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第六話 【暴露】暴かれた想い。

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 伊藤君が病室に来て一時間ほどたったころ、陽花はるかに疲れの色が見えてきたため、お見舞いと言う名の束の間の同窓会は、お開きになった。

 私は、陽花に、また来週お見舞いに来ることを約束して、浩二と伊藤君と共に病室を後にした。

『久々だから、今から三人で飲み会でもしようや』との浩二の提案は、伊藤君の予定が合わなくて、実現ならず。

 正直、私は少しだけホッとしていた。

 このまま、伊藤君の側でお酒なんか飲んだ日には、どんな酔い方をするか、分かったものじゃない。きっと、悪酔いするに決まっている――。

「……なあ、亜弓」

 帰りの車中。病室でのはしゃぎっぷりが嘘のように沈黙していた浩二が、赤信号で止まったときに、不意に声をかけてきた。

 できれば今、話したくないんだけど。

 でも、さすがに無視するわけにもいかず、私は、助手席の窓から雨に霞む町並みを見るともなしに見つめながら「うん?」と、気のない返事をした。その私の反応に、浩二が一つ、長いため息を吐く。

『おいおい、浩二君、辛気くさいなぁ。ため息の数だけ、幸せが逃げていくそうよ』なんて、いつもなら滑るように出てくる軽口を叩く気力もない私は、ただ、浩二の次の言葉を待った。

「一つ、質問していいか、亜弓」

 その声にはいつになく真剣な響きがあって、私はゆっくりと窓の外から運転席の浩二の方へ視線を移した。

 私を見つめる浩二の眼差しも、今まで見たことがないくらい真剣そのものだ。

「お前、今の彼氏のこと、本気で愛しているのか?」
「……え?」

 何を、藪から棒に。
 そんなマジな顔をして冗談言っても、笑えないよ。

 そう言おうと思ったけど、言葉が出ない。

 浩二の目が、まるで嘘を見抜いてやるとでも言いたげに、恐いくらい真っ直ぐに私を見ていたから。

 なんで浩二は、こんな質問をするのだろう?

 今の私に、そんな質問に答えられる心の余裕なんか、これっぽっちもないのに。

「な……んで?」

 自分のモノとも思えないような、掠れた声が喉から絞り出される。

「単刀直入に聞く」
「……」
「お前、伊藤のこと、好きなのと違うか?」

 な!?

「なに言ってるのよ、馬鹿馬鹿しい!」

 あまりに鋭いツッコミに、私は思わず声を荒げてしまった。

「本当に、そう思ってるのか?」

「あ、当たり前よっ。伊藤君は、陽花の彼氏でしょ? ホント、冗談でもそんなこと言うのやめてちょうだい! それに、私、この前彼にプロポーズされたのよ。でっかいダイヤの婚約指輪も貰ったし、今度は彼のご両親にも会うことになってるの! 分かった!?」

 取り乱し過ぎて、思わず、弾丸トークしてしまった。

 これじゃ、後ろ暗いのが丸分かりじゃない。挙動不審も良いところだ。その辺を突っ込まれたら、なんて答えよう?

「そいつと、結婚するってか?」
「する!」

 あまりに意地の悪い言いようにむかっ腹が立って、思わず、勢いで断言してしまった。


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