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episode 1
2. 襲撃
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初めて彼女が出来たのは中学二年の時だ。
そのときも女の子側からの告白で、彼女というものに憧れがあった佐久は二つ返事で承諾した。しかしそれから2週間後、彼女は『別れたい』と言い出したのだ。
原因は数日前にした初デート。映画を見に行くために待ち合わせをした駅前で、自分ではなく佐久が男にナンパされたことに甚くプライドが傷ついたというのだ。
『どうして私じゃなくて佐久くんがナンパされるの? おかしいでしょ⁉」
そんなのは佐久だっておかしいと思う。だけどそれを佐久に言ってもしょうがないじゃないか。……とは言えなかった。母親と三人の妹に英才教育を施された佐久は、いかんせん女の子に対して強く出ることが出来なかったのだ。
結局『私の方が絶対可愛いのに!』と憤慨する彼女に一言も言い返すこともできず、始めてのお付き合いは終了したのだ。
その次の彼女は高一のとき。友達の紹介で知り合った子だ。長い黒髪がきれいな子で、一目で佐久を気に入ったらしい彼女に押しに負けて付き合うようになった。だが二か月後、彼女は泣きながら佐久に言った。
「お兄ちゃんが佐久くんのことを好きになったって」
晴天の霹靂だった。
確かに彼女の家にはよく遊びに行っていたし、彼女の三つ上の兄とも仲良くしていた。だが、その兄が自分を好きになったとはどういうことだ?
茫然と言葉を失った佐久に、「もう佐久くんとは無理。お兄ちゃんと同じ男を取り合うなんて出来ない」と告げ、二人目の彼女は去って行った。
そして三人目の彼女は高校二年の夏。海の家でバイトする佐久を逆ナンしてきた大学生のお姉さんだ。
積極的で大人の魅力の溢れた彼女に佐久はすぐに惹かれ付き合い始めた。
しかしその二週間後――。
『私の部屋に遊びにおいでよ♡』と誘われ、友達からもらったコンドームなんかを一応カバンの奥底に忍ばせながらも訪れた一人暮らしの彼女の部屋。二人きりで甘い時間を過ごすのかと思いきや、佐久の想像を裏切り、部屋の中にはもう一人の男がいた。しかも佐久の二回りは大きいイカつい男だ。
この男は誰だろう。お兄さんとか? いや、それにしては顔が全然似てないし……。
と戸惑う佐久に、彼女はにっこり笑って告げた。
『この人は私の彼氏』
驚愕する佐久に、彼女はさらに衝撃の言葉を重ねていく。
『私と彼氏と佐久くんの三人で、セックスしよ♡ 初めて佐久くんを見たとき、3Pするならこの子だって彼氏がピンと来たみたいなの♡』
あまりにも恐ろしすぎる提案に、佐久は号泣しながら「それは無理ですごめんなさい」と叫び、命からがら逃げ帰ってきた。それ以来しばらくの間女性恐怖症になったのは言うまでもない。
思い出したくもない苦い過去の恋愛が脳裏を駆け巡り、佐久は苦悩の呻きをあげた。
前回の恐ろしい失敗があったので、今回はかなり慎重に行動したつもりだった。友達付き合いを経ての交際だったし、彼女の人となりは問題ないはずだった。付き合いも順調だったはずだ。きっとこれから彼女のことを好きになれる――、そう思っていたのに、三度目の正直を超えて四度目の失恋。
――佐久って女運がねえよな。
これまでの佐久の恋愛を知る友人にはよく言われる言葉だ。だけどここまで悲劇が続けば、それだけではないような気がしてくる。
もしかしたら自分には何か悪いモノが憑いているのではないだろうか……。悪霊とか呪いとか、そうじゃないと説明がつかない。お祓いかなにかした方がいいんじゃ……。
と頭を抱えたときだ。尻に奇妙な感覚が走り、佐久はびくんと震えた。
「ひっ……!?」
何かが……自分の尻に……触れている?
