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二章 城
★王の呟き
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様々な貴族たちの視線を一身に浴びて、パーティホールの玉座の前、あの馬鹿が連れてきた不可思議な少年ラグーンを見守っている俺、このパーティーの主催者であり国王、イウァンは内心頭をかいた。
こんな調子で大丈夫なのだろうかと…………色々な意味で。
今日会ったばかり、正直アルギスに流されている印象しか無い。
俺とアルギスの言い争いをミネルスの隣で冷めた目をして見ていたかと思えばアルギスに突撃されている。
いたって普通の何処にでもいる子供だ。
その後彼が数週間前城下で騒動になっていた神殿の地下に現れた謎のダンジョンの主だと、ダンジョンの魔族二人から言われ。
かと思えば何故かアルギスと喧嘩し始める始末。
大丈夫なのか……………本当に。
根本的にアルギスが嫁を拾ってきただけでも驚いたが、別室でミネルスに事の顛末を尋ねてみれば。
曰く、先日の戦争の舞台の平原の近くに存在する樹海とも言える森にラグーンは住んでいたそうだ。
あそこは国の隊長クラスの実力をもっていても苦戦する魔獣達が犇めき、その中の主と呼ばれるクリムゾンタイガーはかなり手強いと聞く。
そこで住めているのは魔族だということで落ち着くが……そのついでとばかりに聞かされたのは魔王だのダンジョンマスターだのと恐ろしい肩書。
そしてその本人は…………。
「さぁ頑張るんだラグーン………! 僕ならできるさラグーン…………! 」
手のひらに謎の文字を書いて小声で暗示をかけている………。
見た目も、中身も恐らく王者の風格は欠片程も見られない………。
近くにはラグーンの背中を撫でながらみっともなく鼻を伸ばしているアルギス。
離れたところにはまるで子を見る親のような顔で心配そうに見ているクロユリ殿とアリム殿………。
ついでにその隣でクスクスと笑っているミネルス……。
こう何度も言うのはあれだが…………………。
大丈夫なのか……………?
これからの事に想像を巡らせ思わずため息が漏れる………。
こちらから大勢の人の前で挨拶という無茶ぶりをしておいてなんだが、十代そこそこの見た目のラグーンにできるのかどうか…………。
「難しいならミネルスに代行してもらうぞ? 」
あぁもう手がプルプルと震えてしまっているじゃないか…………。
「いや………大丈夫です」
子鹿のようになっているラグーンに助け船を出してはみたが根はしっかりしているようだ。
だが、それでも。
「無理はしなくても大丈夫だからな?」
人と話し、目立つことに馴れた俺達とは違い森の中で静かに暮らしていたと聞くラグーンには今のこの状態は苦行でしかないだろう。なにより何度も言うが内面は分からんが見ためが子供だ。
「そうだぞラグ、それに挨拶したら絶対ラグを好く奴が現れるから俺としてはラグを紹介するのは反対だな」
「アルギスの言ってる事はムシしろ」
アルギスがムッとした顔でラグーンの頭を撫でているがおい待てアルギス、お前いつまでラグーンにべたべたくっついている、いい加減離れんか。
それにお前の不安は夢物語だ。
「仮に好いた者がいても破壊王相手に出てこれる奴なんてこの国にいない」
一度怒らせたら標的を躊躇なく潰す程の奴からラグーンを奪おうなんてこと大抵の奴はしない。
「いや、それ以前に僕を好きになる人なんていないでしょ…………」
おずおずとラグーンが口を挟むが。
低めの身長は庇護をそそるし、それにアルギスがこんな場でも不機嫌なオーラをほとんど出さずにくっついている程の入れ込みよう。
それ以前にこの馬鹿が無理矢理、言ってみれば誘拐されてなお取り乱すことなく、ある種冷静な態度。
相当人としての器がでかく無ければできないことだ。
「それは無い「それはねえ」と思うぞ、それと挨拶だが二、三言程で十分だ…………できるか? 」
先程まで緊張で真っ赤になっていたラグーンだが、目を閉じゆっくりと深呼吸をすると突然、彼の纏う空気が変わった。
ゆっくりと目を開けたラグーンの目は酷く冷たい……。
そしてニコリと造り物めいた笑みを浮かべた。
「できないわけないでしょう」
静寂に包まれた会場、その中央で目立つようスポットライトを浴びたラグーンは人形めいた笑顔で口を開く。
「今宵のパーティーを楽しんでいるところ申し訳ありません。お初にお目にかかります、ラグーン・パイライトです。始めに僕は先日、この城の近くの神殿地下に現れたダンジョンのマスターです」
会場に響くはっきりとした声でその事を伝えると先程まで静かだった会場がざわめく。
予想していた通りだ…………。
この大陸に現れるダンジョンは大きく分けて三種類、
地下型、洞窟型、塔型が基本、希に一つの島全てがダンジョンだったりするがそういったダンジョンは宝の巣窟、もしくは殺戮の場等と呼ばれている。
今回神殿に現れた地下型ダンジョンはその中でも比較的危険な部類に入り、それが街中の神聖な神殿の地下に現れたと聞いて今はほとんど無いが当初人々は震え上がった。
そのダンジョンのマスターともなればどんな恐ろしい容姿をしているのかと貴族や市民の間では噂されていた。
