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第四章 記 憶 《Memory-2》
73 迷い
しおりを挟む三十分ほどで、優花の心理リサーチは終わった。
リュウは、自分の執務室で一人、パソコンに呼び出した優花の検査データを整理していた。優花たち三人は、ひとまず地下二階の自室に戻っている。
どのみち、記録した検査データの整理後でなくては、はっきりとした超能力覚醒の兆しがあるかどうかの判断は付かないのだ。だがこれは、さほど急を要するような事ではない。
問題は、超能力の覚醒云々よりもむしろ、優花が『秘密にしたがっている件』の方だ。
ふう、と一つ大きなため息をつき、リュウは、パソコン画面に走らせていた視線を上げる。上げた視線は、デスクの上に飾ってある写真の上へと、吸い寄せられるように止まった。
写真は一年以上前に撮られたもので、三人の人物が笑顔で写っている。
美しい銀色の髪を持った、彼の敬愛してやまぬ女性を真ん中に、彼女の恋人でリュウの親友でもある晃一郎と、リュウ自身。今はもう、この世に居ないその女性の、けぶるような笑顔をじっと見やり、あきれたような呟きを落とした。
「――まったく、あの人は、何をやっているんだか……」
死んでまで、ボクを困らせるのか、君は。
『だって、リュウくん、仕方がないでしょ?』
腰に手を当てて、少女めいたしぐさで、悪戯っ子みたいな笑顔を浮かべる彼女のビジョンがリアルに脳裏に浮かび、リュウの口角が苦笑の形につり上がる。
「化けて出てくるなら、ボクのところにすればいいのに」
検査が終わり、結果が心配でたまらないという面持ちで、自分を見上げていた優花。彼女には、約束は守ると言ったが、これは。
「さて、どうしたものか……」
ポツリと落とされた低い呟きが、しんと静まり返った部屋の中に溶けていく。
イレギュラーである優花の、非合法な保護に手を貸すことを決めたときから今も、純粋にあの子を助けたい、という気持ちには変わりはない。
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嘘をつく相手が、たとえ親友の晃一郎でも、それは同じだ。だが――。
さすがに、この情報を晃一郎に隠しておいていいものか迷っていた。
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