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五章 そしてまったりと

まったりと時間は過ぎる

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「ラグ~」

「んん~? 」

「キスしてもいいか~?」 

「やだ」



ごろごろとアルさんの横で寛いでいると、同じく横になっていたアルさんが真面目な顔で聞いてくる。


「やだ」

そんな顔してなに言ってるのこの人。


「なんでだ」

あ、むすってした、面白い。


「アルさんのキスに良い思いしてないから~」

ファーストセカンドサードキスで多分その他にもされていると思うけど大体無理矢理だもん。


「たっぷりねっとり愛情込めてるぜ俺は、不満か」

「たっぷり過ぎてお腹いっぱいなんだよ」

あんな十秒もするような長すぎるキスよりももっとせめてヘルシーな簡単なキスにしてほしい。


なんでキスされるの前提に考えているんだろ? …………まぁいいや。

こっちに不満の視線を向けるアルさんの寄せた皺を手を伸ばし指で伸ばして見る。


「……なにやってんだ?」

「アルさんここ寄せる事多いからなんとなく………」

「ほう………」

目を丸くするアルさんにニヤリと笑う。


「ここに肉って書いていい?」

「やめい」

アルさんの額にに~くとなぞるとアルさんに手を掴まれる。


「えーこう、黒いインクでペタッと」

「阿呆」

「失礼な」

ふんっと鼻息荒くして言うとまたアルさんは苦笑した。


「人の額に落書きしようとした奴の方が失礼だろう」


「…………てへ?」

そう、ここは笑顔で小首かしげて、そう頭ごつんと。


ん? なんでアルさん笑ってるの?


