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第7章
第202話
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「俺自身が力を解放するなんて、ヘクトルやルイス、それに肩を並べる高位の連中との、殺し合い以来だ。誇っていい。お前は、あの怪物たちと、――同じ領域にいる。……だからこそ全力で、お前との闘争を楽しませてもらう。――――《怪力乱神・〖紅角戦鬼〗》」(アッシュ)
アッシュの身体の奥底、魂から、暴れ狂う巨大な力と魔力が解放され、勢いよく溢れ出してくる。その暴れ狂う巨大な力と魔力の影響で、深みのある、美しい暗緑の織部色の肌が、胸部、心臓の位置を中心にして、錆色の肌に変化していく。さらに、額の中央にある、細長い円錐状の灰色の角が、金砕棒と同じ様に、根元から先端にかけて、唐紅に染めていく。
変化を終えたアッシュは、ニヤリと口角を上げて笑う。放つ威圧感・荒々しい魔力によって、俺の肌が、ピリピリと刺激される。ここまで強力な、圧と魔力を浴びせられるのは、ヘクトル爺やルイス姉さんたちや、里の狩人たちとの鍛錬、魔王種に存在進化したオーガ、その中に潜んでいた悪神など、数少ない存在だけだ。
〈改めて思うが、こいつは本当に、ヘクトル爺やルイス姉さん並みの、歴戦の強者だ〉
「さあ、宴の始まりだ‼」(アッシュ)
一瞬の内にアッシュの姿が掻き消えて、次の瞬間には、俺の懐に入り込まれており、金砕棒を右切り上げで、下からすくい上げる様に振るってくる。その一振りを、最小限の動きで避けようとするが、そう簡単にいかせてくれない。金砕棒の先端から、金砕棒を模した、魔刃と同質の魔力の塊が伸びて、顔面に襲い掛かって来る。
迫り来る、金砕棒を模した魔力を、その場で背中を反らして避ける。そのままバク転して後方に移動し、反撃を仕掛けようとするも、既にアッシュはその場にいない。
〈どこに?――――上か‼〉
限界まで広げ、精度を高めていた魔力感知の範囲内で、アッシュの荒々しい魔力を捉え、位置を正確に把握する。アッシュは、俺の頭上でクルリと回転して、上下の体勢を反転させる。そして、足場代わりの魔力障壁を展開し、膝を曲げて力を溜めて、それを一気に開放して加速し、斜めに急降下してくる。
荒々しい魔力が、金砕棒に急速に圧縮され、まるで燃え上がり、温度が急上昇しているかの様に、金砕棒全体を染める唐紅が、濃く輝いていく。金砕棒に籠められている、魔力の質と量から考えても、振り下ろされる一撃の威力は、計り知れないものだと予想出来る。
急降下しながら、アッシュが金砕棒を振りかぶり、全身に力を溜めて、目にも止まらぬ速さで、振り下ろしの一撃を放ってくる。その一撃に対して、俺も刀身に魔力を籠め、圧縮して強化する。そして、打刀を上段で構え、アッシュの振り下ろしの一撃に合わせて、唐竹割りの一振りを放つ。
「――――――‼」
「――――――ウラァ‼」(アッシュ)
加速の力を上乗せした、金砕棒の強力な一撃に、押し込まれてしまう。地面を抉りながら、身体が後ろに下げられながらも、その強力な一撃を受け続ける。すると、押し込んでいるはずなのに、アッシュが金砕棒をサッと引く。次の瞬間に、破壊の嵐が襲い掛かってきた。
目にも止まらぬ速さで、縦横無尽に振り抜かれる金砕棒。迫り来る破壊の嵐に対して、俺が選択したのは、防御ではなく攻撃だ。攻撃こそ最大の防御ではないが、ここは、受け止め、受け流す事で凌ぐのではなく、真っ向から打ち合う事で、この破壊の嵐を消し飛ばす。
