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シャルル歌姫のお手並み拝見
しおりを挟む僕はシャルルと西田佳代の3人で、舞台(ぶたい)袖(そで)で打ち合わせをし、3曲披露することにした。
トップバッターはやはりシャルルで、歌も人気が安定的な松田聖子が歌った【瑠璃色の地球】、
次が西田佳代の【Endless Story】、
そして最後は【最愛】の曲順にした。
「私、この格好でいいのかな?」
西田佳代が突然、自分の今着ている服装、
白が基調のシンプルなスカート姿を気にしていた。
僕も正直、どうしようと頭の隅で思ってはいたけど、
今更遅いし、この格好でもいいんじゃない、極東の国の格好と言うことで、
と、仕方ないと考えていたらシャルルが
「ムート先生、先生のダンジョンでグラムデル城の衣裳部屋に繋げてもらえますか?」
「えっ、いいのかな~」
なんか異世界内ではシャーロンが行うと言う暗黙の了解だったので躊躇(ためら)っていると
「大丈夫ですよ、ムート先生は異世界でもダンジョン、
バンバン出して使えるのよ」
ふ~ん、シャルルの話しは話し半分としても、
やはり西田佳代の女心は分からんでも無いので、早速、シャルルに言われた
「グラムデル城の衣裳部屋~」
とマンガの魔女っ子なんちゃら見たいに唱(とな)えると、
グラムデル城の衣裳部屋で雑談しながら掃除をしている風の二人の若い白人女性、
見た目は掃除婦、召使風の服装でしたが、
その部屋に突如ダンジョンが現れ、
そして今ではハイヒールを履いて身長190cm級のシャルルが入ってきたからキャーっと乙女の悲鳴がダンジョンからも聞こえて来て大パニックですが、
シャルルの説明によって直ぐに収まり、
直ぐに西田佳代もシャルルに誘われてダンジョンを通ってグラムデル城の衣裳部屋へ入っていた。
ま、当然、男である僕はその衣装部屋には入らなかったけど、
チラっと部屋の中を見たけど、広くて豪勢で、
しかもクロゼットが壁一面に埋め込まれていたので、
そこの中には様々なドレスがあって凄いんだろうな~
と考えていたら、西田佳代のキャッキャした弾む声で
「着せ替え人形になったみたい」
とか
「凄い凄い、お伽(とぎ)の国のお姫様になったみた~い」
と完全に楽しんでいますね。
西田佳代は。
あの若い白人女性の家政婦みたいな人達は、
異世界グラムデル城では衛生班と言われていて、
グラムデル城内のほぼ全ての雑用に従事していた。
そして、何気に着付けも早いのかな、
衛生班の女性二人が手慣れているのか3分もしないウチにシャルルと一緒に着替えてきた、
見違えるような姿になった西田佳代を見て、
思わずうっとりしながらも、
やっぱり衣装をドレスに変えて大成功だとつくづく思った。
そして、舞台にはシャンデリアの蝋燭が一段と多く灯(とも)り、
反対にホール内の客席を暗くし、
二人の噂の歌姫達の競演が始まったのだ。
僕はスマホで二人の曲を遠隔してペアリングしたラジカセ等の機材を準備万端にしながら、
舞台の袖から、舞台階段を降りて、著名人、
と言うよりは異世界の芸術芸能セレブ達を壁側に沿(そ)ってゆっくりと移動しながら、
時折、彼らの会話や表情を見て周っていた。
異世界芸術芸能セレブ達や、実際の表現者達、
女優や歌手や演奏家や演出家達は、
言葉では「楽しみね~」と言いながらも、クレア国の表現者組は
(お手並み拝見といきますか)
みたいな感じで、まずは舞台中央に立って、
タブレット固定三脚スタンドを見ているワインレッド色のドレスを着たシャルルを、
やや斜に構えて見ていた。
多分、クレア国の歌手の中には当然、
クレア国の有名な音楽学校を優秀な成績で卒業し今日の状態になっているのだから、
そう考えるとぽっと出のシャルルや、
良く分からない極東の国の、しかも白人じゃ無く有色人種の東洋人だから余計、
斜に構えて、粗探(あらさが)しをしているような鋭い眼の女性達も多くいた。
異世界双方の国の貴族や王族たちも、
今まで見てきた、聴いてきた舞台や歌のステージを自慢したり批評したりのヒソヒソ声があっちこっちのテーブル席で行われ、
そこに緊張したオルネラ店のスタッフ達が飲み物を忙しく運んでいた。
飲み物は現世ニッポンで言えばソフトドリンク、
果汁飲料は女性達に、男性や、
やや年配の女性には冷たいお茶が出されていた。
そいえば先程、凄く慌てながらも興奮気味のオルネラとスタッフ達をチラット見たな。
確かに、ここに集まっているのは異世界では両国の国賓級(こくひんきゅう)の有名で権威のある芸術や芸能を仕切るお偉いさん方、
有名なアクター達が揃(そろ)って現れたのだからアタフタし、
聞いてないよ~状態ですよね。
そんな中、スタッフ達も無事と言うか、
異世界芸術芸能セレブ達に飲み物を配り終えたのを見計らったかのように、
今では各々(おのおの)の、今の処二人だけど、
二人の歌姫のタイミングで、タブレットの曲名をタッチすると、
その曲のイントロが流れ始めてきた。
まずは、このイントロのメロディや音楽が、
今までに聴いたことが無い楽器の音に、
芸術芸能セレブ達が一瞬ざわめき、
そしてまた一瞬で水を討ったように静かになった。
シャルルによる僕らにとっては安定的人気、
十八番(おはこ)な【瑠璃色の地球】の歌い出しが始まると、
それまでイントロが流れるまでは、斜に構え、
(お手並み拝見しますよ、ド素人さん)
と思っていた、
主にクレア国の歌手や音楽団の演奏家たちが見る見る驚愕の顔に変わり、
次には
(信じられない)
と言った表情になり口をあんぐりと開け始め、
遂にはまるで天上界のメロディや歌を聴いた感動と喜びに、
太った大柄の男性歌手は声を出さずに号泣し始めました。
今では完全に異世界芸術芸能セレブの皆さん、
シャルル歌姫に見惚れてうっとりしていて、
先程の大柄男性のような、
大感動して涙ポロポロしている人も半数はいるかも。
後方の櫓(やぐら)2階で観て聴いている現世ニッポンでダンジョンに選ばれし片岡さんと前田さんも感動で泣いている模様です。
歌が終わり、メロディも終わり、ホール内がシーンと静まり返ること10秒。
今まで舞台を、シャルルを見続けていたオーディエンス、
芸術セレブのお客様達は、今まで聴いたこともない楽器のメロディに衝撃を受け、
シャルルの異次元の歌に鳥肌が立ち、後は心が揺さぶられているのか、
何かとてつもない今まで感じたこともない感動に包まれ、
放心状態だったが、
舞台にはシャルルはただただ戸惑った感じで立っていたので、
少しずつ舞台前の人達から立ち出し、
そして最初はまばらに、
そして最後には全員が立って拍手をし出した。
一気にシャルルの歌によって、
超未来の音楽、
やはり異世界では700年は早い未来の歌謡曲の体験をしたから、
完全に虜(とりこ)になり、
会場がまさに鳥肌感動になって一つとなった。
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