37 / 59
グレアム王子は自国の芸術総監督
しおりを挟む僕はなんかイマイチ納得いかない表情でいたら、シャーロンが徐に僕に両手で輪を作り、所謂、ダンジョンボイスのポーズを取ったので、僕はどっちの耳から聞こえるか分からないけど、聞き耳を立てた。
すると
《ごめんね、実は色々と訳があって、グレアムはハンサムだけど女の子よりも男の子が昔から好きなのよ》
そのシャーロンからのダンジョン内緒話を左耳から聞こえたので、今度は僕が輪を両手で作ります。
もはやここまで近いと、テーブルのみんなにダダ漏れですが、仕方ないか。
と言うことで、一応、ダンジョンボイス内緒話の内容を要約しますと、確かにキサナ国のグラムデル王家とクレア国のラヴァン王家は古くからのお付き合いをし、一応、シャーロンとグレアムは許嫁として両王家が決めていたこともあったが、グレアムは超絶イケメンに良くある話で、ゲイだったんですね。
だから、もしかしたら、シャーロンや西田佳代よりも僕にアプローチするかもしれないから気を付けて!とシャーロンに注意までされたが、これもどうやらこの場ではダダ漏れ、ですか。
「まさかシャーロンまで、私と同じ芸術芸能関係、しかも音楽関係に携わっているとは、驚きましたよ。
しかも、あちらの世界の、歌の大先生と専属契約をしているとは羨ましい限りです。
私も、と言いますか、私の真似をしたのがシャーロンだと思いますが、
わたくしはクレア国で芸術、芸能全般を担当しておりまして、
音楽ではこちらの三国の中では我が国だけの音楽隊を結成しております」
音楽隊を詳しく説明されると、まさに現世ニッポンで言うところのオーケストラで、他は芸術芸能は演劇や声楽歌手によるステージ、そしてクレア国の観光事業までを彼は請け負っていた。
クレア国自体が風光明媚な北国の環境を活かし、観光と芸術で財政を賄っているとのことだった。
「それでなんだけど、ここキサナ国の町中にある大きな宮邸があるけど、現在は他の国の王家、貴族達が滞在する為のゲストハウスなんだけど、最近は余り稼働していなくて、その宮廷にここオルネラのお店を引っ越そうと考えているのよ」
「なるほど、と言うことは、今日、ステージを見に来て分かったけど、
この連日の大盛況ぶりでは、お客が溢れて嬉しい悲鳴だからかな」
「それもあるんだけど、実は前にグレアムが言っていたじゃない、キサナ国にもそろそろ王立の大劇場でも作ったらイイんじゃないって」
「ああ、言いましたね。
実はさ、今まではクレア国の音楽隊や芝居、芸能関係の殆どはグラムデル城内でしか行われず、我が国カスナにある大劇場がキサナ国にもどんどん出来れば、キサナ国ももっともっと外貨を獲得出来るのに、なんて思っていて、シャーロンにそんなことを言ったかもしれない」
「で、出来ればクレア国の芸術劇場を設計している建築家さんを派遣して貰いたいんだけどな。
あの大きな宮邸の中身をリニューアルして、まずは簡易で劇場を作りたいんだ」
「なるほど、いいね。
流石は節約志向のシャーロンだね。
あの大きな建物ならここの10倍は観客が集客出来るしね」
僕は10倍?と言う大きさにちょっと困ってしまった。
と言うのは、今の小ホールだからミニコンポセレベルのスピーカー出力で良かったのだが、ここの10倍の広さだと、確実にコンサートホール用のスピーカーが必要では、と考えてしまった。
ま、その辺は帰ったら片岡さんにでも相談しよう。
しかし、この異世界でも芝居やら舞台やらオーケストラみたいなものがあったとは、しかも隣国クレア国が、芸能の世界では群を抜いているのか?
タイミングが合えば、異世界の芝居も是非!鑑賞してみたいです。
「分かった、その辺の技術的な面は直ぐに手配するよ、明日にはあの宮廷に建築家や技術者を向かわせるよ」
それに対し、私のダンジョンを使わせて!とシャーロンはシャーロンもダンジョンを使えるのね、魔法使いだから当たり前か~とも思った。
「そんなに魔法やダンジョンを使って平気なのか、シャーロン!
