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W大学と㈱ウシによるグループインタビュー
しおりを挟むW大学の校門で本城直人と山本真琴先輩が相澤純と黒木徹をお出迎えしていて、
受付で訪問の簡単な記入を終え、キャンパス内に4人は入っていった。
場所は学生支援機構の小会議室で、K‐POPダンスサークルGaiaの名目上の管理顧問である国際交流学部準教授の内田優子講師と挨拶を交わし、㈱ウシからのGaiaサークルへの衣装提供などのお礼を含め、今回、相澤がW大学に訪問した目的の本題に入った。
その本題とは、W大学内の各サークルとビジネス的に何処までお付き合い出来るか、
という内容だ。
もっと詳しく言うのならば、
㈱ウシのホームページのリニューアルや広告宣伝等でのコンサルタント的なアドバイスで、
協力、またはビジネス的に、とどのつまり料金がどのように発生し、
それをどのように支払うのか、
等の細かいことを打合せする為に相澤たちが足を運んだしだいだ。
そんな内容の打合せの中で大学側は、
「その件の見解として、
大企業のホームページ制作など、学生サークルレベルで太刀打ち出来ない、
ホームページ制作なら、
ちゃんとした形態のWeb制作会社や広告代理店があるじゃないですか」
と、大学側の担当者がすかさず、そう答えた。
「本来なら、まさしくおっしゃる通りなのですが、
私どものお恥ずかしい話しで恐縮なのですが、今までの弊社のホームページや会社案内、
ひいては株主総会用の資料一切を、広告代理店や業者に丸投げでして、
そこから変えていかないと拙(まず)い、ということで原点回帰に一致しまして、
とは言え、本当にWeb制作や広告宣伝に詳しい社員が弊社に居ない事が分かり、
だからと言って弊社の考えであるっ広告全体、
Web全体を教えてもらいながら一緒に制作して頂く、
ということには既存の会社では中々賛同してくれない。
いえ、口では〈そうしましょう〉と言ってくれるのですが、
相手も所詮、商売ですから出来ればさっさと作って納品して、請求書を送りたいのが本音ですから、あの手この手でスケジュール管理し出し、
製作が遅れれば再見積もり、再見積もりと製作費が段々と高くなっていき、
不本意な形で、所謂、最終的には業者丸投げでの制作物が結果的になってしまうのです」
「はあ、だからと言って、私どものサークルでは、
今までにそのような会社のホームページを製作した!
という実績は全くありませんから、あっそうだ、
卒業生の中には広告代理店やWeb関係に入った者も少なくないので、
その者を紹介では、どうなんでしょうか?」
「いえいえ、私どもが探しているのは、私どもの会社にあった、
弊社と長くお付き合い出来る企画制作会社とお付き合いしたいですので、
紹介はありがたいのですが、結局はその会社に入社した本校の生徒様も、
自分の会社よりもこちらの会社の方がこれこれこうだから良いですよ、
みたいなアドバイスは出来ないかと、
理想かもしれませんが、そんな人物ならば是非紹介して頂きたいですが、
たぶん、そうじゃないかと」
「はあ、そう言われましても・・・」
「誤解がありましたら、スイマセン、私たちはなにも、最初から最後まで全部、
サークルの学生さんたちに制作してもらう訳ではありません。
例えば、ここ東京都23区内でも大小様々な広告代理店やWeb系の会社が何百、
何千とあると思うのですが、まずは、その会社を調べて頂き、報告して頂く、
と言ったことや、会社案内やホームページ制作でも大事なんですが、
まず初めとしてのコンセプト作りと言いますか、作る前の前段階としての、
社内プレゼン用の資料を作るために、そこで協力して頂くとか、
そんなイメージなんですが、
そこで何回も御校の学生さんの本来の学業に負荷がかかるようにならないよう、極力注意しますので、まずは御校の学生と、この場での内容をお話しさせては頂けませんか?」
「私達からもお願い出来ませんか?」
今までの流れに耐えかねたかのように本城直人と山本真琴がそう発言しながら揃って頭を下げた。
「いいでしょう。あくまでも学生の気持ちを尊重して頂くことが原則です。
そして、どのような流れであれ、進行する場合は、報告・連絡・相談は必ずお願いしますね。
それに、
あなたたちのグループインタビュー参加の内容もこれからお話ししないといけませんしね」
