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国連の世界会議と母親と水晶

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私は、まるで彼らになったような気持ちで、この人類とやらのやっかいさを感じていた。

しかし、それでも多分、彼らは私ほど心は狭くないと思うから、根気良く、気長に、この人類が聞く耳を持つであろう時期まで辛抱強く待ち、その間は人類の事を勉強していたのだろう。

そして彼らの決定的な誤算は、人類の中でこの私を選んでしまったと言うことだ。

私は、この地球上の中で、人類の中で、飛びぬけた才能はなに一つとして持ってはいないし、ましてやこの日本の社会の中でさえも不必要となっている身なのだから、いくら彼らに「あなたしかいない」、みたいなことを言われたとしても、未だに信じていなかった。

それは彼らの事ではなく、多分、自分自身なのだろう。

自分自身に対して全く自信が無かったのだ。

そして、肝心な事は、私にはこの人類をどこへ導いたら良いのか、見当もつかなかった事が、私の最大の弱さでもあった。

全く人類の今後の目指すべく青写真を提示出来ないのに、何を先走ってアメリカはマンハッタン島の国連で総会とやらを開催しなくてはいけないのか?

それって、ただ単に、私はポーズを取りたかっただけであり、もしかしたら、彼ら異星人に対していい格好し~なことを考えていたに過ぎないような気がしてきた。

今、現在に不満はあるのか?そう唐突に私は自問自答してみた。

私の現在の立ち位置を正確にまずは把握しなくてはならない。

私は、仮の話だが、これから世界の要人達と話し合い、何かを決めたとして、今までの生活、所謂(いわゆる)、オーランド系やキャメロン系と接触が無かった頃の生活に戻れるのか?については完全に戻れないだろう。

次に、この会合が比較的に上手く行ったと仮定して、その運営は誰が責任を持って行うのか?

これに対しても、言い出しっぺである私が最後まで行わなくてはならないだろう。

そう考えると、途端に私はことの重大さと責任の大きさに、軽い眩暈(めまい)を感じた位だった。

大いなる力には大いなる責任が伴う。と、映画「スパイダーマン」の主人公の伯父さんが言っていたのを、こんな状況になって、ふっと思い出してしまった。

大いなる責任!ホント困った言葉だ。

私はその本当の意味を知らないで生きてきたし、今現在でも、心の片隅には、何かあったら彼ら異星人が助けてくれると、半分は考えていたし、その為の彼らだと思っていたのだが、それとは反対に、彼らは私に一切の手助けを行わないのでは、と言う、これもまた彼らならやりそうな感じも想定内に入れていかないと、と、あらゆることを考えていた。

考えれば考える程、訳が分からなくなってくるし、そのような状態で、勝手に決めていく事にどうすればよいか悩んでいた。

そんな時、今まで彼らが話していた内容を、何となくだが思い出していた。

物質社会の終焉と、精神世界、意識の向上、意識レベル、その言葉を思い描いていると、妹の沙耶が話してくれた母親の事を思い出した。

母親は二度の癌の手術を行い、体力的にも精神的にも弱まっていた。

そんな時に宮城県内の気功で診療する治療院にも行くこととなった。

行くこと、と、説明すると本人の意思が存在しないかのようだが、本来は母親が勝手に見付けて来て、勝手に通院したと言うことだ。

それは、もう、現代の化学療法でも癌の進行を抑える事が出来ない程、癌は母親の身体に転移し、最終的には肺にも達していた。

母親にとっての拠り所は、もう、精神的、宗教的な世界しかなかったのかもしれない。

妹から聞いたのは、母親は水晶を欲しがっているようだ、と言うことだった。

なんでも、水晶には霊的なパワーがあり、そのパワーで癌細胞をやっつける事が出来るのでは、と言うことだった。

私は早速、インターネットで水晶の事を色々と検索してみた。

水晶は、山梨で多く加工されており、水晶を製造販売している工芸所のようなところのホームページがあった。

だが、この水晶と言うのは結構値段が高く、それに、水晶を母親に買ってあげて、何がどう劇的に変わるのか、分からないし、それよりも父親の存在も気になった。

父親は、そのような霊的な世界を極度に嫌っていた。

男って言うのは、どう考えても現実主義者が多いのは事実だし、ましてやどんどん歳をとってきて、長い年月、社会や会社の組織形態の中で生きて来て、なんら超常現象らしき体験をしてこないのだから、気功だの、超能力だの霊感だの、精神世界だのは、目に見えず不確かな産物であり、そして、国なのか企業なのか分からないが、資金を投入してまで研究解明しようとはしない世界だから、ますますその世界は無価値な存在として観てもおかしくないだろう。

父親の気持ちも良く分かる。

そして、今現在は、その現代医療に縋(すが)るしか、私達には母親を助けるべく術はないのだから、本当は諦めるしかない、ということも頭の隅では分かっている。

でも、だからそ、と言うのか人間だからなのか、奇跡を信じたくなる。

そこには、元々、人間と言うのは不完全な動物であり、ましては医療や製薬は日進月歩で進歩しているから、今日は無くても明日、明日は開発されなくても一週間後、と、そんな淡い期待もしたくなるのも人情ってものである。

そんな、奇跡を信じたいと言う気持ちから、それが傍から見たら、怪しげなオカルトな世界だったり、何の根拠もない、しかし、たまに奇跡のような劇的な回復をみられる民間療法をせっせと受けさせるしかないのが、現状でもあった。

私でさえ、社会人になり、その間、なんの心霊的な現象だったり、超常現象を目の当たりにした覚えも無いから、半分以上は気休めだったのだろうし、それとも、自分自身に対する無知さを暴露することへの僅かな抵抗だったのかもしれない。

私は以前の会社の上司だった方に、母親の事、水晶の事を相談した。

その上司は、会社からの事もあるが、そのようなことに対して、かなりの知識を有していた。

そして、水晶ではないが、あるクリスタル製のペンダントの紹介をしてくれた。

そのクリスタルの中には細い銅が入っていて、クリスタルとその銅線が、絶妙な波動を病に冒された身体に作用して、その病に冒された細胞を本来その人間が持っている正常な状態に戻してくれると言う、そんなペンダントだった。

これも、本当に怪しい製品その物に見えるし、良く知っている人じゃない人から、薦められても、本当に眉つば物だと端から信じないのだが、時期が時期だけに、そしてなによりも、私には他に母親にしてやれることは無かったのだし、それを買ってやれるだけしか本当に能がなかった。
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