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コラボレーション
しおりを挟むシャルルの【瑠璃色の地球】の熱唱に対して後から後から感動が湧きあがるのか、
拍手が鳴りやまず、
クレア国の芸術芸能セレブ達は、もう一度聴きたい衝動に駆られていて、
だけど現世ニッポンのような「アンコール」的なことがまだ出来ていないから、
なんだかもどかしそうだった。
シャルルは彼らのそんな状態、もう一度聴きたそうな雰囲気に対し、
「次は極東の国の歌姫こと西田佳代さんの歌をどうぞ」
と、リレー形式での紹介を咄嗟(とっさ)に披露(ひろう)し、
次のステージの場がなんとか整ってきた。
シャルルの一発目の現世ニッポン80年歌謡の名曲にノックアウト状態の芸術芸能セレブ達は、
シャルル歌姫を凌駕するほどの歌でなないだろうと、高(たか)を括(くく)っているみたいで、
また変な余裕なのか、シャルルの歌の感動に浸っている観客がホント多かった。
だけど、反対に少数ではあるが西田佳代の
【Endless Story】を以前聴いた方達は、
反対に固唾を飲んで待ち構えていた。
そして、シャルルが舞台袖に移動する方向から西田佳代が、
今までのシンプルな現世ニッポン服から、
華やかな王家貴族の水色のドレスを身に纏っていたので、
そのギャップにまずは、
ホールのクレア国側の芸術セレブ達が静まり返った。
しかし、彼らはシャルルには勝てないと思っている節は、それでもあった。
確かに現世ニッポンでは西田佳代のスペックは女優や歌手レベルの顔とプロポーションだが、
シャルルは僕らの世界でもスーパーモデルが歌姫になった、
そんな圧倒的な外見の差は否定出来(でき)無(な)いので、
要はその外見での評価からすると、
シャルルよりも優れた能力を発揮するとは到底思えなかったようだ。
僕だって、観た感じで、日本の綺麗可愛いアイドルに見えなくもないから、
やはり歌を聴くまでは、
「西田佳代、大丈夫?」
と、最初の頃は思ったほどだけど、
今では、西田佳代の恐ろしいほどのポテンシャルを知らなくて安心しているクレア国のオーディエンス達を木っ端微塵(こっぱみじん)にしちゃいなさい、
と思わず言いたくなるほどの歌姫としてのギャップ萌まで感じるんですね。
そんな当初の僕の不安を、後方の櫓(やぐら)2階にいるオジサン二人、
片岡さんと前田さんがホント心配そうな表情で、
自分の娘が晴舞台に立って心配です、な感じで見守っていた。
確かにシャルルはハイヒールを履いて約190cmの高い身長に対し、
西田佳代は身長が164cmでハイヒールを履いて172cm強ですか、
やはりステージの今のところの、歌う前の存在感は正直、低いですね。
ですが・・・
西田佳代が目の前にある固定式スタンドのタブレットをタップし、
【Endless Story】のイントロ曲が流れだし、
またまた安堵の中に落ち着いたクレア国セレブ達がキョロキョロしだし、
(なになに、このメロディは?
やっぱり、やっぱり今まで一度も聴いたことが無い楽器の音と、
なによりもメロディが半端(はんぱ)無(な)いんですけど~
早くも鳥肌が出まくっています)
な驚愕顔の紳士淑女達が大半を占めてきました。
クレア国のグレアム王子もこの曲がお気に入りなのか、
シャルルの歌よりも気持ち前のめりで聴いています。
そしてなによりも西田佳代は、
この疎外感と言うかアウェイ間の状態の時こそ、
実は実力を発揮すると言う逆境大好き、
下剋上大好きっ娘(こ)かもしれません。
ですから、クレア国芸術芸能セレブ達の
(お手並み拝見)
な姿勢、態度を改めさせる、一気に低評価を高評価、
いやいやそれ以上の感情まで引き上げる、
大感動させるから、
僕も観ていて痛快な気分になります。
案の定、心配していた現世ニッポン組のオジサン二人は、
今では歓喜の表情で感涙しています。
男泣きですか。
そして、西田佳代の歌も終了し、
ホール内は感動と未知の音楽の体験で、ザワツイテいます。
やはり、ただただ感動して感涙して歌の余韻に浸る続ける者、
その場に立って拍手をしたり、感動でじっとしていられない者、
「信じられない」
ばかり言っているクレア国の女性歌手や音楽隊の皆さん。
特に音楽隊の皆さんにとっては驚愕的な経験だったでしょうね。
所謂(いわゆる)、今までの異世界で学んできた音楽を全否定されるような、
そこまででは無いとしても圧倒的なメロディの時空を超えた差を見せ付けられたのですから、
本当に信じられないのでしょう。
年齢の高い芸術芸能セレブほど、
今までの自分のキャリアを全否定されかねないショックを隠すことが出来ず、
それは最初のシャルルの歌った【瑠璃色の地球】の感動とは違った方向からやってきたから、
どう評価してイイか意識が飛んだ状態になっているみたいです。
僕はホールの壁際後方で、彼ら群衆を観察し続け、
ここで歌を中止にするか考えあぐねていると、
やはりシャルルは西田佳代の歌に触発されるみたいで、
やっぱり舞台中央に現れ、そこにはまだ西田佳代も、
ホール内の混乱を戸惑いながら立ち竦(すく)む彼女にシャルルが声を掛け、
そして二人で打ち合わせをしている感じになり、
その後、西田佳代は舞台中央から離れたけど、
シャルルの斜め後ろで待機した。
異世界の我らが歌姫シャルルの登場に、
今一度、異世界芸術芸能セレブ達は安堵と平穏と自信?