実は、㈱ウシの内部統括グループ内で、プライベートブランドのアパレルや、
提携しているPB企画会社の試作服の意見交換等で、
本城直人のK‐POPダンスサークルの女子部員を交えてのグループインタビューを行うことの、最後の了承として、
W大学に相澤純らが足を運んだのが、今回の本題であった。
グループインタビューは㈱ウシ内では、主にメインの広告代理店、あの吉田が勤務する広告代理店が主催して、営業部や新規事業開発部と何度か行ってはいたが、まずは広告代理店仕事なだけに費用なそれなりに発生した。
そこへ行くと、今回のグループインタビューは元々例の経緯で知り合った本城直人と相澤純の出会いからなので、費用も広告代理店主催の10分の1で行うことが出来た。
要は学生達が移動する交通費と日当ぐらいがかかる経費で、後は飲み物や御菓子、軽食等の雑費だから、如何に広告代理店が入ると費用が膨らんでいくかが相澤ら内部統括グループ社員は思い知った。
また、今回グループインタビューが行うことになったもう一つの経緯は、
相澤純が上司である池田瞳に相談し、池田部長として内部統括グループが発足以来、社内から浮いていることを危惧していたので、外部勢力の活用、と言うと大袈裟だが、余り費用が発生しないけど㈱ウシが今欲しがっている若さ、若くて柔軟な発想を持つ現役の大学生、しかもアパレルと言えば女子大生の年齢層も大きなマーケットだから、女子大生たちが㈱ウシの社内を闊歩するだけでも、
㈱ウシの大勢の女子社員の様子はというと、
その日ばかりは静かなオフィスが色めき立っていた。
と言っても依然、オフィス内は静かではあるが、多くの女子社員はきょろきょろと視線を泳いでいて、そのあからさまな態度と動揺が隠せないのが、数少ない男子社員たちだったのは間違いない。
池田部長はこのグループインタビューを利用、活用して営業部や新規開発部にもお声掛けし、内部統括グループのグループインタビューに参加を呼び掛けたのだ。
そして、各部から出席代表者1名が集まることっとなった。
こんな時にタイミングが悪い、と言ったアクシデントが度々起こってしまうらしい。
今回のアクシデントはW大学の女子大生側から、出来れば㈱ウシの社内を邪魔しない程度に見学したい、との要望があり、大丈夫なフロアーだけを相澤純と池田瞳部長が引率していたところに、相澤純の知っている顔が現れた。
「お久し振りです。相澤さん、今日は学生さんたちを連れて見学会ですか、それともインターンか何か」
その時、吉田の近くに本城直人もいたので、直人も純も一瞬ビクッとして、驚いた顔になった。
吉田は学生達をゆっくりと眺め、当然、本城直人の顔も見た。
直人も純もしまったと思ったが、吉田は直人の顔を見ても別段、変わった様子も無く、相澤だけに話しを掛けて来た。
話しの内容は最近、時間を作ってくれないとか、新しい部署の責任者に合わせてくれないとか、そんな内容を小声で話して来たので、取敢えず引率に同行していた池田瞳部長を吉田に紹介し、ひとまず直人と女子大生たちをオフィスから移動させ、廊下で待たせて、また吉田と池田部長へと歩み寄った。
彼らは丁度名刺交換を済ませたばかりで、一歩的に喋っているのは、相変わらず吉田の方だった。
相澤は池田部長には事前に吉田と吉田が勤務する広告代理店のことを報告していたので、吉田が探りを入れるような会話、先程の学生達のことなどを質問していたが、池田部長も余計なことは発言せずに、急いでいることを告げて、そうそうに吉田に会釈し、相澤も
「今、見た通りでバタバタしていますので、落ち着いたら、ご連絡いたします」
と挨拶もそこそこに、吉田を後にし、廊下に戻って行った。
社長室と内部統括グループのある階に非常階段を使って登る最中、純と直人はホッとした安堵の視線をお互い送り合った。
直人のことを吉田がスルー、認識しなかったのは、ニューハーフショーパブ「ナナオ」店で、直人がいつもドギツイ御化粧メイクと金髪のカツラを被っていたからだろう。
それに高さ9cmのハイヒールを履いていたから、身長的にも余計分からなかったから、直人を見てもナオミと同一人物とは気付くのは困難だと思われた。
なんにしても今日に限って吉田が㈱ウシに訪問していた、というちょっと危機的なアクシデントでした。
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