上 下
30 / 182
二章 城

そういえば

しおりを挟む
迷宮、ダンジョン………。


そのダンジョンを運営するためにはまず、ダンジョンの状態を維持するための整備費、金がいる。

そしてお金を稼ぐためにはそれなりに良いアイテムを置いてお客様を呼ばなければいけない、つまり多少お高いものを買う、つまり金。


そして金を稼ぐためにはどうするか、自分の貯金から出すか、そのダンジョンに来てくれたお客様をもてなしてお命頂戴してダンジョンポイント、通称DPを集め、金やダンジョン用のアイテムに変える。



ここからが本題だ。


そのダンジョンを運営するための金、お客様から頂くDPを稼ぐためにはなるべく強いモンスターやボスを配置しなければいけない。

すべては金、金からダンジョンを生み出し、ダンジョンに入る人たちからお金を作るために強くて、値段が高いモンスターを作り、稼いだお金でダンジョンを強化する。


全てはサイクル。



よりたくさんのお金を稼ぐために、僕は冥界から鉱石を貰い、その鉱石を甲冑の形にして魔石を埋め込んだ。

そして冥界の鉱石を集めるついでに集まった亡霊4人を一つにまとめて、一体のモンスターを作った。


黒く、冥界の金属で作られたモンスターを漆黒の騎士。

四体の亡霊を一つにまとめたモンスターを花魁と名付けた。









「「見つけましたよ(わ)マスター!!」


片や全身を黒甲冑に包み、所々赤黒くなった人らしき者。

もう一人は黒い着物に華の刺繍の施された綺麗な女性。



勢いよく開いた部屋の扉、そこには甲冑と美女、なにやら切羽詰まったような彼らはアルさんに抱き上げられている僕の目の前まで走ってきたと思うと、その場で地面が揺れる勢いで膝をつく。


「え」
「眠りにつかれて500年! このアリム!! マスターの帰還、首を長くしてお待ちしておりました!!」
「久方ぶりにマスターのお姿を拝見できてわたくしっ、嬉しゅうございます!」
黒い甲冑姿のこの人は感激したような声でこちらを恭しく見上げている。

こっちの着物の美女さんも同じように僕を見ている。

顔がなにやら上気してとろんとした目、こ、これが色気か…!?

お、思わず僕もほっぺが熱く……。

「ラグーン…… てめえ何他の女に見惚れてやがんだぁ…………?」 
お、おっといけない、僕今アルさんに抱き上げられてるんだったって。

ア、アルさん? なんでそんな眉をグランドキャニオンみたいにして怖い顔してんの?


「……………え? 」
「え じゃねえんだよおいい、浮気なんてしたら許さねえからな……!? 」
唸るアルさん怖い、物凄く怖いです。


「浮気ってどんなの…………?」
「あぁ? 他の奴に色目使うことだ」
………つまり俺だけをみろと? 束縛強いねぇ…………。

ん? でもその原理で行くと。

「僕他の夫とやらとか作れないんじゃないの? 」
ハーレムがどうとか。


「それは、まぁ、そうだが、……… 駄目だ、俺だけみてろ」
「なんだそりゃ……まだ僕アルさんの事好きになってはないよ?」    
じとりと見ながら僕が言えばアルさんはニヤリと笑う。

「そこは問題ない、今から俺の事を好きになればいい」
「「「は? 」」」
なんという俺様。

……今声重ならなかった?  

「失礼ながらマスター、先程から気になっていたのですが……その方はどなたですか? 」
甲冑の人がアルさんを見ながら尋ねてくる。


「いやそれ以前に………あの、すいません……貴方達はいったいどなたでしょうか……? 」
「「な…!? 」」
二人とも固まっちゃった……。

「わ、我らの事をお忘れですか?! 本当に!? 」
「うん」 
えっと……まって、もう少し、もう少しで思い出す気がする……ええっと……。


「そ、そんな!! 」
鎧の人は僕を凝視、着物の人は口を両手で塞いでこの世の終わりみたいに顔を青くさせてる……………。

うわぁ………とりあえず、思い出せ僕!!
僕が必死でゲームの知識を探していると、甲冑の人は首を横に振り、その場で立ち上がった。

「きっと……マスターは目覚められてそこまで時間が経っていないのでしょう…………ええ、恐らく頭が働いておらず私たちにまでまだ気が回らないのですね……では、ではでは、私たちの自己紹介を致しましょう、……それでいいなクロユリ 」
仕方ないって雰囲気すごいけど………こっちに来て既に一ヶ月近く経ってるなんて絶対言えないよねこれ。


