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けがれ5
しおりを挟む吽形は、流れ出る熱も焼ける痛みも忘れ、駆け寄った。
賽銭箱の上に倒れ込んだ少年の体。力のないそれが、ずるりと落ちる所を咄嗟に抱き留め、阿形の爪にばさりと切られた白髪と、肩から頬に駆ける爪痕に手を当てた。
「主、そのままで。動いてはいけない」
「っ……」
少年の器に戻ったミヘビは、真っ青な顔で苦しそうに顔を歪めている。
「穢れがまわっている……主、気をたしかに。すぐ手当てと清めを行います」
少年神の細い体が真夏の中で凍えていく。
吽形は震えるミヘビを抱きあげると、社の中へ運び入れようとぱっと顔を上げた。
「……」
「……」
そこには、ぺたりと耳を伏せ、身を縮込ませる獅子の姿。
まるい目は大きく開かれ、じっと吽形を見つめている。
「どきなさい。阿形」
「……」
そう言い放つ吽形。目だけは何も語っていない。
阿形は身を低くし、扉の前から体を引きずるようにして下がった。
開いたそこをミヘビの体を抱いた吽形が、獅子の方をちらりとも見ずに、社の中へと入って行った。
ぽたり
ぽたたた……ぽたん
「吽形」
ぽたぽた
「なぁ、うーさん」
熱いものが阿形の頬を伝い、地へと染みを作る。
絶えず流れるそれは、裂けた頬と口から流れ出す。
流れるはずのない、紅い血だった。
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