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第5章

第103話

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型抜きに射的、輪投げにお面屋さん。その他に、今も昔も日本の定番のラムネ屋さんや水あめ屋さんにかき氷屋さんなどもある。そこに今年からオボロさんに頼まれて、俺がこの狐人族の里や里の周囲で手に入る素材で作れる魔道具を幾つか生み出した。綿菓子機や、たこ焼きやたい焼き、焼き鳥などを作るために必要な機械などだ。これらの前世のお祭りの一種の定番の品だったものたちは、脳筋型の魔術師であるオボロさんでは食べ物に対する知識があっても再現するための機械が作れなかったようだ

『ライノスが居れば、もっと前にこういった事も鼻歌交じりにやってくれたんだがな』(オボロ)
「何か技術的な問題か、素材的な問題でもあったんですか?」
『いや、そういった生活を向上させるための魔道具作りを共同で始めようとした時にな……………共喰いが起こったんだよ』(オボロ)
「なるほど。それで結局………そのままですか?」
『ああ、俺もライノスもこの里の立て直しに自分たちの身体の治療と何年も費やしたからな。その間は一切資源も食料も無駄には出来なかったからな。それで、長い間里の復興に尽力してそのまま………だな』(オボロ)

俺はオボロさんの言葉で、脳裏にあの地獄のような光景が過ぎる。玉藻さんたちが守護していたとはいえ、無傷で済んだとは思えない。壊された里の復興は容易ではなかったと、想像できる。そこから、元の里の姿に戻すにはオボロさんの言う様に資源も食料も無駄には出来ないだろう。そこに、日常の生活の向上のための魔道具作りを並行して進めるには無理があったのだろう。生きていくためには、何もかもが不足していたのだろう

それを聞きながら、お祭りを素直に楽しんでいる少年少女たちの姿を見ると、何とも言えないものが俺の胸にもこみあげてくる。オボロさんからしてみれば、より感動の思いが一入ひとしおだろう。食堂の料理人のひとたちのやっている食べ物系の屋台にも遊びにいく。お腹をある程度満たして、射的などのアトラクション系の屋台にも寄っていく

「あの人たち、めっちゃ目立ってますけど、いいんですか?」
『まあ、今日はお祭りだしな。里の皆もこんな風に特別な日だけは、あの二人の事は特別扱いしないんだよ。普段は里の皆もあの二人も上下関係というか、敬い敬われという関係を尊重してるからな。でも、そこまで厳しいもんじゃなくてな。ただ単に線引きみたいなものだな』(オボロ)
「それにしても、ものの見事に新しいものに大興奮で近づいていますよね。やっぱり、玉藻と葛の葉って…………」
『まあ、そう思うよな。実際、俺も名前聞いた時は思ったしな。ライノスも同じような感じだったしな。ただまあ、本人たちに直接聞くか、本人たちから話すまで待つのどっちかくらいに思っておけばいいと思うぞ』(オボロ)
「そうですね。まあ、俺も長命種ですからね。長い付き合いになりそうですから。いずれ、聞いてみればいいかな…って程度ですね」
『ああ、そのくらいに考えとけ』(オボロ)

俺は自然に楽しんでいる玉藻さんと葛の葉さん、それに付き合っているラディスさんを横目で見ながらも、俺とオボロさんもそれぞれで楽しんでいる。オボロさんについては、この里の中限定で自由に動き回っていもよいという許可を目の前ではしゃいでいる二人から頂いているので問題はない。姉さんたちも今日は別行動で、各々が興味を持った所に吸い込まれる様にフラフラと歩いている

今の所、新しい品として急遽追加したたこ焼きやたい焼きなどは好評のようで子供から大人、ご老人たちに至るまで皆美味しそうに食べてくれている。この里に来るときにお世話になった狐さんたちも気に入ってくれたようで、ご機嫌な様子で大量のたこ焼きやたい焼きをホフホフとしながらも食べている。特に狐さんたちのお気に入りは焼き鳥のようで、尻尾をフリフリとしながらガツガツと狐さんたち皆で夢中になっている