様々な角度・軌道で振られる金砕棒に対して、鏡に映した様に、逆の角度・軌道で打刀を振るい、真っ向から打ち合っていく。一撃一撃、打ち合っては互いの得物が弾かれながらも、その一瞬後には、互いに次の攻撃を放っている。一撃を放つごとに、速度と威力が上っていく。
「ハハハハ‼滾る、滾るぞ‼」(アッシュ)
アッシュの昂ぶりに合わせて、さらに魔力が高まっていく。その高まりによって、互角だった打ち合いが、再び押し込まれていき、劣勢に立たされる。このままの状態が続くと、そう遠くない内に、確実に一撃をもらう事は間違いない。
際限なく力を高めていくアッシュと、対等に渡り合うために、こちらも魔力制限を解除して、もう一段階上の領域へと、俺の力を高めなければならない。アッシュとの打ち合いを続けながら、自分自身に施した、魔力制限術式に意識を集中する。
メルジーナ国を守るために、術士相手に、第二階梯まで制限を解除したが、目の前にいる歴戦の戦士、遥か昔から生き残ってきた、戦いに生きてきた鬼だ。圧倒的強者であり、高位存在の者たちと肩を並べる存在であり、ヘクトル爺やルイス姉さんたちと、同じ領域に立っている者。
そんな女傑相手に、第二階梯程度まで解除した所で、俺の攻撃が届き得るとは思えない。今のアッシュは、全力を出せる状態ではあっても、完全に力を出し切っている訳ではないからだ。こうしている今ですらも、魔力がジワジワと高まっていっている。
〈そんな怪物たちと、真正面からやり合うためには…………〉
「魔力制限術式、第一・第二・第三階梯解除」
「ほう‼まだそんな余力を残していたか‼」(アッシュ)
身体の奥底、魂から、超濃密な魔力が、止まることなく溢れ出してくる。その魔力を、身体全体に滑らかに循環させ、そのまま一気に圧縮し、身体能力・機能を強化する。筋肉・筋線維・骨などを強化し、細胞を活性化させ、各臓器の働きを高め、各感覚器官を極限まで研ぎ澄ませる。
だが、この程度の強化では、まだまだ足りない。だからこそ、もう一歩踏み込んで、更なる段階へと引き上げる。
「魔力制限術式、第四階梯解除」
さらにもう一段階、制限術式を解除する。無限に湧き上がって来るかの様に感じる、その超濃密な魔力を、心臓に集中させて圧縮。これで、アッシュという高き壁を、乗り越える準備が整った。
激しい打ち合いの最中であろうとも関係なく、一度、大きく深呼吸を繰り返す。そして、滑らかに、そして素早く、一つの魔術術式を組み上げていく。
アッシュは、魔力酔いを起こしそうになる程の、膨大で、濃密な魔力を感知し、一気に後方に跳んで、大きく距離をとる。
「おいおい、魔力に酔いそうになるなんて、何時以来だ?ヘクトルの奴も、ルイスの奴も、流石にここまでの魔力じゃなかった。それに、そんなアホみたいな魔力で、どんな魔術を発動しようとしている?」(アッシュ)
結局、アッシュは大きく距離をとってから、警戒心を最大にした様で、安易に近づこうとはしない。その間にも、素早く魔術術式を組み上げていく。アッシュとの打ち合いがなくなった事で、術式の構築速度を上げる事が出来、およそ数十秒程で完成する。
「【武装付与・阿修羅】。この身は、夜叉の如し」
「ハハハハハハ‼なんだ、その姿‼まるで、俺たちの様じゃないか」(アッシュ)
俺の変化した姿を見て、アッシュが心底愉快そうに、大きな声で笑って言う。それもそのはずで、俺の額には、超濃密な魔力が圧縮されて生み出された、細長く伸びる、白銀に染まる鬼の角が、二本生えているからだ。
