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無線応答無き練馬駐屯地!

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山手通りを渡り、板橋区に入ると、254の道路は、前ほどは放置車が多くは無く、ほぼ直線的に走行することが出来た。

【もうすぐ、練馬駐屯地に着きますよ!】
と吉田は言ったが、表情は硬かった。

無理も無い!

日比谷公園を脱出した時から、練馬駐屯地に無線の応答が無いから、だ。

私は、吉田にスマホで110番通報の際、コール音はしたが、出なかったことを話すと、吉田は

【電波区間を調整し出したからだ】

と言った。

本来であれば、スマホの場合、近くの交番に着信の筈で、出ない時には次の受付センターに、そして、次!しかし、そんなことは殆どあり得ないのだが、未曾有の事件?大規模な首都圏、直下型地震とかがあった場合は、一時的に不通になるか、規制が始まる。

らしい。

だから、自衛隊や警察、消防隊員はアナログ式の無線になっていたのだ。

多分!

山手通り・川越街道254号道路を時速40キロ位で走行していると、前方にボウリング場の建物が見え、もうそろそろ練馬駐屯地が見えようとする時に、254道路に簡易的な封鎖状態にするバリケードが置いてあり、と言っても道路工事等で見る黄色と黒のシマ縞の奴だ。

そして、そこには危惧したとおりの、惨状が目の前に広がっていた。

バリゲート付近には感染者の夥しい死骸?

殆どが射殺されていたが、バリゲート周辺には自衛隊員の死体も無数にあり、数人?数匹がまだ、虫の息だが、苦しそうに呻いていた。

もはや、助ける事も?出来ない。

助けようとして、彼ら?なのか!奴らなのかに触ったりでもしたら、完全防御服でも無い限り、ほぼ感染してしまい、人肉を食べる旅に出なくては成らなかった。

あの位なら、軽装甲車で突破!出来るだろう。

だが、無数にある感染者達の死体を踏み潰して走行しないといけない。

タイヤや外部に感染者の血液や体液が付着するのは免れなかった。

(バズーカー脱出時に既にタイヤには付着していると思うが)

254道路から、見える練馬駐屯地の建物の中は、所々、明かりが付いていた。

初めて観た時に、学校みたいな建物だな!と思った。

そして、その学校のような建物とこの辺りだけが、妙に明るく感じた。

それも、そうだろう。

今まで、約1時間30分位の間に、街灯や電灯?の光?電気をほぼ見てきていなかったのだし、軽装甲車も、無灯で走行していたから、暗闇には目が慣れてはいたが、久し振りに観た人工の明かり、電気に眩しさを凄く感じた。

吉田は私に目で合図?と言っても暗視ゴーグル越しに合図したような感じで見てから、徐行しながら、道路工事用のバリケードを倒し、横たわっている死体達を乗り越え、軽装甲車両が右左に揺れながら、人間だった感染者の身体を乗り越え、潰していった。

ときどき、ぐちゃっという音やバキッ!バキバキという音!グキグキっという音が聞こえ始め、当たり前だが、生理的に嫌な音だった。

吉田は、また、額から大量の汗をかいていた。

なんだか、吉田から汗の臭い!

しかも、強烈な腋臭(わきが)の臭いがして、出来れば窓を開けたかったが、どこで感染者が襲ってくるかも分からないから、必死に我慢した。

そう言えば、吉田は、よく見るとちょっと太っている感じだった。

(自衛隊員のくせに!身体を鍛えてないのかよ!なにやってんだ!)

その時、まじまじと見て思った。

徐行しながら、様々な障害物を軽装甲車は押しのけたり、倒したり、小障害物(主に両方の死体)を踏み潰したりしながら、なんとか突破し、数十メートル先の練馬駐屯地の門に辿りつき、左折した。

門には、中央に守衛さんが居る筈の守衛室があったが、当然!中には誰もいなかったが、来場者が記載する机みたいな所には、赤黒い液体が大量に広がっていて、ここでも惨状があった事が伺えた。

ラッキーだったのは、門の所に常備してある重々しいバリケードが開いてあったことだ。

吉田は、それを確認してから慎重に敷地内に入り、昭和の地方の学校のような!三階建ての建物の前に軽装甲車を停車した。

中央玄関口と二階の部屋が数カ所!

三階にも光が見えたが、感染していない人間の気配!は感じられなかった。
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