だが実際は襟のついた白いシャツや茶色いズボンと少し豪華な服装こそしているが容姿はただの平凡な子供、信じられない者も中にはいるだろう。
ラグーンがその後も説明しているようだが。
話が一区切りついた所で、次は俺の出番だな。
こんな調子で大丈夫なのだろうかと…………色々な意味で。
今日会ったばかり、正直アルギスに流されている印象しか無い。
俺とアルギスの言い争いをミネルスの隣で冷めた目をして見ていたかと思えばアルギスに突撃されている。
いたって普通の何処にでもいる子供だ。
その後彼が数週間前城下で騒動になっていた神殿の地下に現れた謎のダンジョンの主だと、ダンジョンの魔族二人から言われ。
かと思えば何故かアルギスと喧嘩し始める始末。
大丈夫なのか……………本当に。
根本的にアルギスが嫁を拾ってきただけでも驚いたが、別室でミネルスに事の顛末を尋ねてみれば。
曰く、先日の戦争の舞台の平原の近くに存在する樹海とも言える森にラグーンは住んでいたそうだ。
あそこは国の隊長クラスの実力をもっていても苦戦する魔獣達が犇めき、その中の主と呼ばれるクリムゾンタイガーはかなり手強いと聞く。
そこで住めているのは魔族だということで落ち着くが……そのついでとばかりに聞かされたのは魔王だのダンジョンマスターだのと恐ろしい肩書。
そしてその本人は…………。
「さぁ頑張るんだラグーン………! 僕ならできるさラグーン…………! 」
手のひらに謎の文字を書いて小声で暗示をかけている………。
見た目も、中身も恐らく王者の風格は欠片程も見られない………。
近くにはラグーンの背中を撫でながらみっともなく鼻を伸ばしているアルギス。
離れたところにはまるで子を見る親のような顔で心配そうに見ているクロユリ殿とアリム殿………。
ついでにその隣でクスクスと笑っているミネルス……。
こう何度も言うのはあれだが…………………。
大丈夫なのか……………?
これからの事に想像を巡らせ思わずため息が漏れる………。
こちらから大勢の人の前で挨拶という無茶ぶりをしておいてなんだが、十代そこそこの見た目のラグーンにできるのかどうか…………。
「難しいならミネルスに代行してもらうぞ? 」
あぁもう手がプルプルと震えてしまっているじゃないか…………。
「いや………大丈夫です」
子鹿のようになっているラグーンに助け船を出してはみたが根はしっかりしているようだ。
だが、それでも。
「無理はしなくても大丈夫だからな?」
人と話し、目立つことに馴れた俺達とは違い森の中で静かに暮らしていたと聞くラグーンには今のこの状態は苦行でしかないだろう。なにより何度も言うが内面は分からんが見ためが子供だ。
「そうだぞラグ、それに挨拶したら絶対ラグを好く奴が現れるから俺としてはラグを紹介するのは反対だな」
「アルギスの言ってる事はムシしろ」
アルギスがムッとした顔でラグーンの頭を撫でているがおい待てアルギス、お前いつまでラグーンにべたべたくっついている、いい加減離れんか。
それにお前の不安は夢物語だ。
「仮に好いた者がいても破壊王相手に出てこれる奴なんてこの国にいない」
一度怒らせたら標的を躊躇なく潰す程の奴からラグーンを奪おうなんてこと大抵の奴はしない。
「いや、それ以前に僕を好きになる人なんていないでしょ…………」
おずおずとラグーンが口を挟むが。
低めの身長は庇護をそそるし、それにアルギスがこんな場でも不機嫌なオーラをほとんど出さずにくっついている程の入れ込みよう。
それ以前にこの馬鹿が無理矢理、言ってみれば誘拐されてなお取り乱すことなく、ある種冷静な態度。
相当人としての器がでかく無ければできないことだ。
「それは無い「それはねえ」と思うぞ、それと挨拶だが二、三言程で十分だ…………できるか? 」
先程まで緊張で真っ赤になっていたラグーンだが、目を閉じゆっくりと深呼吸をすると突然、彼の纏う空気が変わった。
ゆっくりと目を開けたラグーンの目は酷く冷たい……。
そしてニコリと造り物めいた笑みを浮かべた。
「できないわけないでしょう」
静寂に包まれた会場、その中央で目立つようスポットライトを浴びたラグーンは人形めいた笑顔で口を開く。
「今宵のパーティーを楽しんでいるところ申し訳ありません。お初にお目にかかります、ラグーン・パイライトです。始めに僕は先日、この城の近くの神殿地下に現れたダンジョンのマスターです」
会場に響くはっきりとした声でその事を伝えると先程まで静かだった会場がざわめく。
予想していた通りだ…………。
この大陸に現れるダンジョンは大きく分けて三種類、
地下型、洞窟型、塔型が基本、希に一つの島全てがダンジョンだったりするがそういったダンジョンは宝の巣窟、もしくは殺戮の場等と呼ばれている。
今回神殿に現れた地下型ダンジョンはその中でも比較的危険な部類に入り、それが街中の神聖な神殿の地下に現れたと聞いて今はほとんど無いが当初人々は震え上がった。
そのダンジョンのマスターともなればどんな恐ろしい容姿をしているのかと貴族や市民の間では噂されていた。
だが実際は襟のついた白いシャツや茶色いズボンと少し豪華な服装こそしているが容姿はただの平凡な子供、信じられない者も中にはいるだろう。
ラグーンがその後も説明しているようだが。
話が一区切りついた所で、次は俺の出番だな。
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