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大公令嬢は様子を見ている
仲良くなってしまった
しおりを挟む魔法を使える者いうのは、どの小説設定でも王族貴族が多く魔力も強く、平民では出にくく魔力も弱い。
この世界もだいたいそれに則っているみたいだけど、平民からは毎年魔力持ちが出ないことはないし、貴族王族だからといって魔力を持って産まれないこともざらにある。
私の従兄弟、バングドリア王太子だってその1人。もっとも、魔力の有無は王位に関係ないので、彼は自国で頑張っているのだけれどね。
なんでこんなことを説明しているかと言うと、目の前に張り出されたクラス発表から現実逃避したかったからだ。
クラスはAからD。王族とその婚約者以外は4つある学科関係なく、純粋に実力順でクラス分けがされてある。とはいえ、王族も婚約者もそれぞれ完璧であれと教育されたものたちだ。最高ランクのAクラスに振り分けられても充分な実力はあるから問題は無い。
その中で……Aクラスの名簿に書かれていた一人の少女の名は異質だった。
「子爵以下の身分でAクラスは何年ぶりだ?」
「ハイジョーカーって先日のセレモニーでアンジェリナ様に突っかかっていた、あの?」
「親はああでも子供は優秀ってことか……」
「あぁ、羨ましい! 私だって殿下方とお近づきになりたいのに!」
レイン・ハイジョーカー。
彼女の名が、ハッキリとAクラスに記されていた。
「……ほんとに、同じクラスになっちゃった」
「誰かさんがあんなこと言うから、頑張っちゃったんじゃねーの?」
「……ぐぅ」
ユージーンからの鋭い視線がめちゃくちゃ痛い。仕方がないじゃないか、そうせざるおえないような気がしちゃったんだから!
「よーく覚えておけよアンジェ。世の中ではそういうのを、主人公効果と言います」
「知ってますぅ。知ってて引っかかったんですぅ! でも、本当にどうしよう。ストーリーが進んじゃったってことなんでしょ?」
「どうするったって.......こうなっちまった以上他の攻略対象と結ばれるようにするしか.......」
【雨の姫と7人の王子】のタイトル通りなら、ユージーンの他に少なくとも6人、攻略対象が居るわけだ。少なくとも、というのは、だいたいこういうゲームにはシークレットキャラが存在するだろう、という憶測から来ている。
「ねぇ、ほかの攻略対象って誰なの?」
「他? 俺以外だとヴィンスとグレイブ、リブラーヴァの王子と公爵の息子、カンツォプランツの双子.......」
「アンジェリナ様!」
突如、鈴のように可愛らしい声が響いた。揺れるピンクベージュと空色の瞳、彼女こそ今話題に上がっていたレイン・ハイジョーカーだ。
レインは透き通るくらい白い頬を紅くそめながら、私たちの元へかけてくる。
そう言えば、この声どこかで聞いたような.......?
「ユージーン殿下、ご機嫌麗しゅう.......アンジェリナ様! 私、同じクラスになれました! あの、あの.......これなら私、アンジェリナ様と仲良しさんなれますでしょうか.......」
はうぅ.......という声が彼女の口から漏れ出た瞬間、私はピシリと固まった。
なんてこと、まさか、この子の声は.......!
「ええ勿論です、せっかく同じクラスに慣れたのですから、仲良く致しましょうね!」
「おい!!」
横からユージーンのツッコミがはいるが、無視して彼女とブンブン手を振って握手する。
パァァァっと満開の笑顔を咲かせカーテシーをしレインが去っていくと、皇太子サマは私の頭をグリグリしだした。
「お前は鳥か? 鳥頭なのか?」
「だ、だってあのこの声! 私の大好きなアニメのヒロインの声だったんだもの!『さりあちゃん』だったんだもの!」
「このバカ!」
ひとしきりグリグリされたあと、できるだけ仲良くするな! と念を押されたものの。
それが無理な話なのは、火を見るより明らかだった。
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