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第8章

第264話

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 カフェで美味しいケーキと紅茶を心から楽しんだ後、姉さんたちおすすめの料理屋などを巡って、沢山の美味しい料理を楽しんだ。どこのお店もカフェと同じく有名店ばかりで、どこも姉さんたちが常連として訪れているお店だった。普段姉さんたちが結構な金額を散財しているのか知ってはいたが、あれ程レベルの高い料理を食べているのなら、お金が直ぐに無くなっていくのも納得だ。
 ある程度料理やお菓子を楽しんだ現在、リムリットさんやエマさん、それから子供たちやミストラルたちがいる教会と孤児院に向けて、俺と姉さんたちは足を進めていた。皆の為のお土産も、カフェや料理屋、それから屋台の料理など色々と買ってある。子供たちやミストラルだけでなく、リムリットさんやエマさんたちも喜んでくれるといいな。
 そんな事を思いながら歩き続け、教会と孤児院まであと少しの所までくると、子供たちの喜びの声が聞こえてくる。それから、楽し気にはしゃぐ子供たちに声を掛ける、お父さんとお母さんといった家族の声も聞こえてくる。そして、何時も遊びに来る近所のお爺さんやお婆さんたちの、元気で優しい声も聞こえてくるな。
 聞こえてくる声の感じからは、エマさんたちが考えたミストラルたちとメリオスの住人との触れ合いは、今の所は問題もなく好評の様だ。その事に、内心でホッと安堵の息を漏らす。

「問題もなく上手くやっている様だな」(レイア)
「うん、安心したよ。後はリムリットさんやエマさんたちに、ミストラルたちのお昼までの様子を聞いておかないと」

 俺たちがここに来るまでに、何かしらの問題があったかどうかを確認しておかなくては。もし何かしらの問題が俺たちが来るまでに起こっていたとしたら、その子たちの精神面のケアをしなくてはいけない。
 ミストラルたちは、明確な自我や個性を持ち始めてから長い時間が経っている訳ではない。基礎的な身体能力や豊富な魔力量、それに多種多様な魔術を使う事が出来て戦闘能力は非常に高いものの、精神的にはまだまだ幼い。それから顔見知りの人たち以外と長時間触れ合うのも初めてだから、ミストラルたちにどんな影響が出ているのか分からない。じっくりと時間をかけて話をして、ミストラルたちとしっかりと意思疎通をしておかないといけない。

「あら、カイルさん。それにレイアさんたちも。皆さん、天星祭を楽しんでますか?」(エマ)
「朝から色々な所を巡って、美味しいものを一杯食べました」
「エマや子供たちの方はどうだ?皆休憩や食事の時間は、しっかり取れてるのか?」(レイア)
「私たちの休憩時間や交代時間は確保していますし、ミストラルたちとの触れ合いに関しても同様です。なので、その辺は大丈夫ですよ」(エマ)
「そうか、それならいい。午後からも気を付けろよ」(レイア)
「はい」(エマ)
「これ、私たち全員からのお布施ね。少ないかもしれないけど、教会や孤児院の運営に使ってちょうだい」(リナ)
「ありがとうございます。皆さん、どうぞこちらを受け取ってください。子供たちと一緒に作ったお菓子です。美味しいですよ」(エマ)
「ありがとう」(レイア)
「美味しそうね」(リナ)
「ああ、美味そうだ」(モイラ)
「来年は一緒に作るのもいいかもね」(ユリア)
「それは名案。子供たちもきっと喜んでくれる」(セイン)
「いや、それは止めておいた方が…………」

 姉さんたちの料理の腕を知っている俺は、クトリたちを泣かせてしまったり、無暗に被害者を増やさないためエマさんに警告しようとする。だがその警告をエマさんに告げようとする途中で、姉さんたち全員からその口を閉じて黙れという圧を放たれてしまい、残念ながら口にチャックせざるを得なかった。
 来年、もし本当に姉さんたちの作ったお菓子を口にした運の悪い被害者には、大変申し訳ない気持ちを抱きつつ心の中で合掌しておく。それと同時に、これがフラグとなって運の悪い被害者に俺が含まれる事がない様に、癒しと豊穣を司る女神であるダモナ神に祈っておく。
 そして朗らかな人であるエマさんが、姉さんたちの提案を聞いてどう答えるのかは分かり切っている。普段から姉さんたちとの交流もあり、非常に仲が良い友達である事も知っている。そんな仲の良い友達が手伝ってくれるという事に、エマさんは花が咲くような華やかな笑顔を浮かべて、テンション高く姉さんたちに返事を返す。

