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ぐすたふ怖い

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「……ぐすたふ?」
「黙ってろ」
「へい」
鋭い声に足を止め、ぐすたふの顔を伺えば怖い顔でよく見えない森の先を睨んでいる。
こうも固い声で言われたら大人しくするしかないよね、仕方ない。


「……やけにでけえ奴がいる、魔獣は粗方消滅した筈だが……こんなところに生き残りがいた……だが」
唸るぐすたふの見ている先を見て首を傾げる。

「…何も見えないけど」
「気配と足音で大体分かる」
「へー」
耳のいいエルフでもないのにぐすたふは凄い。

「そら、耳を澄ましてみろ、そろそろお前でも聞こえる距離にいる」
「? うん」
言われた通り目を閉じて、深呼吸。

僕も一応身体能力万能長寿な魔族の端くれ……ほんとに端くれだけど。
人間以上には聴覚視力は持っている、だから少し集中すれば……。


草の揺れる音……落ち着いた息遣い……木の葉……、もう少し遠く、耳鳴りがするくらい集中して、よし。

「……」
木の枝が揺れ……重たい足音……。

足音? のしのしと地面を揺らすようなこれは……。

「わかったか?」
「うん……わかった、ぐすたふ近い」
「おう、わりい」
確信をもって目を開けたらぐすたふの顔はちょっと……。

さて、くだらない思考はここまでにして、この感じだと多分大丈夫。

「もしもの時はあぶねえから離れてろよ」
「ねえぐすたふ、その事だけど」
「話はあとだ」
その話をしたいのに、ぐすたふはでかい剣を上げ前に出る。

地面を強く踏みしめる足音がすぐ近くに、まっすぐにこちらに向かってきている。

大きくなる音の先を目を凝らせ黒い塊が一つ、巨大な物が体を揺らし乱暴に草を搔き分けゆっくりとこちらに来ると、数メートル先で立ち止まった。

「グゥ…グガァ!」
「……でけえ」
しっかりと目視できる距離まで塊が来たとき、ぐすたふがそれを見て一言。

低く嘶きその場でのそりと立ち上がると三メートルを軽く超す二足歩行になったそれは鼻をひくつかせ辺り見回すと、ぐすたふの背中に隠れる僕をみた。

「……おい?」
ぐすたふを一切見ず丸い真っ黒な目はじっと僕を捉え、僕も相手を見てしばらく固まっていると立ち上がっていたそれは元の四足に戻り僕を見たまま座りこんだ。


「グルぅ」
「……どういうことだ?」
傍から見れば異様なこの状態、警戒していたぐすたふはなにもしてこない事に首を傾げると剣を少し下ろす。

「グウ……?」
威嚇でも警戒でもない低く喉をならす声は……僕に向けて呼んでる声だね。


「……おいニール」
「ちょっとまっててね」
ぐすたふの背中から前にでて、大きな黒いもの、改めて大きな親熊の前に立つ。

ここでつぶらな瞳に向けてにっこり。

「久しぶり~」
「ぐるぅ~」
もふもふとの再会……、もさもさしたほっぺに手を埋めてもしゃもしゃと、僕の四倍かそれ以上大きな頭を撫でて耳をふみふみと、アニマルセラピーですわー、


「おい」
「ん?  あら」
後ろからぐすたふ……やだ凶悪な顔。
振り返れば目つき鋭く憤怒の顔のぐすたふがずんずんと目前まで歩いてきた。

「どういうことか説明をしろ」
やだ怖い。









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