佐久は恐る恐る後ろを振り返る。
すぐ背後に男がしゃがみ込んでいた。
見たことのない男だ。そいつが、芝生に膝をついて上半身を伏せた佐久の背後に座り込み、両手を尻にそっと添えていたのだ。
男は真剣な顔で何度かさわさわっと尻全体を掌で撫でると、何かを確かめるようにむぎゅむぎゅっと佐久の尻を揉み、最後に感心したように呟いた。
「なんていいお尻なんだ」
そのときも女の子側からの告白で、彼女というものに憧れがあった佐久は二つ返事で承諾した。しかしそれから2週間後、彼女は『別れたい』と言い出したのだ。
原因は数日前にした初デート。映画を見に行くために待ち合わせをした駅前で、自分ではなく佐久が男にナンパされたことに甚くプライドが傷ついたというのだ。
『どうして私じゃなくて佐久くんがナンパされるの? おかしいでしょ⁉」
そんなのは佐久だっておかしいと思う。だけどそれを佐久に言ってもしょうがないじゃないか。……とは言えなかった。母親と三人の妹に英才教育を施された佐久は、いかんせん女の子に対して強く出ることが出来なかったのだ。
結局『私の方が絶対可愛いのに!』と憤慨する彼女に一言も言い返すこともできず、始めてのお付き合いは終了したのだ。
その次の彼女は高一のとき。友達の紹介で知り合った子だ。長い黒髪がきれいな子で、一目で佐久を気に入ったらしい彼女に押しに負けて付き合うようになった。だが二か月後、彼女は泣きながら佐久に言った。
「お兄ちゃんが佐久くんのことを好きになったって」
晴天の霹靂だった。
確かに彼女の家にはよく遊びに行っていたし、彼女の三つ上の兄とも仲良くしていた。だが、その兄が自分を好きになったとはどういうことだ?
茫然と言葉を失った佐久に、「もう佐久くんとは無理。お兄ちゃんと同じ男を取り合うなんて出来ない」と告げ、二人目の彼女は去って行った。
そして三人目の彼女は高校二年の夏。海の家でバイトする佐久を逆ナンしてきた大学生のお姉さんだ。
積極的で大人の魅力の溢れた彼女に佐久はすぐに惹かれ付き合い始めた。
しかしその二週間後――。
『私の部屋に遊びにおいでよ♡』と誘われ、友達からもらったコンドームなんかを一応カバンの奥底に忍ばせながらも訪れた一人暮らしの彼女の部屋。二人きりで甘い時間を過ごすのかと思いきや、佐久の想像を裏切り、部屋の中にはもう一人の男がいた。しかも佐久の二回りは大きいイカつい男だ。
この男は誰だろう。お兄さんとか? いや、それにしては顔が全然似てないし……。
と戸惑う佐久に、彼女はにっこり笑って告げた。
『この人は私の彼氏』
驚愕する佐久に、彼女はさらに衝撃の言葉を重ねていく。
『私と彼氏と佐久くんの三人で、セックスしよ♡ 初めて佐久くんを見たとき、3Pするならこの子だって彼氏がピンと来たみたいなの♡』
あまりにも恐ろしすぎる提案に、佐久は号泣しながら「それは無理ですごめんなさい」と叫び、命からがら逃げ帰ってきた。それ以来しばらくの間女性恐怖症になったのは言うまでもない。
思い出したくもない苦い過去の恋愛が脳裏を駆け巡り、佐久は苦悩の呻きをあげた。
前回の恐ろしい失敗があったので、今回はかなり慎重に行動したつもりだった。友達付き合いを経ての交際だったし、彼女の人となりは問題ないはずだった。付き合いも順調だったはずだ。きっとこれから彼女のことを好きになれる――、そう思っていたのに、三度目の正直を超えて四度目の失恋。
――佐久って女運がねえよな。
これまでの佐久の恋愛を知る友人にはよく言われる言葉だ。だけどここまで悲劇が続けば、それだけではないような気がしてくる。
もしかしたら自分には何か悪いモノが憑いているのではないだろうか……。悪霊とか呪いとか、そうじゃないと説明がつかない。お祓いかなにかした方がいいんじゃ……。
と頭を抱えたときだ。尻に奇妙な感覚が走り、佐久はびくんと震えた。
「ひっ……!?」
何かが……自分の尻に……触れている?
佐久は恐る恐る後ろを振り返る。
すぐ背後に男がしゃがみ込んでいた。
見たことのない男だ。そいつが、芝生に膝をついて上半身を伏せた佐久の背後に座り込み、両手を尻にそっと添えていたのだ。
男は真剣な顔で何度かさわさわっと尻全体を掌で撫でると、何かを確かめるようにむぎゅむぎゅっと佐久の尻を揉み、最後に感心したように呟いた。
「なんていいお尻なんだ」
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