呟いた言葉を聞き取ったアルさんはぴくりとこめかみを動かしたかと思えば真顔になる。



「そもそも僕に出てくる感情そこまで豊かじゃないし、甘やかすなんて事されるのは気分によるけど正直、ちょっと逆に嫌だな~」

「………そうか?」

「僕が甘えたいときに甘やかしてくれるのは有り難いけど一人になりたいときにそんな事されたらただ普通にうざいじゃん?」

うざいのは嫌いだよ。


「ああ………俺の事は嫌いではないんだな? 」

「嫌いだったらこんな体制になってないしそれ以前に好きでもない人に抱っこされたり一緒に寝たりなんてしないよ」

嫌いな人はとことん嫌うからね僕、アルさん嫌いだったら影使ってで遠い所に逃げてる。


「そう……か? 」

だからそんななさけない顔しないでよ、らしくない。

眉にしわを寄せ、顔に不安という事がありありと書いてあるアルさんに口を尖らせる。


「そうだって言ってんでしょ、結婚とかどうのは良くわからんけどまぁ、いいかなとか思ってるし」

この人と暮らすのに違和感無いから、と鼻息荒くして言えば、真顔だったアルさんはぱっ、と破顔する。



「………ありがとな」

「ん? 」

首を傾げた瞬間、湯船を大きく溢れさせながらを乗り出したアルさんに僕は抱き締められていた。



そして耳元に感じる吐息に少しぞくぞくとしていると、今まで聞いたことのない優しい声でアルさんは言う。


「ラグが、嫌じゃないなら手加減はしねえ、頑張ってラグを幸せにするからな、………覚悟しろよ? お前がちゃんと堕ちてきたら、手加減も無しに抱き潰して」

腹に響く低い、低い声に体全体が痺れる。


う、うー?


「そこまでがんばんなくてもイイカナー?」

「いいや? 言っただろ? 攻めるって、お前との距離を考えながら遠慮なくやらせてもらうぜぇ~?」

笑顔なのに目がギラギラして怖いってどゆこと??。


「え? てこら! 」

若干不安になった撲だがそんな気持ちはすぐに吹き飛ぶ


「んー? 」

アルさんの間延びした声に意識行ってたか気がつかなかったけどふと我に返ればおしりに感じるゴツゴツとした手の感触。


「人の尻さわるな変態!! 」

「誉め言葉か~? やわらけぇ」

「やわらけぇなじゃないよじじい!! 」

慌ててアルさんの手を掴んで引き上げるが、その手が今度は撲の出てもない乳首に向かおうとするのを全力で止める。


「なんだよ~、ケチケチせずに触らせろよ~」

んなにまにました顔で言うな変態!!。


「黙れ変態! 」

いつも通りに変態親父に戻ったアルさんに僕の怒る声がお風呂場に響いた。






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