〈さて、そろそろ食べ物系が忙しくなりそうだな。俺もお手伝いの準備をしてと………〉

俺とオボロさんはお祭りの責任者が詰めている場所の一角を借りる。オボロさんには付き合う必要はないと伝えたのだが、俺がこれから行う事に興味があるという事でそのままこの場に残る。まあ、かといって今から行う事はそう大したものではない。むしろ、魔術師というよりかはサーカス団のような方々の行うような事だ

俺は、俺と同じ高さと大体の人の横幅の縦長の異空間を開く。そこから続々と浴衣姿の女性たちと同じく浴衣姿の男性たちが歩いてくる。これには、オボロさんもお祭りの責任者たちも驚いて動きが止まってしまっている。そのまま女性五十人・男性五十人が大き目な詰所の中を半分ほどを埋めてしまう

『カイル?この方たちは?』(オボロ)
「これはオボロさんとライノスさんの共同研究で生まれた木人を参考にして改良を施した自動人形ですよ。まあ、改良がまだ途中なので操作を俺がしないといけないんですけどね」
『いや、でもしっかりと歩いてただろ?』(オボロ)
「ああ、あれくらいの簡単な事は出来るんですよ。でも、調理の手伝いのような細かい作業となると、難しくなるんですよ。だから、全員を操作してお手伝いしようと思いまして」
『ここから⁉しかも全部で百はいるだろう⁉それを操作して調理を補助するって……高等な技術の一つじゃねぇか』(オボロ)

まあ、確かにある程度の技術と慣れが必要だ。昔に長であるアスト爺ちゃんの家にある大量の本棚の中の自動人形に関する本を読んだ時に色々と中二の血が騒いで色々と試したものだ。その姿をヘクトル爺やルイス姉さん、それに長に見られていた。そのまま四人で自動人形に関しての魔術談義を一日中していた。その中で教わったのが自動人形の操り方の練習法だ。ヘクトル爺も若い頃に興味を持って、当時の里の最強の人形遣いを自負していた女性の師匠に教わった効率的な練習法

その他にも綺麗で無駄なく、その女性の考える最高の魔力の伝導率での魔力糸や疑似神経の編み方や一般的なものから種族ごとの人体構造学を学んだ方がいいとアドバイスももらった。ヘクトル爺が最後の最後でどうせなら今から会いに行くかと言ってくれなければもうとっくに亡くなっていると俺は勘違いする所だったのは恥ずかしい思い出の一つだ。里の錬金術士と並行して、最強の人形遣いの女性に師事して自分なり自動人形について理解を深めていった。その二人に師事してから何十年か経った頃には、一人で自動人形を使ったサーカス団なんかの真似事も出来るようになっていた

「それじゃあ、操作を始めます」
『お、おう。お手並み拝見といこうか』(オボロ)
「では、…………よっと」

俺の背中から無数の魔糸が溢れ出す。これらの魔糸は自動人形以外には全く影響を及ぼさないように調整しているので、この場にいる誰かに引っかかったりとかはない。今回の俺は自動人形の動きの補助を中心に動く。自動人形たちは俺の意思を感知し、それぞれがようやく自我を表に出して各屋台のお手伝いに向かう。一応、分かりやすくするために事前に書いておいた手紙をそれぞれに渡しておいたから、料理人の人たちも読んでもらえば理解してくれるだろう

今の俺は少し疲れるが各自動人形たちと感覚を共有している。なので、ここから十分に自動人形たちをサポートしてやれる。各自動人形は全員が各屋台に到着し、料理人のひとたちも俺の手紙を読んで理解をしてくれた。夕暮れ時を迎える前に、何度か力加減や指先の感覚を全員分の調整を済ませて準備万端だ。そして、夕暮れ時に差し掛かった時、空腹に飢えたものたちがそれぞれの屋台に向かって進軍を始めた

「さあ、頑張りますか」
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