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最新テクノロジー溢れる社長会議室
しおりを挟む監視・スパイ、か。
妻の香織のことをそう思った反面、純は正に今の、
東京支店に出来たての内部統括グループこそが㈱ウシの監視・スパイでは、と考えていた。
先程の元営業の男性社員が指摘した経営企画本部の仕事では?
という思いを抱いているは、実は部署内の殆どの仲間も、そう思っている。
実際、相澤純にしても、元管理本部総務部IR・広報グループの資料室に入り浸りで、
昔の資料やら企画書、そして制作に携わったお取引業者との仕事内容等も調べていた。
だが、これは内部統括グループの上司である池田瞳からの指示や命令では決してなかったのは付け加える。
池田瞳からは、ただお題を頂いたまでだ。
池田瞳からの指示は
〈今一度、元いた部署で自分が携わった仕事内容や、部署自体で携わった仕事内容や案件を精査して頂き、
まずは一週間後までにまとめて皆に出来るだけ分かり易く発表して頂きたい〉
といった、指示というよりも正にお題と言った方が良いのでは。
一週間後に第一回目の元自分が所属していた部署の精査発表が丸一日行われた。
その発表の場は社長室隣の社長・役員専用会議室だ。
しかも、東京支店内に新しく出来た社長・役員会議室は、最新の設備が完備され、
大型スクリーンや、超大型モニターが何台もあり、席ごとにパソコンキーとマウス、
そしてイラストを描くことも出来るペンタブレット、そして最新のAIサーバーの扱いも出来、
VR機器や、最新のゲーム機器までが用意されていた。
そんな最新ITテクノロジーが溢れる会議室は誰も見たことも無いから、実は内部統括グループ発足初日で初めて訪れた時から、純もだが、他のメンバーも驚きと共に不思議な高揚感を味わっていたのだった。
そこにきて社長が
「ここの会議室の事は、余り、というか口外しないで頂きたい、
で、なるべく早く、ここの機材を存分に活用できるようにして頂きたい、
分からいことや専門的なことは、専門業者を呼んで頂いたり、研修を勝手に受講して結構だから、
なるべく早く習得し、活用してくれ、そして、
ここにある機材以外で必要な物があれば池田部長に相談してくれ」
と、まるで近未来人か、知的生命体との遭遇を味わったように圧倒されたのである。
そうして、最初の一週間後の元部署精査発表会が開催され、発表の合間に、
誰の発表が分かり易く伝えることが出来たのか、その都度皆でディスカッションし、
次の一週間後には最も分かり易く伝わったフォーマットを踏まえながらも、
もっと進化させることに、他のメンバーや純ものめり込んでいた。
不思議な高揚感と充実感を味わっている純ではあったが、家の中では妻の香織には一切話してはいなかった。
香織と言えば、未だに昔の現役同僚たちに連絡し合い、せっせと㈱ウシの情報収集をしているが、
その情報はもはやなんの精度も無いし、彼女たちのバイアスがかかった偏見の情報だから、相変わらず
「他部署と内部統括グループって乖離している状態なの?
貴方だけは他部署と上手くやってよ」
「ああ、分かってる」
純はネクタイを外し、スーツをから部屋着に着替えながら気の無い返事をしてしまい、
慌てて香織に向かってあの作り笑いを返した。
無論、香織にとっては爽やかイケメンに写っていたが。
「早く、元の部署に戻れればいいのにね」
香織は2ヶ月前まではその言葉とは真逆の
「ネガティブに捉えてどうするの?
そんな部署なら、自分の力で改革したらどうなのよ」
と叱咤激励していたのに、夫である純の言葉よりも、
元同僚仲間の女性社員の話しのほうを信じているのだから、
本人としてはちゃんとした思考を持つ性格と自負しているから始末が悪かった。
付き合い当初や新婚当初までは、純の話しを良く集中して(いるように?)聞いていて、
会話の比率でも純が7割、香織が3割だったのが、いつしか月日と共に香織が7割、純が3割と逆転し、
その比率が益々上がりそうだった。
あの頃は、あんなに素直だったのに、それとも最初から香織は猫を被り、計算高かったのかもしれない。
純が女性に求めていたおっとりとした性格で癒してくれる女性像を敏感に察知し、
出会い当初から化けていたのだろう。
純は今更ながら自分の女性を見る目、人を見る目のなさに笑うしか無かった。
それは身近の関連業者や、あの吉田にも言えることでもあった。
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