目の前に立ちはだかる、強き鬼を斬るために、自らもまた、‟鬼”となって力を得る。ただ静かに、ゆっくりと正眼の構えをとり、アッシュという存在を見据える。
そんな俺を見て、アッシュの闘気と魔力が急速に膨れ上がり、笑みを浮かべるその口が、より深く、三日月の様に弧を描く。
アッシュの身体の奥底、魂から、暴れ狂う巨大な力と魔力が解放され、勢いよく溢れ出してくる。その暴れ狂う巨大な力と魔力の影響で、深みのある、美しい暗緑の織部色の肌が、胸部、心臓の位置を中心にして、錆色の肌に変化していく。さらに、額の中央にある、細長い円錐状の灰色の角が、金砕棒と同じ様に、根元から先端にかけて、唐紅に染めていく。
変化を終えたアッシュは、ニヤリと口角を上げて笑う。放つ威圧感・荒々しい魔力によって、俺の肌が、ピリピリと刺激される。ここまで強力な、圧と魔力を浴びせられるのは、ヘクトル爺やルイス姉さんたちや、里の狩人たちとの鍛錬、魔王種に存在進化したオーガ、その中に潜んでいた悪神など、数少ない存在だけだ。
〈改めて思うが、こいつは本当に、ヘクトル爺やルイス姉さん並みの、歴戦の強者だ〉
「さあ、宴の始まりだ‼」(アッシュ)
一瞬の内にアッシュの姿が掻き消えて、次の瞬間には、俺の懐に入り込まれており、金砕棒を右切り上げで、下からすくい上げる様に振るってくる。その一振りを、最小限の動きで避けようとするが、そう簡単にいかせてくれない。金砕棒の先端から、金砕棒を模した、魔刃と同質の魔力の塊が伸びて、顔面に襲い掛かって来る。
迫り来る、金砕棒を模した魔力を、その場で背中を反らして避ける。そのままバク転して後方に移動し、反撃を仕掛けようとするも、既にアッシュはその場にいない。
〈どこに?――――上か‼〉
限界まで広げ、精度を高めていた魔力感知の範囲内で、アッシュの荒々しい魔力を捉え、位置を正確に把握する。アッシュは、俺の頭上でクルリと回転して、上下の体勢を反転させる。そして、足場代わりの魔力障壁を展開し、膝を曲げて力を溜めて、それを一気に開放して加速し、斜めに急降下してくる。
荒々しい魔力が、金砕棒に急速に圧縮され、まるで燃え上がり、温度が急上昇しているかの様に、金砕棒全体を染める唐紅が、濃く輝いていく。金砕棒に籠められている、魔力の質と量から考えても、振り下ろされる一撃の威力は、計り知れないものだと予想出来る。
急降下しながら、アッシュが金砕棒を振りかぶり、全身に力を溜めて、目にも止まらぬ速さで、振り下ろしの一撃を放ってくる。その一撃に対して、俺も刀身に魔力を籠め、圧縮して強化する。そして、打刀を上段で構え、アッシュの振り下ろしの一撃に合わせて、唐竹割りの一振りを放つ。
「――――――‼」
「――――――ウラァ‼」(アッシュ)
加速の力を上乗せした、金砕棒の強力な一撃に、押し込まれてしまう。地面を抉りながら、身体が後ろに下げられながらも、その強力な一撃を受け続ける。すると、押し込んでいるはずなのに、アッシュが金砕棒をサッと引く。次の瞬間に、破壊の嵐が襲い掛かってきた。
目にも止まらぬ速さで、縦横無尽に振り抜かれる金砕棒。迫り来る破壊の嵐に対して、俺が選択したのは、防御ではなく攻撃だ。攻撃こそ最大の防御ではないが、ここは、受け止め、受け流す事で凌ぐのではなく、真っ向から打ち合う事で、この破壊の嵐を消し飛ばす。
様々な角度・軌道で振られる金砕棒に対して、鏡に映した様に、逆の角度・軌道で打刀を振るい、真っ向から打ち合っていく。一撃一撃、打ち合っては互いの得物が弾かれながらも、その一瞬後には、互いに次の攻撃を放っている。一撃を放つごとに、速度と威力が上っていく。
