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大公令嬢は様子を見ている
からかわれてしまった
しおりを挟むキィィィン!!
ラヴェール学園、西の演習場。
熱風が舞う中、2人の男女が剣を用いて手合わせをしていた。
「なかなかっ、やります、ねっ!」
炎魔法を操る紫色の髪をした美麗の青年は帝国騎士団長の息子グレイブ・セントメーカー。
そして、
「グレイブ様こそっ、本気を出して頂いてッ! 結構、ですっ、よ!」
風魔法を剣に纏わせ応戦しているのが、バングドリア大公令嬢アンジェリナ・ローズアリア。
つまり、私だ。
「さすがはバングドリアの英雄、アトラス様のお孫様ですね。6年見ない間に、随分ご成長なされたようだ」
「グレイブ様こそ、この学園では第2学年生でありながら最終学年生をも抑え騎士科でトップの成績を修めていらっしゃるとか。さすがですわ」
お手合わせありがとうございました。と、グレイブ様に頭を下げる。
独立戦争から次々に領土を広げた先代王とそれを支え女傑と呼ばれた皇太后、そして1番の戦果を上げ他国から悪魔と恐れられたバンクドリアの英雄、前騎士団長アトラスの血を引いているというのが、私とティターニアをバンクドリア最高峰の血筋と呼ぶ由縁である。
おかげで、私はお祖母様とおじぃ様から、社交界のアレコレと、剣さばきはみっちり仕込まれた。
(本当は騎士科か魔道士科に入りたかったんだけどなぁ)
王族とその婚約者はもれなく貴族科しか選べない。この世界の歴史、各国の文化、帝王学、マナーなどを重点的に学ぶ為だ。
「そう言えばアンジェリナ様、今日は第1学年のクラス発表があるとか」
「ああ、そうでしたわね!」
入学式の後、1週間はオリエンテーションを兼ねた適性試験が行われる。そこで魔力の大きさ、頭脳、社交能力を加味したクラス分けが行われ、1年間そのメンバーで過ごす。王族と婚約者はセキュリティの意味も含めAクラスと決まってしまっているけど、ほかにも成績が将来有望であるとAクラスになれるので、どんな子が来るのか楽しみなのだ。
「そう言えば.......聞きましたか? 10数年ぶりに男爵位の子がAクラスに入るのだそうですよ」
「げっ」
男爵位と言われて、1人の少女の顔が頭に浮かぶ。
『.......頑張ります!』
ピンクベージュのかわいい女の子。.......ほんとに、頑張っちゃったんだなぁ.......
「なんでも、学年で最高成績をたたき出したとか。ユージーン殿下がさっきそれを聞いて凄くご機嫌が悪くなりまして.......アンジェリナ様、なにかご存知ですか?」
「知ってるんでしょ.......聞かないでください.......」
「後輩をからかうのが、先輩の務めですよ?」
くすくすと笑いながら尋ねてくるグレイブ様に、私は頭を抱えた。
この人は騎士にしては物腰も柔らかく、優しい感じがするが、こうやってからかってくる方なのだ。ほんと、意地悪な先輩なんだから!
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