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社内外に充満する不正体質
しおりを挟む㈱ウシでもオンラインを取り入れての合理的で効率的な仕事が、
前々から推奨されていたが全社的に見るとまだまだではあった。
そんな中、内部統括グループではオンラインを使っての仕事を率先するよう行動し始めていて、W大学の視聴覚室とスタジオに入り浸りの相澤と黒木は、
まさにオンラインを使って所謂ノートパソコンやタブレットを使ってのズーム会議をしながら、外でも仕事を行う実験も同時にこなしていた。
「そんなのを見せられちゃいますと、大学等の教育現場こそオンライン授業の強化が叫ばれていますから、直ぐにでも取り組まないと行けない気がしますね」
本城直人が、丁度オンライン会議が終了し、画面を閉じている相澤純に近付きながら、そう話しかけた。
「W大学でも、色々行(おこな)っているんじゃないの、オンライン授業」
「準備や、実際、どこかの授業ではしているかもですが、生憎、私らの授業ではまだ御目にかかっていない、それに今の大学生は、スマホは持っているけど、パソコンを持っていないのが半数以上とか聞きましたよ」
「そうなのかい、俺ら会社より随分と進んでいると思っていたけどね」
「そうですね、なんか、大きな災害でも起きなければ授業のオンライン化は急速に進まないんじゃないですかね。
大きな地震でも、東京直下型の大地震が起きたり、
未曾有の災害が起きない限り、大学の本格的なIT化や授業のオンライン化は思うように進まないだろうし、本来と言うか、
大学って同世代の男女が集まってワイワイするのが目的であり楽しいじゃないですか、こんなこと言うのは申し訳ないけど、勉強は二の次で、今までここに入る為に青春を捨ててきて、
我慢して学習塾や自主的に勉強してきた訳じゃないですか、
それなのに効率的で合理的なオンライン、イコール態々大学まで移動しないで、
集まらないでモニター越しの勉強なんて、その後の展開が無いじゃないですか、
友達を作ったり、みんなで昼飯食いに学食に行ったり、とか、
カラオケ行ったり、飲みに行ったり等など」
「そういえば、直人君は例のお店、完全に辞めたの?」
相澤純が「飲みに行ったり」の直人の言葉に、思い出したかのように、直人が以前アルバイトしていたニューハーフクラブ「ナナオ」店のことを言いそうになったので、直人は慌てて純の口を押さえるような態度で椅子から立ち上がった。
「止めてくださいよ、ここの連中には話してないんですから、まさか黒木さんには話したんですか?」
「いやいや、話してないよ」
「それより、この前、相澤さんの会社にグループインタビューでGaiaサークルのみんなとお邪魔した時に、吉田さんにばったり会ってお互い驚きましたよね、彼は僕のこと、全然分からなかったみたいだけど、相澤さんこそ、吉田さんとはアレから飲みに行ってないんですか?」
相澤純は直人の話しに、首を横に振った。
「例のこと言ったからですか」
直人はそう言ってシリアスな表情になった。
例のこととは、直人が以前に相澤純に話したことで、吉田がニューハーフクラブ「ナナオ」店の会計時に、宛名無しの領収書と、㈱ウシ名義の領収書を態々貰ったりしていることを目撃していて、その件を話したことだった。
「その件のことなら、直人君は気にしなくていいよ、
吉田さん本人にも余りよくない噂は聞いているからね。
それよりも、吉田さんの広告代理店の製作費や広告宣伝費が、こちらも業者丸投げ体質でザル状態だったのもあるけど、代理店価格だから全てが高くてさ、
Webマーケティングサークルの加山君や企業組織研究サークルの小山田君から教えられた他の広告代理店やWeb制作会社に連絡して広告宣伝の事や印刷物、ホームページの御見積り等を出してもらったら、金額もだけどネット通販の構築ノウハウや、オウンドメディアのノウハウが吉田さんや代理店には無いし、結局は吉田さんの会社も専門業者に丸投げ状態なことが分かってきてさ、それ以来、内部統括グループでは一切関わっていないし、ホームページのリニューアルの件で、どこかの部署から漏れたのか、外されることが分かってしまったみたいで、
かなり微妙な関係なんだよね」
「そうなんですか」
直人も相澤純の話しを聞いて、溜息を吐いた。
「結局、アパレル業界や繊維業界に強い広告代理店とか言われていても、やっていることはウチ(㈱ウシ)と同じで、業者丸投げ体質だってことで、今頃になって社内のクリエイティブディレクターに企画書を制作させてHPリニューアルのプレゼンに御伺(おうかが)いしたいとのメールや電話が頻繁にあるんだけど、上司がみんな御断りしてるみたい」
「あの、この間、吉田さんと名刺交換していた池田部長ですか」
「そうそう、池田部長が丁寧に御断りしていました。
結構長電話みたいでしたけどね」
相澤純は、吉田に対して、たまに飲み代や食事代を奢ってもらっていたから、ちょっと複雑な心境だったが、元財務部で今回の異動で同じ内部統括グループになった女子社員から、吉田さんが財務部の上司共よく夜の接待の場所、所謂銀座の高級クラブに接待していて、その稟議書に相澤純の名前もよく入っていたことを教えられ、ちょっとした衝撃をうけていた。
勿論、相澤純は一度も吉田と銀座のクラブに行ったことは無いしそちらで奢られたことは一度も無い。
それは妻である香織の妙に潔癖症で嫉妬深い性格も原因ではあったが、純自体もホステスやキャバクラ嬢と話しながら飲むのが好きでは無かったのが他ならないが。
それなのに吉田と財務部の上司たちは人数合わせに勝手に相澤純の名前も、結構な頻度で使われていたってことが、今回の異動でいみじくも暴露されてしまった訳だ。
そのこともあり、相澤純は吉田と会うことを微妙に避けてしまっていた。
なんにしても、㈱ウシの社長である宇志清が精査会で言っていた言葉を思い出していた。
「会社に溜まった色々な膿を出し、今の時代に沿った企業に生まれ変わらせないと行けない」
と、そして、
「それには長きに渡って重鎮している役員たちの意識も変えさせなくてはいけないのだが、それよりも自分たちで何が出来るのかを自ら動いて見せなくてはいけない」と。
まさに、相澤たちは正念場に差し掛かっていたのだった。
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