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仮説とイマジネーション

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「それで、㈱ウシのだいたいの現状と、
私たち内部統括グループの考えを理解したうえで御協力出来ますか?」

黒木徹が満を持してそう、3人に問いただした。

「ちゃんと理解したか、と言われると、はい、とは言えませんが、何となく理解し、
なんとなく、こう動き出しますか、みたいな、ね、そんな感じです。
例えば、私の所属する【Webマーケティングサークル】は、名前こそ、
Webがメインだから所謂、
広告宣伝の事や会社である広告代理店のことには情報が疎いのでは?
と思われますが、相澤さんが話した中で、
早速、情報を報告することが出来るのは、
東京23区内の大小様々な広告代理店のリストを用意出来ることや、
範囲を広げれば東京一都三県までのリストを提出することも出来ます。
もっと詳しくセグメントならば、
御社のような繊維専門商社のライバル企業が付き合っている広告代理店だったり、
広告制作会社等の制作会社を調べて提供することも出来ます。
あくまでもデータであり、ネットからの情報が殆どですが、その先は地道な作業、
所謂、人海戦術での現場移動とイマジネーションと仮説力によりますが」

「か、仮説力?」

「私たちだけで使っている言葉です。
まず、物事を考える、行動する前に、仮説ありき、なんですね。
または予想する、例えば、何の仮説も立てずに行動してしまうと、
思わぬ失敗が起きた時に、時間的様々なロスが生じ、
最終的にはデータ収集さえもレベルの低いことになる」

「社会で言うところのリスクマネジメントみたいなもの?」

「それも当てはまるでしょう。
要は仮説を立てて検証しながら物事を進めた方がリスクも回避でき、
また、不徳の事態になっても撤退戦が容易に出来る、みたいな」

「例えばの仮説・イマジネーション的にディスカッションするとなると、
本来であればアパレル業界や繊維紡績業界に強い、
特化した広告代理店と付き合った方が良いと安易に考えますが、
目的とする御社のホームページリニューアルに関して、その広告代理店が本当にベストなのか?
仮説を立ててら調べるのならば、今現在のHPはA広告代理店で、アパレル業界や繊維商社業界に詳しい特化した会社だけど、HP制作自体には強くない、HP制作に関してはA広告代理店のクリエイティブディレクターが担当しているが、実際には某Web制作会社に委託していて下請けにだしている。
一応、A社の担当クリエイティブディレクターが指揮を取っているが、
実情は下請けWeb制作会社とA広告代理店の担当営業に徐々にシフトし出し、
当初の企画書でのHP制作によって何でも出来る、ネット通販からの利益も期待できるみたいな内容も、予算と制作スケジュールによってダウンしていき、今の現状のままのHPが出来上がるが、今までの詳細なレポート提出はA広告代理店からは余り報告されない。
なのに月間のサイト管理費はしっかり払い続けている」

「ふ~ん、まさに弊社の状況だね、それも調べたんだ」

黒木が感心した感じで、そう答えながらうんうんと頷いていた。

「ちょっとは御社の事も調べましたが、
以前ライバル他社をリクルートしていた先輩にインタビューやら彼女が集めた情報を共有したことがあり、その情報の方が活かされているのかと」

「な、なるほど、確かに、毎年毎年、学生全員が就職活動を行う訳だし、
大学自体には膨大な数の学生が就活した貴重な生のデータがあるはずなんだけど、
そのデータなのかな」

「それは違いますね、
大学側としては学生援護会での情報はそれなりに有るとは思いますが、
例えば細かいグループ面接の会話等は、やはり個別の講師たちしか共有していなく、
ここだけの話しですが、
我々の先輩たちによっては面接時をICコーダーで録音していて、所謂、パワハラ、セクハラの証拠集め兼ねて企業の情報収集までしています」

「す、凄いね、ちょっとしたスパイ活動みたいだね」

「そうですかね、私たち学生は基本的に弱い立場ですから、
それなりの防御対策もしていかないと、身を守れませんし、泣き寝入りですからね、
それに、その証拠音声を学生援護会の担当者に聞かせても、要は何もしないのが現状ではあります。
要は、そのような質問に対しても上手く切り返して、
自分の良い処をアピールして内定を勝ち獲れ、
みたいなアドバイスが関の山って感じ」

「そうか、そうだよな、俺らもちょっと前までは、
過酷な就職活動を経験し乗り越えて来たんだものな」

と、黒木が昔を懐かしむように、しみじみとした表情で話した。

「すいません、なんか話しが脱線してしまって先輩の就活の話しになってしまって」

「いやいや、凄く勉強になったよ、こんなことを言うと、
こっちだけのよこしまで打算的な言い分になって大変恐縮だけど、
今の話しで気付かされたような、大学内には就活生たちによる生きた各企業の貴重な情報に溢れているんだな~と、その情報や体験談を収集分析しているから、弊社の置かれている状況も的確に仮説を立てることが出来る」

「いやはや、相澤さんは分析力が鋭いです。
さすが某大学出身ですね」

相澤は照れながら、本城直人の顔を一瞬睨んだが、直ぐにあの爽やか笑顔に変わった。

「相澤さんの指摘部分は、もしかしたら大学の強み、
みたいに思われるかもしれませんが、しかし、実際、これを活かして、
就活中の学生達が上手くいくのとは、やっぱり違うんですよね。
やはり個人の力、スキルと言うのか、キャラクターと表現すべきか、
要するにそこの企業の面接官に気に入られなければ、そんな情報は意味をなさない。
いくら本命の会社の勉強をしていき、その会社で自分が何がしたい、
何が出来るかをアピールしようが、その面接官に刺さる、
選ばれる人材にならないと行けない」

「まさに、アイドルのオーディションと同じだね」

本城直人がそう口を出した。

「まさしく本城君が言った就活の面接はアイドルのオーディションと本質は変わらない。
またまた、話しは脱線しましたが、そうそう仮説の話しですね。
例えば御社と同じような繊維専門商社のホームページを制作に当たっての仮説では、
そもそも、今現在のホームページの良し悪しを正しく分析しているのか?
していないのならば早急にしなければならない、次ぎに今のホームページ制作に関わった社員たちは今でもHP運営に関わっているのか、いないのはなぜか、
HPリニューアルに当たっての社内アンケートや部署ごとの聞き取り調査もして、その情報分析からの仮説を立てることも、
何よりも、今現在HPを運営管理している広告代理店にリニューアルしたいという意向を伝えるべきか、それとも、今回は最初から別の広告代理店に替える考えなのか、
HPリニューアル制作獲得のための各広告代理店やWeb制作会社への競合プレゼンを行うのか、等など、考えればきりがありませんが、そのようなことを全部決めたとして、どのようなHPを作りたいのか、と言う仮説的な出来上がったHPのイメージを自分の会社で制作しないと、一番悪いのは競合プレを行い、参加した他社の企画アイデアを盗んだイイとこ取りのHPを、製作費が安い会社に決めて作るという仁義なき行為ですね。
これはやってはいけない。
と言った状況も全部踏まえて、例えば僕なりの仮説によれば、
可能であればコンテンツマーケティング主体からのオウンドメディア型HP制作が理想と仮説をまずは立てちゃう」

「コンテンツマーケティング?
オウンドメディア?」

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