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第8章
第267話
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教会へと訪れた患者さんたちの治療を終えた俺や姉さんたちは、エマさんやリムリットさんたち、子供たちやミストラルたちと一緒に夕食を楽しんでいる。食事については、孤児院に行く前にお土産として買い込んでいた、色々な料理も提供させてもらっている。
エマさんやリムリットさんたち大人組は、俺たちが提供した料理の中にメリオスの有名店の料理が混じっている事に気付き、興奮に喜び、それから驚きが混じった様子で料理を食べている。対する子供たちの方は、有名店の料理だとか関係なく、食卓に沢山の美味しそうな料理が並べられている事に大喜びして、皆笑顔を浮かべて美味しい美味しいと食べている。
子供たちやミストラルたちは美味しい料理を食べながら、天星祭一日目の出来事を俺や姉さんたちに語ってくれた。男の子たちは、射的や輪投げなどで色々な出店で遊び、色々な景品を手に入れた事を俺に語ってくれた。そして女の子たちは、出店で買った綺麗で可愛いデザインの小物類を見せたり、洋服店に飾られていた、天星祭に合わせて作られたドレスなどについて姉さんたちに語っていた。
「何にせよ、一日目は何事もなかった様で良かったよ」
『住民の皆さんのは、私たちにも良くしてくださいました』(ミストラル)
『美味しい物を、食べさせたり飲ませてくれたんだ~』(フェデルタ)
『ただ残念な事に、私たちや子供たちに悪意を向けてくる者たちもいました。ですが、それはごく一部の者たちでしたし、特に何かをしてくる事もありませんでした』(リベルタ)
「そうか。明日も出掛けると思うけど、そういった奴らが何かしない様に、子供たちの事を注意して見て上げてくれ」
『はい、任せてください』(ミストラル)
『子供たちは私たちが守ります』(リベルタ)
『子供たちを苛める奴は、僕らが許さないよ』(フェデルタ)
ミストラルたちの存在自体は、かなり前からメリオスの住人たちも知っているからな。そして、メリオスの住人にも色々な人がいる。陽の当たる道を真っ当に生きてきた者もいれば、陰に潜んで脛に傷を持つ生き方をしてきた者もいる。恐らくだが、悪意を向けてきたごく一部の者たちは後者なのだろう。
そして問題は、その悪意はどこに向けられたのかという事だ。子供たちなのか、ミストラルたちなのか、もしくはその両方の可能性すらもある。ミストラルたちが護衛として十分な性能を有しているとはいえ、想定外の事態というのは誰にでも起こりうる。防犯ブザーの魔道具だけでなく、子供たちが直接的に身を守れるような魔道具も必要かもしれない。また時間のある時にでも、サリエル様たちと相談してみよう。
その後は楽しく食事を続けていたが、お腹一杯になった子供たちはお眠の時間となったので、ミストラルたちと一緒に部屋に戻っていった。残った大人組は美味しい料理を楽しみながら、今日の治療についての事を話し始めた。
「皆さん、今日はお手伝いいただきありがとうございました」(エマ)
「レイアたちのお蔭で、私たちの負担がかなり減ったし、多くの人たちを癒すことが出来たよ。助かったよ」(リムリット)
『ありとうございました』(シスター・司祭)
「いや、気にしなくていい。私たちも普段お世話になっているしな。それに友人が忙しそうにしているのに、自分たちだけ天星祭を楽しむなんて薄情な事はしない」(レイア)
「そうですよ。それに、メリオスの人たちの為にと頑張っている皆さんをお手伝いするくらい、私たちにとっては苦じゃありませんよ。これでも私たち、高位冒険者ですからね」(リナ)
姉さんやリナさんの言葉に、リムリットさんやエマさんたちが深々と頭を下げて一礼する。各宗派のシスターや司祭たちは、それぞれ異なる神や宗教を信仰し、各々の教義に従って日々の生活を送っている。そんな宗派の異なる者たちではあるが、どんな宗派であろうとも共通している教義がある。それが、癒しの力でもって迷える者たちを救いなさいというものだ。
戦神などの戦いを司る神々だろうが、農耕などの生産を司る神々だろうが関係なく、善神側に属する全ての神々は、太古の時代から信徒にそれを求めた。そのため各宗派の教会や神殿に属する者たちは、幼少の頃から回復魔術を学び、教会や神殿を訪れる患者さんを癒していく。
