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目覚めが最悪です

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小鳥のさえずり、心地良いはずのそれが今日に限っては実に耳障りだ。

傍若無人な男に抵抗する力の無い、とってもか弱い僕は攫われ知らない道をぬけ、寝静まった人間の街を抜け……。



「よう」
男の家らしき誰もいない屋敷に連れ込まれた朝一番。

ふかふかのベッドで寝ていた僕はいつもの習慣で朝日に目が覚めた。

そして僕の目に写ったのは顔色の悪い怒気を孕んだ男の顔。


……おやすみなさい。

「おいこら目を閉じるな起きてくれ、起きろ……頼む、起きろよ……」
「……なんですか」
僕の頬を軽くはたき高圧だった男の口調が悲壮じみた声に段々と変わっていく。

低い声が震えてきた所で聞くに堪えかね仕方なく目を開ければほっとした顔の男がすぐに表情を引き締めた。


「なあ小僧……眠れないんだ」
「……?」
苦しそうに言った男は僕の脇に手を差し込み起き上がらせると泣きそうな顔で僕の頬に手を伸ばす。

「だから……眠れないんだ」
そういった男の顔は確かに男と会った当初と同じ青白く、充血した目が端正な顔を台無しにしている。


「なあ坊主、昨日はどうやって俺を眠らせた? 教えてくれ……頼む、頼む……頼む」
「どうやって……と言われましても……」
「お願いだ…なんでもしてやる……頼む」
「そんな泣かなくても……」
「うるせえ……」
目と鼻の先まで来た男に必死に迫られ言葉に詰まれば男の目から一滴涙が伝った。


「……寝たいんですね?」
寝起きの頭で難しい事はよくわからないがとにかくこの男は今すぐ寝たいらしい。

昨日はあんなに爆睡していたのに何故寝れないのかは……今はいいや。



「あぁ、頼む」
暗かった顔をぱっと明るくした男に内心溜息をつき言った。


「とりあえず、そこに横になってください」
そういえば……この人の名前知らないな……。




***



頭から勢いよく布団に沈みこんだ男に自分の使っていた布団を体にかけ、期待に満ちた男の頭に手を置く。

「目を閉じて……何も考えないで、深呼吸……そう」
さあ…ゆっくりお眠り。

きつく閉じた瞼に触れ優しくなぞり固い髪の毛を撫でれば深く寄せられた男の目元が優しく、すぐに緩んでいく。

退屈になる前に、男から寝息が耳に届きはじめた。

「……これだ、これを、待ってたん……だ」
何かを口走った男の胸を優しくたたき数秒、規則的な息遣いに確実に寝たことを確認した僕はゆっくりと手を離し溜息をつく。


「……なんであんなに必死になっているんだろうね」
涙まで流して慌てていた割にいざ本腰入れてみればあっさり寝る……謎だ。

怖がられるとか言ってたしもしやいかつい見た目た横暴だけど案外寂しがりやなのかね……。



ああところで……お腹空いた。





夢魔のご飯と言えば眠気、眠気は眠った人からでる、そして目の前にはちょうど眠りについた人間がいる。

「……ちょっとだけ」
相も変わらず、男からは他では見たことのない濃い眠気が放出されている。

一昨日までの僕が見れば喜んでかぶりついていたこの眠気だがこれがあり得ない味だと知っているために空腹とはいえ気が引ける。

だけど、昨日から何も食べていないために限界が近い……。

…………昨日数時間身動き取れない位気持ち悪くなる若干トラウマ地味た元凶の眠気の原液……香りだけは一級。

食べれば確実に胃もたれするしなんなら太るし下手したら体調を崩すけれどぁあまたお腹鳴ったなんでもいいから眠気食べ……。

すやすやと安心しきった顔で眠る男&眠気………。






数分後の自分よ、グットラック。







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