「それはいいですね!!もし都合が合う様でしたら、来年はお願いしたいです」(エマ)
「ああ、安心して任せておけ」(レイア)
「ふふふ、楽しみにしておきますね」(エマ)
「じゃあ、私たちは子供たちの方に行ってくる。また後でな」(レイア)
「はい。また後で」(エマ)

 俺たちはエマさんに一旦別れを告げて、子供たちやミストラルたちのいる孤児院へと足を進める。孤児院へと近づいていく事に、子供たちやその両親であるお父さんやお母さん、近所のお爺さんやお婆さんたちの、和やかで楽し気な声が大きく聞こえてくる。そして、そんな声と一緒にミストラルたちの楽し気な声も聞こえてくる。ミストラルたちも機嫌が良い様で安心した。
 そんな和やかな空間となっている孤児院の中へ、俺たちは足を踏み入れる。最初に俺たちに反応したのは、感知能力の高いミストラルたちだ。そして、その次が孤児院の子供たちだ。ミストラルたちや子供たちはニコニコとした笑顔を浮かべながら、俺や姉さんたちに向かって駆け寄ってきたり、フワフワと空を飛びながら近寄ってきてくれる。
 周囲に集まってくれた、笑顔を浮かべるミストラルたちや子供たちの頭を、一人一人優しく撫でていく。ミストラルたちは甘えた鳴き声を出し、子供たちもえへへと笑ってくれた。

「皆、もうお昼は食べたのか?」(レイア)
「うん、ちゃんと食べたよ」(クトリ)
「休憩もちゃんと取ってる?無理してたり、体調の悪い子はいない?」(リナ)
「皆元気だから大丈夫だよ」(ロッシ)
「カイル兄ちゃん、ミストラルたちが健康かどうか診てあげてよ」(マニーニャ)
「お昼になるまでに何か問題があったのか?」
「それは大丈夫。何も問題はなかったよ。でも何時もより沢山の人と触れ合ってたから、ミストラルたちの身体に変な事が起きていないか心配で……」(マニーニャ)
「分かった。今から皆の身体の状態を診てみるよ」
「カイル兄ちゃん、ありがとう」(マニーニャ)

 俺はミストラルたちの身体の状態を調べたり、精神状態を確認する事を始めた。今日の朝からの触れ合いをどう感じたのかとか、俺やエマさんたちの事を考えて本当に無理をしていないかと、色々と優しく声をかけながら聞いていく。
 幸いにも、ミストラルたちは心の底から触れ合いに楽しさを見出しており、精神面においては問題なさそうだった。それから、メリオスの住人は皆良い人ばかりだった様で、身体の方にも特に問題はなかった。まあ幼児たちには、スライムのプニプニとした身体や、尻尾や翼、それに角なんかを引っ張られたそうだ。それでも相手が幼い子供で、守るべき存在である事はミストラルたちも分かっていたので、特に抵抗する事なく好きにさせていた様だ。
 幼児の両親や周囲の人たちも最初は止めようとしていたが、ミストラルたちがそれを止めた事と、幼児たちの屈託くったくのない笑顔に癒されて、皆してニコニコと笑顔を浮かべて見守っていた様だ。確かに幼児たちの屈託のない笑顔を見たら、その場がのほほんとした和やかな空間に早変わりするのは、誰であっても想像にかたくないだろう。
 ミストラルたちもメリオスの住人たちと触れ合い交流する事で、精神的に一回り大きくなった様に感じてしまう。まあそう感じるのは、俺が親バカだからなのかもしれないがな。だがそれくらい、たった半日でミストラルたちが急成長した様に見えてしまうのだ。ミストラルたちは、この半日の出来事を嬉しそうに語ってくれる。そんなミストラルたちの頭を一人一人順々に撫でてあげながら、皆が成長した事を心から喜んだ。
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