「ぶふっ、おまえなっ、順にポーズしてったら意味ねえだろ」

クスクス笑うな。


「人が初めてやることを笑わないでくれる!? 」

掴まれていないほうの手でアルさんの鼻をつまみ文句を言う。


「あ、やりやがったなぁー? ………初めてなのになんでんな女みてえなこと知ってんだ? 」

「え? 秘密~」

男が恋愛小説見てたなんて男代表なこの人には言えないね。


「なんでだっ」

「なんでも 」

「俺に隠し事、するつもりか? 」

「隠してた事を忘れてるんだから無理だね」

「はぁ~?」

元の世界でへそくり隠して、それから一ヶ月してあれどこだっけ?、と鶏もびっくりな事するからね僕。


もう一度てへっとした僕に胡散臭げな顔をするとアルさんは勢いよく起き上がった。。


「ん? どしたの? 」

きょとんと見ていると起き上がったアルさんは大真面目な顔で僕を見ると言った、


「………はらへった」

そう言ったアルさんのお腹から猛獣の鳴き声みたいな音が周囲に響いた………。


「……そういえばお昼食べて無かったね」

なんか台無しになった気がするけどまぁいいや。




ご飯作ろう…………。






※※※





何処までも続く草原と原っぱ……その中で堂々と大型コンロを置いてこれまた大きなフライパンで料理って………。


なんだかなあ~……



発泡スチロールのパックに詰められた食材を切って塩胡椒で炒めてるだけなのに隣でスタンバイしているアルさんは機嫌よく眺めている。


「まだ出来ねえのか~? 」

挙げ句催促してくるし………。


「もうちょっとだからまっててね」

「あとは、一品だけじゃ足りないから、サラ「ステーキ」……」

いやでも肉もいいけど栄養大事だから。


「レタスとか使ったサラ「ステーキ」いやサ「野菜なんていらんからステーキを焼け」………」

あの………前々から勘づいてはいたけどさ。


アルさんってさ……。


「野菜、嫌いなの………? 」

「………」

固まるアルさん、あ、笑って誤魔化した。


ジー、


あ、眼そらした、図星か………。


「…………ピーマンましましでいく「やめてくれ」


ふむ、仕方ない。


「豚肉のしょうが焼き作るから代わりにポテトサラダ食べてね」


「………ポテトサラダ? なんだそれ」

「蒸したジャガイモを潰してゆで卵とかマヨネーズを混ぜた奴」


「………なら食えるか? 」

「下にレタス敷くからそれ食べてね」

「…………善処する」

「たかだか三枚程度なんだから食べてね」

「…………」


「た べ て ね? 」

ここは脅しをプラスして………あ、そうだこれ使おう。

そう思いコンロの横に置いてある小瓶に手を伸ばす。


「お、おう分かった、分かったから胡椒をこっちに向けるなっ! 」

僕が攻撃なんてしてもこの人には通用なんてしないからね、ここは野菜炒め作るときに使った胡椒がいい。


予想通りアルさんの顔がひきつる。

よしよし、今度はすり潰した唐辛子使うのもありだね。


「はーい」

ちゃんと食べると言質とったし胡椒はバックの中にしまおう。

あ、まだ使うこれ。


……それじゃあジャガイモ蒸すか。



片手鍋と水の入った瓶、そしてごろごろと大きなジャガイモを三つ、バッグから出してまな板の上に転がす。


「んじゃあ後は……あ、卵」

マヨネーズがそこまであるわけじゃないから卵を多めにいれなくては。


鶏卵を数個出してジャガイモを茹でている鍋に放り込む。


これはズボラではない、時短だ、きりっ。



そしてこのぼこぼこしている鍋は10分放置。


で、豚肉にこれまた今まで作った事を忘れていたしょうが焼き専用のタレに浸けて、


10分位放置。




…………暇だ。





「アルさん」

「どした?」

アルさんは僕が調理している間暇だったのか、離れたところでいつの間にか用意した剣で素振りをしていた。

僕が呼ぶとその剣を文字通りその場から消してのしのしとこっちにきた。


「後のご飯作ってると野菜炒めが冷めちゃうから食べてて良いよ」

「冷めちまうなら後の作んなくてもよくねえか? 特に野菜とか」

「一品だけだと寂しいし栄養バランスを気にかけないと病気になるよ」

「おれはここ何百年も風邪ひとつひいてねえから心配ねえよ」

「どや顔で言うことじゃないしアルさんは心配なくても僕が病気になるの」 

「おぉ、なら大事だな……病気、かかるのかお前、死んでるんだよな? 」


と首を傾げるアルさんに僕も首を傾げる。


「多分いくら切り刻まれようが崖から落とされたり海のど真ん中に沈められようが死なないだろうけどね、あくまで死なないだけであって痛み……にはある程度強いけど、病気だってかかるし、かかれば苦しい、あと食べ過ぎれば太る、動かなければ太る、肉ばっか食べてごろごろしてれば、太る、要するに不死人だって太るんだよ」

「後半主旨おもっきし変わってるが………まぁいいからお前も食え、ほれあーん」

話の前半はばつの悪そうな顔をしていたアルさんだけど後半ぐだった事に苦笑するとフォークで刺した野菜を僕に向けてくる。


食べさせてくれるの? んじゃお言葉に甘えて。

あーん。


「んー……塩入れすぎたかね? 」

美味しいと言えば美味しいけどちょっと塩がきつい。


「そうかぁ?、俺はこれで十分だと思うぜ?」

「そお? 」

「おう」

にかっと笑いアルさんは多く取った野菜炒めを大口あけて頬張った。


まあ運動してる人にはいいだろうし、アルさん嬉しそうだしまぁいいかな。


さて、僕も食べよう。



ん?


「もしかして肉ばっかたべてるでしょアルさん」

同じ分量でいれたはずなのに肉が圧倒的に少ないってどういう事だい。


疑いの目で僕はアルさんを見る。


「まぁ固いこと言うな、な?」

「な?、じゃないっ、て、うん? 」

僕が怒ろうと口を開くと、森の中の草むらが不自然に揺れ始める。


すると今まで笑っていたアルさんは笑みを消し立ち上がる。


その間にもがさがさと揺れる草むらは止む気配がない。


「……なんかいるの?」

「わからん」

「えぇ~魔力とかで分かんないの」

「俺は多少強え野郎じゃねえと分からねえよ」

「つまりあそこにいるのは弱いと?」

「俺よりは弱いな」

「基準がおかしい」

「まぁそうだな………で、どうする? 消すか? 」

「弱いらしいしまだ危害加えられて無いんだからそんな物騒な事言わないでよ」

「………まぁ、そうか」


うーん、アルさんに見に行って貰おうと思ったけど違う意味で危なそうだからここは……。


「んじゃあ僕見てくるからアルさん鍋見てて 」

「馬鹿野郎、ラグが怪我でもしたら困るしここは俺が行くぞ? 」 

怪我なんてしないと思うけど…………。


「たかだか数メートルの距離でしょ、しかもあっちで揺れてるのだって多分うさぎかなんかだし…………揺れてないやん」

僕たちが声を出しすぎたのか例の草むらからの音は止んでしまっていた。


「ありゃ、にげちゃった?」

「いや、 気配は動いてないぞ」

気配ってなんぞや………。

でもとりあえず今は草むらを優先させよう、


「んじゃあ行ってくるね」

そう言って立ち上がるとアルさんは僕の前に一歩踏み出す。


「ラグが行くなら俺も行こう」






………まぁいい、行こう。






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