クトリちゃんたちの様な孤児の子たちも、成人年齢となる十五歳までは教会で色々な事を学びながら、エマさんたちと同じ様に多くの者たちを癒していくのだろう。リムリットさんに以前聞いた所によると、孤児の子たちが十五歳になった時に、自分たちと同じ道に進むのか、それとも自分の決めた道に進むのかを聞くのだそうだ。その時に、シスターや司祭の道を選ぶ子もいれば、冒険者や商人などの道を選ぶ子もいる。
そしてリムリットさんたちは、孤児の子たちがどの道を選んでも生きていける様にと、自分たちの知識や経験を孤児の子たちに惜しみなく授けている。そのお蔭なのかせいなのか分からないが、年齢にしては大人びている子が多く、女の子はエマさんに似てきており、男の子はリムリットさんに似てきている。女の子たちの方は、将来器量良しの子たちになるだろう想像出来るが、男の子たちの方の将来はとても心配だ。
そんな事を考えていると、俺の助手として力を貸してくれていたシスターが、傍に近寄ってきていた。彼女はもの凄く楽しみで、期待する様子を見せている。
「カイルさん、施術の方は何時頃お願い出来ますか?」(シスター)
「食事の方はもう大丈夫なんですか?」
「はい。しっかりといただきましたから」(シスター)
「それじゃあ、今から始めましょうか」
「何だ?何かやるのか?」(レイア)
「整体だよ。シスターも疲れが溜まってるからね。皆さんもどうです?」
「いいのかい?」(リムリット)
「ええ、問題ありませんよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて受けさせてもらおうかね」(リムリット)
俺とシスターは席を立ち、食堂の直ぐ傍の中庭へと移動する。そして、中庭に即席の診察台を無属性の魔力で作り出し、シスターに横になってもらう。シスターやリムリットさんたちに行う施術は、ラトスさんの様に整体による本格的な治療の施術ではなく、身体に溜まっている疲労などを癒すマッサージにする予定だ。
今から行う施術は、疲労を癒す事を主目的としたマッサージ。CTスキャンの魔術は使わず、二日酔い醒ましの術式を応用した回復魔術のみで、マッサージを始めていく。シスターは今日一日殆ど立ち仕事だったようなので、腰から下を重点的にマッサージしていく。
全体的に筋肉が凝り固まっているが、特に腰・お尻・太もも・ふくらはぎなどに疲労が集中しているのが分かる。まずは腰から筋肉をほぐしていき、順番に下に向かって筋肉をほぐしていく。そして各部の血流を促進して緩め、凝り固まった筋肉をほぐした後に、もう一度回復魔術をかけて筋肉そのものも癒していく。
「見ていた時も凄かったですが、実際に体験するとその凄さが一段と分かります。あんなに重かった腰や脚が、羽が生えていた様に軽くなっています。今ならラトスさんがあれだけ感謝していた理由が分かります」(シスター)
「そう言っていただけると嬉しいです」
シスターは笑顔を浮かべながら、その場でぴょんぴょんと跳び跳ねて身体の調子を確かめる。その様子を興味津々に見ていたリムリットさんたちは、軽やかな動きをするシスターの姿に驚いている。
「カイルさん、ありがとうございました」(シスター)
「いえいえ」
疲れが取れたシスターは俺に一礼し、ニコニコと笑顔を浮かべながら自室へと歩いていく。それを見送り、さて次は誰かなと食堂の方を振り返ったら、真っ直ぐな綺麗な縦の線になって並ぶ人の列があった。
「…………皆さん、立って待っていると疲れますから、これに座って談笑でもして待っていてください」
俺はカフェで順番待ちをしていた時に生み出した、性質を変化させた水で作った柔らかい椅子を人数分用意し、待ち時間を談笑でもして過ごしてもらう様に促す。
だがリムリットさんやエマさんたちは、最初は座るのを躊躇っていた。どうやら、マッサージをタダでやってくれるというのに、その上自分たちだけが寛いでいるのはどうかと思ったみたいだ。だがそんな遠慮は、姉さんたちの無遠慮によってぶち壊される。
姉さんたちは、この場の誰よりも先に水の椅子へと座って寛ぎ始めたのだ。それを見たリムリットさんが、姉さんたちに続いて水の椅子に座った事で、エマさんたちも水の椅子に座ってくれた。さらに姉さんたちが積極的に話題を振って、リムリットさんたちとの談笑を始めてくれた。