また魔法の森のチエノフ女王代理に怒られるんじゃない?」
「大丈夫よ、基本的に世の中の人々が喜んだり感動することに使うのは、良い魔法なんだから」
グレアム王子もやれやれと言った表情で、シャーロンのスーパーポジティブ発言にはお手上げなようだ。
うんうん、判るよグレアム王子、シャーロンの性格には誰も逆らえない時があるよね。
僕は気になっていたことを彼らに徐(おもむろ)に聞いた。
「シャルルはグレアム王子の妹なんですか?」
「いや、彼女は親戚、従兄だね」
そして、シャーロン姫の#侍女_じじょ__#でもあるんだよ、
ボディーガードみたいなもんさ、ほらシャルルは身長も高いだろう、
で、脱ぐと結構な筋肉質で力も強いし、格闘技なんか私よりも上手いし強いんだ。
小さい頃は何回泣かされたことか」
シャルルは、今度はグレアム王子にクチパクしながら怒った表情で
【なんで今のタイミングでそんな事を言う訳?】
な、ゼスチャーをしたので、そこにいた全員が思わず笑った。
そんな訳で、僕は健食粉砕工業㈱を突然!
でもなく、まあ、遅かれ早かれ辞めていたと思っていたので、きっぱり辞めてしまいました。
晴れて自分の今好きなこと、異世界での歌姫プロデュース、
からの今ではクレア国の王子であり芸術観光大使でもある超イケメンのグレアム・ラヴァンとも面識を作り、
そう遠くないウチに彼の総合監修している芝居やオーケストラや歌のステージや舞台を見せて頂いたり、
コラボしたり、最終的にはクレア国のこれからの芸能活動に対しての共同プロデュースまでも頼まれると言う、
異世界の話しだけど僕にとっては夢のような展開になっていた。
僕は、そんな今までの経緯を、僕としては逸る気持ちを押し殺して、努めて冷静な調子で片岡代表、片岡さんに報告した。
今では豊洲ビル2階の広いフロアーには新しい事務用デスクが6台とデスクの上には新品のノートパソコンやタブレットまであり、Wi‐Fiが設置されていた。
フロアーが大きいので、それでも半分以上はガランとした空間が広がっていて、そこは蛍光灯が消えているから昼間でも薄らと暗い感じだ。
片岡さんは取敢(とりあ)えずパーテーションで近日中までに事務所を仕切るとの事。
そんな豊洲ビル2階の元美術出版「藝文社」ビルの新生「㈱スクール・オブ・シネマ」事務所オフィスで社長デスクに囲むように椅子を近付けて座って歓談中です。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

カフェ・ユグドラシル
白雪の雫
ファンタジー
辺境のキルシュブリューテ王国に店長が作る料理に舌鼓を打つ、様々な種族が集う店があった。
店の名前はカフェ・ユグドラシル。
そのカフェ・ユグドラシルを経営しているのは、とある準男爵夫妻である。
準男爵はレイモンドといい、侯爵家の三男であるが故に家を継ぐ事が出来ず高ランクの冒険者になった、自分の人生に悩んでいた青年だ。
準男爵の妻である女性は紗雪といい、数年前に九尾狐を倒した直後にウィスティリア王国による聖女召喚に巻き込まれた挙句、邪心討伐に同行させられたのだ。
しかも邪心討伐に同行していた二人の男によって、聖女を虐げたという濡れ衣を着せられた紗雪は追放されてしまう。
己の生きる道に迷っている青年と、濡れ衣を着せられて国を追われた女が出会った時、停滞していた食文化が、国が、他種族が交流の道を歩み始める───。
紗雪は天女の血を引くとも言われている(これは事実)千年以上続く官人陰陽師の家系に生まれた巫女にして最強の退魔師です。
篁家や羽衣の力を借りて九尾を倒した辺りは、後に語って行こうかと思っています。
紗雪が陰陽師でないのは、陰陽師というのが明治時代に公的に廃されたので名乗れないからです。

初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる