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スピリチュアルで非科学的な治療と母親の死

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私は思い出していた。

肉親の死に対してだ。

母親の死である。

なぜ、また思い出してしまうのだろう?

それはキャメロン系の言葉に、私の中で思い当たる節があったからだと思う。

圧倒的に分かり合えないモノが、存在すると言う恐怖は、初めて多国間の争いとかではなく、同じ肉親や、恋人、友人同士の中にも、実は絶対的に分かち合えない、理解し合えない世界が眠っていた事を立証させ・・・。

私は、そのキャメロン系の言葉尻に対し、眠っていた何かを突発的なのか?

それとも誘導尋問的なのか分からないが、ゆっくりと思い出しながら、検証も同時に行っていた。

母親の死は、工藤家の中でももっとも大きな影響力を残された家族に与えた。

影響力?何から説明しなくてはいけないのだろう?

まずは空気みたいなものだ!この表現に対しては疑う余地は無い。

母親が工藤家の太陽であった事は間違いが無い。

私たちは、多分、一生この形、実家には母親がいて父親がいて、その空間や空気はなんら変わらないと言う、ちょっと考えたら、そんなことはあり得ないのだけれども、そんな感じで、悠長な感じで考えていた。

それは、実は私だけだったのかもしれないし、つまり、母親は癌で亡くなるほど軟では無いとたかをくくっていた。

実際、私が実家に帰っても、癌の進行の事や転移の事は一切話さなかったし、それは四六時中いる妹や父親の感覚と、外様の様に外部となってしまった私と弟との隔たりがあったのかもしれないし、または、ただ単に私が余りにも不甲斐ない状態だったからかもしれない。

だが、離れているからこそ、久し振りに帰った時は、よく母親と話した。

不思議なもので、その話す内容は多岐に渡っていた。政治経済だったり、芸能のことだったり、経済のことだったり、親戚のことだったり、よくもまあ話題は尽きづに話したものだった。

そして、ただ言えることは、母親の話には妙な説得力があり、その話の内容はともかくとして、真実を語っていた。

今思うと、一種の言霊みたいな力なのか作用をなのか、効果を持っていたのだろう。スピリチュアルな感じで言えば、美輪明宏みたいな存在であり、江原敬之のスピリチュアルカウンセラー的な事なのだろう。

そう考えると、工藤家の教祖が突然いなくなったもののように考えたら良いのだろうか?

導いてくれるもの、その存在が無くなったと言うことが、実は一番大きかったような気がする。

母親は母方の親戚からも、慕われていた。だから、実家には親戚の伯父さんや叔母さんが良く来ていたし、小さい頃は良く遊んでもらったが、良く考えてみたら、あの頃から、母親は親戚たちの良きスピリチュアルカウンセラーみたいだったのではなかったかと、思うのである。

妹の沙耶にも聞いたことがあるが、親戚の中での色々なごたごたとか、悩みを聞いてあげて、アドバイスを良くしていた、と。

もう一つ、加速度的にあっちの世界、所謂、精神世界に嵌って行ったのは、癌の手術から3年が経過し、私には話してはくれなかったが、転移し始めた時から、怪しげな気功師のところにも行くようになっていた。

これも妹の沙耶から聞いたことだが、妹が良く車でそこの気功診療所に送り向かいしていて、妹曰く、怪しい治療院じゃないし、先生もちゃんとした人だよ、と言っていたが、今考えると、怪しいと言うキーワードは、父親からの情報から植え付けられたのだと思う。

まあ、なんいしても、その頃から、容体は悪くなってきたのだし、癌の化学療法も身体に負荷を与え続け、刻々と癌の病魔は母親の肉体を蝕んでいったのだと思う。

実は、私も非科学的だが、超常現象的なものを信じてみたいと言う、科学万能精神では無かったから、以前の会社の先輩から紹介されて、奇跡の水みたいなのも、所謂、末期の癌で苦しんでいた人が、その水を飲み続けたら、癌細胞が小さくなり、奇跡の生還をしたと言う実しやかな話を聞いて、紹介してもらい、先輩の知り合いと言うことで、手配してくれることと相なった。

その水は、何でもアメリカのある研究所で偶然生まれたものだ。

と説明され、英文で書かれたレポート用紙を私と先輩に見せてくれたが、それ自体が信憑性があるのか、どうかなんてその時点では分からなかった。

その研究はどうもペプチドが絡んでいるらしいってことぐらいしか、先輩も知らないみたいで、場所もアメリカのシカゴらしかった。そこから冷凍で送られてくると言う話だった。

その頃は、母親の容体がかなり悪いってことは聞かされていて、親戚の叔母さんや伯父さんたちも、高価なアガリクスなども健康食品を買ってきて、母親に渡していた。

そこに来て、私からはシカゴから届くと言う奇跡のペプチド風の水を、兄弟と折半で購入して母親に届けた。友達価格とは言え、1リットルが1万円と言う高価な水だ。

この事に対しても、父親は完全に騙されている、と、私を半ば呆れながら言ったが、仕方が無いか?と言うような力の無い指弾だった。

今になって振り返れば、そうだね、って思うのだが、あの頃は藁にもすがる気持ちで、手配してもらい母親に飲んでもらった。

その他にも高価なローヤルゼリーを購入したり、生命エネルギーが宿ると言う、怪しいペンダントを購入したり、ホント、オカルトのオンパレードな位、私はやっきになっていた。

いや、私だけではなく、家族全員が、親戚の人たちがやっきになっていたのだ。
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