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三章 新たな生活

不死人

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「そりゃあ勿論…………失敗したよ」



笑顔で僕が言えば信じられないような目でナパスさんは立ち上がった。


「失敗した……? なんで? その貴族は実現できるまで研究して大勢の生け贄までも用意して…………それで、失敗した? 」

「大体物事には失敗はつきものでしょ?」

大がかりな事ほどありがちなことでしょ、と付け足して言った僕にナパスさんは一瞬呆けると青ざめた顔になる。


「いや、いやいやいや! いや!! そのくそ貴族一人失敗するのは勝手だけどさっ、他の人まで巻き込まれてるじゃん! ていうかその生け贄にされた人たちって一体何人いるのっ? 」

「丁度1000人」

「でしょ、だか…………ら…………1000人!? 」

質問に即答した僕に質問をした本人は絶叫する。


「規模っていうか、それ以前にそんなに人を殺めるなんてその人馬鹿じゃあないですか? 」

「研究者は大体頭のネジがおかしいんだと思うよ」

ミネルスさんも神妙な顔つきで言うが、僕の斜め上な答えに苦笑した。


「そういうくくりでは無いと思いますが………何故失敗したのか分かります? 」


「えっとね、確か………その儀式は、えぇ………」


ええ………。


ミネルスさんの質問に答えようとする僕だけど……だけど。


「…………いきなりどうしたの」

「忘れた」

「は? 」

「ド忘れが最近の悩みなんだよ、えぇっとなんだっけ…………」

頷く代わりにそう答えれば、ナパスさんは、は?、と呆けた顔をするとミネルスさんと顔を合わせる。


「老人かよ……」

「そんな事を言っては失礼でしょう、無理に思い出さなくてもいいですよラグーン君 辛いことでしょう」

ナパスの言葉を苦笑して注意するとミネルスはラグーンに言った、


「いや僕こいつの話に興味あるんだから思い出してもらわなくちゃ困るよ」

「正直私もありますけども、貴方この子に毒盛ったんですよ? 偉そうな口は言わせませんからね」

「だから何でそんなこいつの事気遣うの」

「別にそんなこと良いでしょうが」

「あの…………お二人さん」

「なんでしょう?「なに!? 」 」

なんで


「思い出すのに煩くて邪魔だし、思い出したから話進めても良いかね? 」

「分かりました「はあ?煩い?、邪魔?!、僕」貴方は黙りなさい」


ナパスさんが文句を言おうとするとミネルスさんが了承しながら一刀両断する。

黙らされたナパスさんがむすりと機嫌悪くするのを苦笑し僕は言った。


「…………話戻すよ、儀式っていうかエネルギーを得るための計画は大まかに言うと、人を殺したり不幸にしたりして生じるエネルギーを魂と共に輪廻の輪に行くのを、その儀式を行った屋敷に留めその貴族の体へと流すって流れ」