「ハハハハ‼滾る、滾るぞ‼」(アッシュ)
アッシュの昂ぶりに合わせて、さらに魔力が高まっていく。その高まりによって、互角だった打ち合いが、再び押し込まれていき、劣勢に立たされる。このままの状態が続くと、そう遠くない内に、確実に一撃をもらう事は間違いない。
際限なく力を高めていくアッシュと、対等に渡り合うために、こちらも魔力制限を解除して、もう一段階上の領域へと、俺の力を高めなければならない。アッシュとの打ち合いを続けながら、自分自身に施した、魔力制限術式に意識を集中する。
メルジーナ国を守るために、術士相手に、第二階梯まで制限を解除したが、目の前にいる歴戦の戦士、遥か昔から生き残ってきた、戦いに生きてきた鬼だ。圧倒的強者であり、高位存在の者たちと肩を並べる存在であり、ヘクトル爺やルイス姉さんたちと、同じ領域に立っている者。
そんな女傑相手に、第二階梯程度まで解除した所で、俺の攻撃が届き得るとは思えない。今のアッシュは、全力を出せる状態ではあっても、完全に力を出し切っている訳ではないからだ。こうしている今ですらも、魔力がジワジワと高まっていっている。
〈そんな怪物たちと、真正面からやり合うためには…………〉
「魔力制限術式、第一・第二・第三階梯解除」
「ほう‼まだそんな余力を残していたか‼」(アッシュ)
身体の奥底、魂から、超濃密な魔力が、止まることなく溢れ出してくる。その魔力を、身体全体に滑らかに循環させ、そのまま一気に圧縮し、身体能力・機能を強化する。筋肉・筋線維・骨などを強化し、細胞を活性化させ、各臓器の働きを高め、各感覚器官を極限まで研ぎ澄ませる。
だが、この程度の強化では、まだまだ足りない。だからこそ、もう一歩踏み込んで、更なる段階へと引き上げる。
「魔力制限術式、第四階梯解除」
さらにもう一段階、制限術式を解除する。無限に湧き上がって来るかの様に感じる、その超濃密な魔力を、心臓に集中させて圧縮。これで、アッシュという高き壁を、乗り越える準備が整った。
激しい打ち合いの最中であろうとも関係なく、一度、大きく深呼吸を繰り返す。そして、滑らかに、そして素早く、一つの魔術術式を組み上げていく。
アッシュは、魔力酔いを起こしそうになる程の、膨大で、濃密な魔力を感知し、一気に後方に跳んで、大きく距離をとる。
「おいおい、魔力に酔いそうになるなんて、何時以来だ?ヘクトルの奴も、ルイスの奴も、流石にここまでの魔力じゃなかった。それに、そんなアホみたいな魔力で、どんな魔術を発動しようとしている?」(アッシュ)
結局、アッシュは大きく距離をとってから、警戒心を最大にした様で、安易に近づこうとはしない。その間にも、素早く魔術術式を組み上げていく。アッシュとの打ち合いがなくなった事で、術式の構築速度を上げる事が出来、およそ数十秒程で完成する。
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「ハハハハハハ‼なんだ、その姿‼まるで、俺たちの様じゃないか」(アッシュ)
俺の変化した姿を見て、アッシュが心底愉快そうに、大きな声で笑って言う。それもそのはずで、俺の額には、超濃密な魔力が圧縮されて生み出された、細長く伸びる、白銀に染まる鬼の角が、二本生えているからだ。
目の前に立ちはだかる、強き鬼を斬るために、自らもまた、‟鬼”となって力を得る。ただ静かに、ゆっくりと正眼の構えをとり、アッシュという存在を見据える。
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