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高次元の精神世界と自己犠牲

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不思議な感覚が宿る所だな?そう、唐突にこのUFO型マンション内の真っ白い空間を眺めたり、それとは裏腹に、壁一面にビッシリ並んでいるテレビモニターや放送機器みたいなのが存在していて、私のちっぽけな現実感など、当の昔に存在していなのだろうとも、漠然と考えた。

だから、こんな状況に置かれているのに、のほほんっと昔の死んだ母親のことを思い出したりしているのだ。

それもこれも、彼らの星の歴史や生い立ちを説明された事が、どうも関係大ありだし、その観念的な内容が死者に対する思いを増幅させられたのかもしれない。

私は、先ほどまで、各国の要人達とのやりとりを終えた軽い疲れと、その不毛に終わった打診感を頭の片隅に押し仕舞ながら、まるで、私の指示を今か今かと待っていて。

モニター側の、スタジオで言ったら、隅の方で待機しているADさんのように、じっと立ちながら私を見ていた。別に、近くにあるソファーにでも座って寛いでいればいいのに、とか、そんなに畏(かしこ)まらなくてもいいのに、と思い、そのことを告げて、今までと同じような状態でいてくださいよ、と、声掛けをしたが、この状態で結構ですと二人からまたまた同時に言われた。

どうも、彼らは肉体が彼らの意識で物質化されただけだから、ちなみに何時間もじっと立ち続けていても、疲れる心配はないとのことだった。まあ、そんなものなのだろうとも、説明されれば納得するのだけれども、実際、目の前で律儀にじっと立っていられると、どうも気になってしょうがないのが、正直な気持ちだった。

私は、本当はもう決めていたと思う。

決めていたとは、国際連合事務局での総合会議とやらを行う日時を、私が勝手に、独断と偏見に則(のっと)って決めてしまうと言うことだった。

それが、世界の大国、アメリカ合衆国やロシア、中国、EU諸国が集まらなくても行うと言うことだった。

まあ、何回かやってみて、その内になんかのノウハウが生まれてきて、少しは、人類の理想とやらに近付くのではないかと、ちょっとだけ期待している自分もいたし、かと思うと、そんなに上手くいくとは思わないが、と言う相変わらず斜に構えた自分もいた。

まあ、堂堂巡りな自分の考えをリフレッシュする為に、また、彼らの話を聞きたくなった。

そして、その続きを、と話そうとした瞬間、また、キャメロン系が話し出した。

どうも、後半はキャメロン系が話すようになっているようだった。





「前回お話ししました、精神世界の我々の役目とは、大きな言い方をすれば、全宇宙の生命に対する摂理と秩序作りなのかもしれません、と言って締めくくりましたが、これに我々が気付き、到達した時には、我々の身体の存在自体が役目を終える時期でもありました。

我々は完全に宇宙と一体になると言う心理に到達し、そして、例えて言うなら、今まで着ていた重い鎧を脱ぎ捨てたような、爽快感を一時的に味わったのですが、それは、反対に言いかえれば、残り半分の、その真理に到達できず、反対に益々、孤立し凝り固まった鎧の中に委縮していて、まるで亀が甲羅の中に引籠(ひきこも)るがごとく、我々とのコミュニケーションを一切、遮断して行きました。

本来であれば、精神世界に目覚めた者は、もう今までの様に、嘗て生まれていた星の上でいなくても良いのですし、もっと自分の意識レベルを上げてくれる世界、それがこの空間では無くても良いのですし、時空自体の概念も非常にあやふやになるのですから、そこに必死に留まっている生き方自体に、我々も拒否反応を起こしていたのも事実です。

また、我々の中にも、精神レベルに到達したと言う感覚から、旧タイプ、所謂、肉体に支配されている物質社会崇拝者をワンランク下に見ている者もいないとは言えませんし、そこには何回も、コミュニケーションを図り、お互いが歩み寄ろうと言う行為を、我々側だけが気が遠くなるような時間をかけ、と言っても実は我々には気が遠くなると言い時間的概念も無くなっていて、反対に、物質社会崇拝者の方が、寿命が来て、彼らがもっとも嫌っていた我々の側にこざるを得ないのですが、それでも、精神世界の下層側に落ち着いてしまい、また、現世に戻る準備をし始めるのです。

そうです、我々は知的生命体になり、そして、精神の向上を目指した時に、物質社会との決別を余儀なくされ、態々、肉体を維持した現世で生きなくても良くなるのです。

現世で生きると言う事は、自分が生きると言う事で、誰かを他の生物を犠牲にして生き永らえると言うことであり、そのことに気付く事によって、自分と言う存在意義が、なぜここに必要なのかを、具体的に知らしめるために、我々知的生命体は肉体レベルでの精神世界の学習を悟っていかなくてはいかないのです。

初めから、肉体を持たずに精神世界の真理に目覚める事はまずありません。

また、他の生物はどうなのか?彼らにも生きる意味はあるのではないか?

その通りです、我々はたまたまなのか?

初めから決まっていたのか?真実を述べるのは止めておきますが、我々が他の生物の犠牲や補助を受けて、自分とは何かを考える知的生命体まで、肉体を宿している物質の世界で覚醒したのですから、これ自体も覚醒には違いありません、そして、その次の世界に行くまでが、また多くの生命体を犠牲にしなくてはならないのです。

それが必然だと思っていたり、知的生命体の特権だと思っていたかもしれませんが、そこに、ほんの少しの気付きを持った存在が発生し、精神世界の扉を少しずつ開けていくのです。

そして、究極の鍵は自らが自己犠牲の精神を身に付けると言う事です」




キャメロン系の話は、人類を例えるのなら、まるで一人一人がキリストのように、現世の苦しみや悲しみを一身に背負い、ゴルゴダの丘で、無抵抗に死を迎えると言う事に思えてならなくて、なんかしっくりこなかった。





「自己犠牲に目覚めると言う事は、容易なことではありませんし、それはある意味、究極の孤独を意味します。

それは、本当は凄く当たり前なのかもしれないし、一人一人、それは確実に訪れると言う死、そのものなのですが、我々もそうでしたが、その死に対して、最後まで目を逸らして生きて来た事は事実です。

死=無と言う概念が我々にはありましたし、だからこそ合理主義がもたらす考え、延命技術も発展し、文明が栄えた事も事実です。

悪いばかりではありませんが、そこに、本当は答えが眠っていたのです。

自分の死を考える、そして、それとは別に世界を俯瞰で考える。

自分のいない現世を考えると言う事も、非常に大変なことですが、これもまた必要な事です。

我々は、肉体を持っている段階から精神世界の扉を開いた、今までの中でも数少ない存在かもしれません。

また、だからこそ、他にもいるであろう知的生命体の中でも、この精神世界の概念を育んでいない存在には、我々を感知する事は出来ませんし、我々も態々、そのような世界で観察したり、補助的役割をしないのです。

そして、我々でさえも、また、このことから数多くの真理を学び、次のステップへと登る為に進化の段階にいるのも事実なのです」





「あなた達のレベルでも、まだまだ、到達していない精神世界での意識レベルって言うのがあるのですか?
そして、そのことが真理であるのならば、人類の目指すべく方向もあなた達と同じ方向に向かえ、と言う事なのですか?
自己犠牲と言う真理を解き明かしながら!」

私は、思わず、そうキャメロン系に質問してしまった。
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