やはり、自分たちの世界の歌姫が一番でありたい、と言う人種的プライドなんでしょうか?
所謂、ナショナリズムみたいな、
我が異世界白人の優位性を取り戻してもらいたい。
極東の東洋の歌姫なんかに決して負けないで欲しい。
出来れば、今と同じような、
いやいや、少しでも優位性のあるシャルルの歌を披露してもらいたい。
と言った願いなのか、神にも縋(すが)るような思いで、
シャルルを異世界芸能セレブたちは見続けていた。
それと同時に、
(何故?極東の歌姫はステージからハケないの?)
と、一抹(いちまつ)の不安も皆の顔には現れていた。
そんな異世界セレブ達の期待と不安と、
異世界白人達の誇りを取り戻してくれ~のような悲願渦巻く空間が静まり返った時に、
シャルルが歌う、以前、
ここオルネラ店で西田佳代と伝説を作った歌【最愛】のイントロが厳(おごそ)かに流れだし、
なんとイントロのメロディと同時にシャルルと西田佳代がハモり始めた。
それは、まるで柴咲コウが歌うバージョンでの柴咲コウと福山雅治とのハーモニーを彷彿とさせ、
それこそは二つの世界の融合と融和を暗に示唆(しさ)したかのような光景だった。
基本的にはシャルルがメインだったが、
2番では西田佳代の、シャルルよりは高い、そして女性ボーカルらしい声で歌い、
シャルルの中性的な低くて艶のある声を一際引き立たせた。
その見事な突然のセッションに、
僕は自然に腕組みして、
壁際に寄りかかるようにして唸りながらその光景を見ていた。
彼女らは完全にプロフェッショナルの歌の世界へと進化し出していた。
こんなに簡単に、しかも全く一度も練習などしていないのに、
彼女らの鋭い感性が、高い創造性、クリエイティブに覚醒し、
この特殊な状況だからこその最良の選択、と言うか、
ここに集まっているオーディエンスに対する驚きのサプライズ、
驚きの感動を与えるのだから、
僕は感動しながらも、やはり唸るしか無かった。
現世ニッポン人であり、
2019年のエンタメオタクの僕ですら唸らせた二人の歌姫のセッションなのかデュオなのかの【最愛】に思わず呻(うな)って「凄い!」と感動しているのだから、
異世界の多分、
文化文明の時代的には1200年~1400年位の中世ヨーロッパな異世界芸能セレブ達にとっては正(まさ)に未知との遭遇、
天上界から天使か歌の女神が降りて来て、
天上界の神曲をミューズ達に披露された、
と言ったそんな感覚でしょうね。
それを証明するかのようにオーディエンスの殆(ほとん)どが息をするのを忘れた感じで、
皆が皆、口をアングリと大きく開けて、ステージを見ながら固まっています。
まさに歌姫メデューサによって石になったかのようにです。
しかし、シャルルの声は誰かの女性ボーカルの声に似ているよな~と、
前から思っていたのが、今の西田佳代とのコラボ、
突然のデュオによっての声質の違いによって、
唐突(とうとつ)に思い出してしまった。
(カレン!カーペンターズのカレンの声質に似ている)
そう、頭の中にひらめき、シャルルに今後は洋楽の名曲を歌わせて見たい、と強く思った。
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