こういった時には、姉さんたちは本当に頼りになる。自然と人の輪を作り出し、賑やかで笑みがこぼれる空間にしてくれるんだからな。俺は心の中で姉さんたちに感謝しながら、次の患者さんである司祭のマッサージを始めた。
エマさんやリムリットさんたち大人組は、俺たちが提供した料理の中にメリオスの有名店の料理が混じっている事に気付き、興奮に喜び、それから驚きが混じった様子で料理を食べている。対する子供たちの方は、有名店の料理だとか関係なく、食卓に沢山の美味しそうな料理が並べられている事に大喜びして、皆笑顔を浮かべて美味しい美味しいと食べている。
子供たちやミストラルたちは美味しい料理を食べながら、天星祭一日目の出来事を俺や姉さんたちに語ってくれた。男の子たちは、射的や輪投げなどで色々な出店で遊び、色々な景品を手に入れた事を俺に語ってくれた。そして女の子たちは、出店で買った綺麗で可愛いデザインの小物類を見せたり、洋服店に飾られていた、天星祭に合わせて作られたドレスなどについて姉さんたちに語っていた。
「何にせよ、一日目は何事もなかった様で良かったよ」
『住民の皆さんのは、私たちにも良くしてくださいました』(ミストラル)
『美味しい物を、食べさせたり飲ませてくれたんだ~』(フェデルタ)
『ただ残念な事に、私たちや子供たちに悪意を向けてくる者たちもいました。ですが、それはごく一部の者たちでしたし、特に何かをしてくる事もありませんでした』(リベルタ)
「そうか。明日も出掛けると思うけど、そういった奴らが何かしない様に、子供たちの事を注意して見て上げてくれ」
『はい、任せてください』(ミストラル)
『子供たちは私たちが守ります』(リベルタ)
『子供たちを苛める奴は、僕らが許さないよ』(フェデルタ)
ミストラルたちの存在自体は、かなり前からメリオスの住人たちも知っているからな。そして、メリオスの住人にも色々な人がいる。陽の当たる道を真っ当に生きてきた者もいれば、陰に潜んで脛に傷を持つ生き方をしてきた者もいる。恐らくだが、悪意を向けてきたごく一部の者たちは後者なのだろう。
そして問題は、その悪意はどこに向けられたのかという事だ。子供たちなのか、ミストラルたちなのか、もしくはその両方の可能性すらもある。ミストラルたちが護衛として十分な性能を有しているとはいえ、想定外の事態というのは誰にでも起こりうる。防犯ブザーの魔道具だけでなく、子供たちが直接的に身を守れるような魔道具も必要かもしれない。また時間のある時にでも、サリエル様たちと相談してみよう。
その後は楽しく食事を続けていたが、お腹一杯になった子供たちはお眠の時間となったので、ミストラルたちと一緒に部屋に戻っていった。残った大人組は美味しい料理を楽しみながら、今日の治療についての事を話し始めた。
「皆さん、今日はお手伝いいただきありがとうございました」(エマ)
「レイアたちのお蔭で、私たちの負担がかなり減ったし、多くの人たちを癒すことが出来たよ。助かったよ」(リムリット)
『ありとうございました』(シスター・司祭)
「いや、気にしなくていい。私たちも普段お世話になっているしな。それに友人が忙しそうにしているのに、自分たちだけ天星祭を楽しむなんて薄情な事はしない」(レイア)
「そうですよ。それに、メリオスの人たちの為にと頑張っている皆さんをお手伝いするくらい、私たちにとっては苦じゃありませんよ。これでも私たち、高位冒険者ですからね」(リナ)
姉さんやリナさんの言葉に、リムリットさんやエマさんたちが深々と頭を下げて一礼する。各宗派のシスターや司祭たちは、それぞれ異なる神や宗教を信仰し、各々の教義に従って日々の生活を送っている。そんな宗派の異なる者たちではあるが、どんな宗派であろうとも共通している教義がある。それが、癒しの力でもって迷える者たちを救いなさいというものだ。
戦神などの戦いを司る神々だろうが、農耕などの生産を司る神々だろうが関係なく、善神側に属する全ての神々は、太古の時代から信徒にそれを求めた。そのため各宗派の教会や神殿に属する者たちは、幼少の頃から回復魔術を学び、教会や神殿を訪れる患者さんを癒していく。
クトリちゃんたちの様な孤児の子たちも、成人年齢となる十五歳までは教会で色々な事を学びながら、エマさんたちと同じ様に多くの者たちを癒していくのだろう。リムリットさんに以前聞いた所によると、孤児の子たちが十五歳になった時に、自分たちと同じ道に進むのか、それとも自分の決めた道に進むのかを聞くのだそうだ。その時に、シスターや司祭の道を選ぶ子もいれば、冒険者や商人などの道を選ぶ子もいる。