「……その留める方法知らないけど特に問題が無いんじゃないの? 」

「その方法僕もよく知らないけど、方法自体には計画を達成するのに全く問題なかったみたいだね」

ナパスさんの質問に僕も同意しながら腕を組む。


「じゃあなんで失敗したの」

ナパスさんがもう一度質問すると僕は言葉を選ぶように考える。


「うーん、失敗? てよりは…………邪魔が入ったって感じかな? 」


「………邪魔?」

「うん、輪廻の輪が冥界にあるって言ったよね」

「えぇ、………神殿にある古い書物に書かれてますが、冥界は実在するのですか? 」

ミネルスさんが確かと付け加えながら言うのに僕はあるよと頷いた。


「雲の存在しない青空に終わりの無い地平線、地下には業火、氷海とかがある一つの異世界だよ、そこの中心部に輪廻の輪を管理している人達が街を作っているんだ」

言ったことを想像したのかミネルスさんは口角を上げてキラキラと目を輝かせた。


「中々………興味深い場所ですね、そこには私でも行けますかね? 」

興味津々といった熱い視線はちょっとあれだけど……残念。


「死ねば行けると思うよ?冥界だし」

「そうですか………それで、邪魔とは? 」

冥界は死者が行く場所だと理解したミネルスは眉を八の字にして残念そうな顔になりながら僕に続きを促す。



「その貴族は生け贄として用意した人々の処理を終えて、エネルギーを自分に流す段階にまで持っていった、でもね、冥界の王がそれを許さなかった」


「………なんで ?」

首を傾げるナパスさんに僕はパチンと指を鳴らし、僕の後ろに氷で出来た大きな歯車を造り出す、そしてもう一度指を鳴らせば氷の歯車はゆっくりと、左に回りだした。

それをチラリと見て、僕は手の平を広げる。


「魂とエネルギーは【共に】輪廻の輪に行かなければ行けない、なのに魂だけ来たことに冥界の人たちは首を傾げた、そしてその魂の来た場所を調べれば来るはずのエネルギーは屋敷に充満していて、例の貴族が取り込もうと準備していた、そのエネルギーを雨乞いや、地固めに利用するならともかく、その貴族のように私利私欲のためにしてしまえば多かれ少なかれ自然のサイクルが狂ってしまう、それは決して起こっては行けないこと、だからそれをさせないため冥王自らこの世界に降り、その貴族を断罪した……そしてその器はただいま冥界の焼却炉にて焼かれておりますー、てね」

最後まで言い切りふうと息を吐く。

そして最後まで聞いたナパスさんは苦々しい顔になる。


「最後説明雑だなおい」

「説明が長すぎてめんどくさくなったんだよ………」

ていうか疲れたし、と口を尖らすとにナパスさんはため息をつく。


「じゃあ最後に聞くけど、それでなんで不死人である君が生まれたの? 」

「もうなんか説明適当でいいかい? 」

前置きが長すぎて本筋しゃべる体力が尽きかけている……んん、言葉って難しい


「良くないけどこっちも聞き疲れたしいいよ……」


ナパスさんの了承を得たことだし、と僕はソファーに移動する。



「貴族を断罪した王はエネルギーを回収しようとしたけれど、そのエネルギーは怨念や貴族の手によって汚されちゃっててね、輪廻の輪に送れなくなってたんだよ、それで困った王はそのエネルギーを生け贄にされた者達の中で最後に死んだ子供の死体に入れて出来上がったのが、僕さ」


にこっと笑みを作り言えばポカンとするナパスさん。


お皿の上に残っているタルトを取ろうとするが皿ごとミネルスに取られ、そのミネルスはもう片方の手を顎に当てて考えた、


「つまり…………ラグーン君は元は人間で好きで魔族になったのではないと? 」

「そうだよ」

だからタルトくれ、お腹へったぞ僕。

皿をを取ろうと手を伸ばすが、ミネルスさんにタルトを遠ざけられてしまう。

そしてミネルスさんは笑顔でナパスさんを見ると言った。


「ですってナパス、彼はあれとは違うでしょう? 」

その笑顔に対してナパスさんはふてくされた顔で。


「まぁ…………そうだね」

あれとは……。

てか、タルト寄越せ……え? 駄目?


仕方ない…★


タルトを取れなかった僕は諦めてポットに入った茶をカップに入れながら思い出したように。


「ついでにその死と再生の儀式と魔王になるための条件を満たしてたみたいでそれで魔王になったわけね」


「「その説明詳しくおしえて「頂戴!!」ください!! 」

おっと、爆弾発言だったか……。


テーブル越しに詰め寄る二人の様子に僕は冷や汗をかいた。


「……ぃ! ………!!」

え、なんか廊下から地響きと悲鳴みたいなものが聞こえ……………。


そして僕が部屋の入り口をおしゃれなティーカップ片手に見守る中、重厚で高そうな扉が文字通り吹き飛んだ。


「おいこらナパステメエ!! 俺のラグに毒盛ったとはどういう了見だゴルァア!!! 」


部屋の入り口から現れたのは鬼の形相のアルさん、部屋に入っきて早々ナパスさんに向かって怒号を当てた、



それをぽかんと呆けていて僕は無理矢理現実に戻る。


え、ええと、木っ端微塵になった扉…、ここまで走ってきたのか怒りの形相で息を乱してるアルさん。


うん……



…………はぁいアルさん元気? そんなことより貴方今高そうな扉を絶命させたのはドウイウコトカナ………?

あぁ、紅茶美味しい……。




現実から逃避を始めようかと考えを巡らせる。




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