着物の人も甲冑の人を睨みながらため息をついた。


「貴方に指図されるのは気にくわないですが……仕方ないわね……………」
「なんか……すいません」
「いいえ構いません、ではマスター、まずはこのわたくしから…………わたくしの名はクロユリ、マスターの偉大なるお力により作られた死霊族の魔族でございます、 好きな事はマスターを観察すること! 好きなタイプの男性はマスターのような小さくて愛らしい方! スリーサイズは「黙れ」………ぁあ? 」
「そこまでにしろクロユリ、穢れた言葉をマスターに聞かせるな馬鹿者」

美女、改めクロユリさんが嬉々とした顔でこちらとしても嬉しい事を言おうとしたとこで甲冑の人に止められる。


「わたくしのスリーサイズの何処が余分なのよ!!」
そうだそうだ、できれば僕も聞きた………やめてアルさん!! そんな殺意たっぷりの視線で僕を見ないで!! ほっぺつねらないでいててて!!

「お前のくだらない情報なんてだれも欲しがらない」
僕ちょっと欲し……アルさん今度は無言で耳引っ張らないで痛い痛い痛い!

「んっまあ!! 世界中の女を敵にしたわよ鎧男! 」
「ではマスター、続いてはこの私の紹介をさせて頂きますね」
鎧の人が恭しくかしゃりと鎧が擦れる音を出して僕にお辞儀をする、あの……隣。

「無視するんじゃないわよ! 」
クロユリさんが先程までの上品さは何処かに消えたとしか思えないような鬼みたいな顔で鎧の人に文句を言う。

「耳元で一々かん高い声を出すなうるさい。ではマスター、私の名前はアリム、クロユリと同じくマスターのお力によって作られた存在です。私は貴方のナイト、如何なる者からもマスターをお守りしましょう」

甲冑の人の名前はアリムさん。

隣で怖い顔しているクロユリさんをあしらいながら自己紹介を終えた。
見た目ナイトって言うのにマッチしてるから頼もしい。


で、さっきからマスターとか黒い甲冑とかってでてるって言うことは、うん、思い出した。




この二人って僕のダンジョンの中ボスかな………?

 基本あんまり顔とか見ずに強さとか書かれたステータスしか見てなかったからパッと見じゃわからない……。

今は……とりあえず優しい人たちって事かな……? 

「では手始めに今私の隣で騒いでいるマスターの目に毒になるものを切り捨ててもよろしいでしょうか」
訂正、この人発想が怖い…………そんな恐ろしい事を淡々とした声で言わないでおくれ……………。

「い、いや、物騒な事はしない方がいいよ………」
今にも腰につけた剣を抜こうと手をかけているアリムさんを止めればアリムさんは仕方ないなと静かに呟くと剣から手を離した。

「畏まりました、では今回は保留とさせて頂きます」 

保留なの?


「では改めてマスター」 
居ずまいを正したアリムさんは僕の方に向きなおった。


「なんでしょう? 」
「先程も申しましたが今マスターを抱き上げられている方はどなたでしょうか?」

え、アルさん?どなたってこの国の大将軍? いやでもそれだけならなんで僕を抱き上げてるのか聞かれそうだし……………。

えっと。


…………………えっと。



……………………………えっと?


これなんて言えばいいんだ

しかもなんでアルさんそんな満面の笑みしてるのカナ……?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

アダルトショップでオナホになった俺

ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。 覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。 バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。 ※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

処理中です...