そしてリムリットさんたちは、孤児の子たちがどの道を選んでも生きていける様にと、自分たちの知識や経験を孤児の子たちに惜しみなく授けている。そのお蔭なのかせいなのか分からないが、年齢にしては大人びている子が多く、女の子はエマさんに似てきており、男の子はリムリットさんに似てきている。女の子たちの方は、将来器量良しの子たちになるだろう想像出来るが、男の子たちの方の将来はとても心配だ。
そんな事を考えていると、俺の助手として力を貸してくれていたシスターが、傍に近寄ってきていた。彼女はもの凄く楽しみで、期待する様子を見せている。
「カイルさん、施術の方は何時頃お願い出来ますか?」(シスター)
「食事の方はもう大丈夫なんですか?」
「はい。しっかりといただきましたから」(シスター)
「それじゃあ、今から始めましょうか」
「何だ?何かやるのか?」(レイア)
「整体だよ。シスターも疲れが溜まってるからね。皆さんもどうです?」
「いいのかい?」(リムリット)
「ええ、問題ありませんよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて受けさせてもらおうかね」(リムリット)
俺とシスターは席を立ち、食堂の直ぐ傍の中庭へと移動する。そして、中庭に即席の診察台を無属性の魔力で作り出し、シスターに横になってもらう。シスターやリムリットさんたちに行う施術は、ラトスさんの様に整体による本格的な治療の施術ではなく、身体に溜まっている疲労などを癒すマッサージにする予定だ。
今から行う施術は、疲労を癒す事を主目的としたマッサージ。CTスキャンの魔術は使わず、二日酔い醒ましの術式を応用した回復魔術のみで、マッサージを始めていく。シスターは今日一日殆ど立ち仕事だったようなので、腰から下を重点的にマッサージしていく。
全体的に筋肉が凝り固まっているが、特に腰・お尻・太もも・ふくらはぎなどに疲労が集中しているのが分かる。まずは腰から筋肉をほぐしていき、順番に下に向かって筋肉をほぐしていく。そして各部の血流を促進して緩め、凝り固まった筋肉をほぐした後に、もう一度回復魔術をかけて筋肉そのものも癒していく。
「見ていた時も凄かったですが、実際に体験するとその凄さが一段と分かります。あんなに重かった腰や脚が、羽が生えていた様に軽くなっています。今ならラトスさんがあれだけ感謝していた理由が分かります」(シスター)
「そう言っていただけると嬉しいです」
シスターは笑顔を浮かべながら、その場でぴょんぴょんと跳び跳ねて身体の調子を確かめる。その様子を興味津々に見ていたリムリットさんたちは、軽やかな動きをするシスターの姿に驚いている。
「カイルさん、ありがとうございました」(シスター)
「いえいえ」
疲れが取れたシスターは俺に一礼し、ニコニコと笑顔を浮かべながら自室へと歩いていく。それを見送り、さて次は誰かなと食堂の方を振り返ったら、真っ直ぐな綺麗な縦の線になって並ぶ人の列があった。
「…………皆さん、立って待っていると疲れますから、これに座って談笑でもして待っていてください」
俺はカフェで順番待ちをしていた時に生み出した、性質を変化させた水で作った柔らかい椅子を人数分用意し、待ち時間を談笑でもして過ごしてもらう様に促す。
だがリムリットさんやエマさんたちは、最初は座るのを躊躇っていた。どうやら、マッサージをタダでやってくれるというのに、その上自分たちだけが寛いでいるのはどうかと思ったみたいだ。だがそんな遠慮は、姉さんたちの無遠慮によってぶち壊される。
姉さんたちは、この場の誰よりも先に水の椅子へと座って寛ぎ始めたのだ。それを見たリムリットさんが、姉さんたちに続いて水の椅子に座った事で、エマさんたちも水の椅子に座ってくれた。さらに姉さんたちが積極的に話題を振って、リムリットさんたちとの談笑を始めてくれた。
こういった時には、姉さんたちは本当に頼りになる。自然と人の輪を作り出し、賑やかで笑みがこぼれる空間にしてくれるんだからな。俺は心の中で姉さんたちに感謝しながら、次の患者さんである司祭のマッサージを始めた。
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